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MLBが米国初の新型コロナウイルス全国規模調査に全面協力へ その目的とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
米国初の全国規模調査に協力するMLBのロブ・マンフレッド・コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【米国初の全国調査にMLBが全面協力】

 MLBが選手やチームスタッフらの参加の下、新型コロナウイルス調査に全面協力することになった。ESPNなどが報じている。

 この調査は米国で初めて実施される全国規模のもので、新型コロナウイルスの感染規模や感染速度を正確に把握するために実施される。

 調査対象者は1万人に上り、各チームの選手やフロントスタッフ、球場の売店スタッフらが参加する予定だ。

【検査内容は血液検査とアンケートのみ】

 今回の調査は、スタンフォード大学、南カリフォルニア大学(USC)、スポーツメディソン調査&検査研究所(SMRTL)が合同で実施する。

 検査は至って簡単で、血液検査とアンケートに答えるというもの。血液検査は針を刺して血液を採取し、IgMとIgG(いずれも免疫グロブリン抗体) のバランスを確認する。結果は約10分で判明するという。

 この検査は、SMRTLが米国食品医薬品局(FDR)承認前の3月中旬に導入したもので、PCR検査とは違い検査結果がすぐに判明するので、医療従事者向けや感染に不安を感じる人たち向けに使用されている。

 今回の調査で感染が確認された人には、無症状でも本人に報告することになっている。

【選手会も検査参加を支持】

 このような米国初の全国規模調査が実施できるようになったのも、MLBが全面協力したからに他ならない。チームが全国各地に分散し、選手のみならずチームスタッフなど様々なサンプルを集めることができ、より正確なデータを集積できることが可能だ。

 今回の調査に関しては選手会も前向きで、希望する選手は積極的に参加を呼びかけているという。

【参加目的はあくまで公衆衛生】

 MLBの調査協力は、リーグが何らかの思惑があったものではなく、この検査でシーズン開幕が早まるわけでもない。あくまで米国社会に役立つことだけを考えたものだ。

 SMRTL所長のダニエル・エイクナー博士は、以下のように説明している。

 「MLBは、少しでも早く戻りたいという利己的な考えで我々に協力しているのではない。あくまで公衆衛生政策の一環として参加してくれている。それだけだ。

 今回の調査は、公衆衛生とスポーツが早期復帰の観点から素晴らしいものになるだろう。それ以外に野球が得られるメリットはない」

【NBAもリーグ内で血液提供を呼びかけ】

 こうした活動は、MLBに留まっていない。

 すでにNBAでは、リーグ内で新型コロナウイルスから回復した人たちに対し血液提供を呼びかけ、新型コロナウイルスの調査研究に全面協力する姿勢を示している。さらに新型コロナウイルスの専用サイトを開設し、人々に向け最新情報を提供し、注意喚起を行っている(本欄で報告済み)。

 結局シーズン開幕・再開は、新型コロナウイルスの感染拡大が止まり、米国社会が沈静化しなければ前に進むことはできない。

 米国のプロリーグはしっかり現実と向き合い、自分たちのすべきことを把握し、積極的に実行に移している。

 プロリーグの日米格差は、あまりに大きい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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