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ヤマヒロを導く“見えない流れ”

中西正男芸能記者
舞台初主演への思いを語る山本浩之アナウンサー

 今年3月までMBSテレビ「ちちんぷいぷい」でメインパーソナリティを務めたフリーアナウンサーの山本浩之さん(57)。関西テレビ在籍時から「ナンボDEなんぼ」「FNNスーパーニュースアンカー」などで硬軟織り交ぜた存在感を見せ、1998年には司会を務めた番組内でカツラ着用をカミングアウトするという驚きの行動で注目も集めました。5月24日から26日まで大阪・ABCホールで上演される「フードコートのランスちゃん」では舞台初主演にも挑戦。新たなフィールドに足を踏み出した形ですが、そこには“見えない流れ”の導きがあったと言います。

エライこっちゃ

 本格的にけいこが始まったのはゴールデンウィーク明けからなんですけど、これ、見てください!(分厚い台本を手に)ほぼ出ずっぱりなんですけど、やってみて「エライこっちゃ…」と思いました(笑)。

 というのはね、同じ人前でしゃべるということでも、舞台でお芝居するのと、アナウンサーの仕事はまるで違うんです。アナウンサーはスポーツ実況みたいに目の前で起こることを捉えて描写するとか、番組を進行するにしても、特に関西は台本なんて薄いペラペラのものがあるだけですから(笑)、その場、その場のことを言葉にしていくことがメインとなります。

 なので、まず膨大なセリフを覚える。これが難しいし、何とか頑張って覚えてセリフを言えるようになっても、お芝居ですから、そこに感情をこめないといけない。これは大変なことを引き受けたなと思いました。

盟友・黒田有

 昔から付き合いのある(漫才コンビ)「メッセンジャー」の黒田有君が定期的にやっている芝居公演なんですけど、これまでちょこっとワンシーンだけ出るとかはあったんです。

 ただ、一回しっかり出てくれとなって、それならば主演をとなったんですけど「黒田よ、オレになんちゅうことを頼んできたんや!」と思うくらい、毎日バタバタです…。

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意外な自分

 でもね、やる中で、自分でも意外な毎日と向き合っています。けいこは夕方から大阪・なんばグランド花月近くのけいこ場でやってまして。当初は、夕方からけいこと聞いていたので「ま、夜までけいこをして、その後は、みんなで食事に行って、お酒を飲みながら、いろいろ芝居の話をして…」という毎日になるのかなと思っていました。

 ただ、現実はというと、すぐに日本橋駅から電車に乗って奈良の自宅に帰っているんです。というのはね、早く帰って、自分でけいこがしたいんです。今日やった事をもういっぺん復習して、体にしっかりと覚えこませたいと言いますか。

 全く経験のないことを毎日させてもらっていますんで、日々、発見の連続。そして、周りは達者な役者さんで固めてもらっていますので、けいこ場で「うわ、こんな感じで相手は来るんだ」とか「プロはこうやってやるんだ」ということをこれでもかと感じています。

 となると、その学びをその日のうちに自分の中に刷り込んでおかないと、もったいないというか、やっていけないというか。僕、趣味で音楽もやるんですけど、ふと、駅とかでメロディーを思いついたら、忘れないうちに携帯電話のレコーダーに口ずさんで吹き込んでおくんです。それに近いかもしれませんけど、出てきたイメージを忘れないうちに、流れないうちに、早く染み込ませたい。その思いで、すぐに家に帰ってけいこしているんです。それくらい、お芝居を面白いと思っているということなんでしょうね。

見えない流れ

 お金を払っていただいたお客さまにお見せする以上、アナウンサーだから…というのは関係ない。とにかく一生懸命けいこして、見てもらった方に満足してもらえるものを作らないといけない。だからこそ、それだけ自分でものめり込んでけいこをしているんですけど、実は、今回のお芝居の話は、1年半くらい前に黒田君から言ってもらって決まっていたんです。

 その時点では「ちちんぷいぷい」の(メインパーソナリティを勇退する)話は決まっていなかったので、今、もし「ちちんぷいぷい」の司会があったとしたら、正直、時間が足りずにパンクしていたと思います。それが、何の流れか、この春で司会は卒業し、圧倒的に時間ができた。いろいろと“見えない流れ”がうまくなっているというか。こんな部分、自分ではどうしようもないところですから、導かれているというか、何とも言えない感謝も湧いてきます。

 そして57歳にして、やったことのないことを日々やらせてもらっている。これも、とことん、ありがたいことやと思います。歳をとればとるほど知らんことは減っていくのに、今は毎日知らんことだらけですから。幸せなことです。

 毎日「ちちんぷいぷい」をガッチリとさせていただいていた時は、朝9時半に毎日放送に入って、生放送が午後6時に終わるまで、ずっと毎日放送にいる生活でした。もちろん、お仕事としてはありがたいんですけど、自由時間はグンと減ります。

 今はそこが圧倒的にゆっくりしていますから、小さなキャンピングカーを買って、ふと思い立った時に、一泊二日でフラッと旅行に行ったり、東北の友達が震災関連のライブをやるというので駆け付けたりとか。そういう時間の使い方ができる。これもまた、ありがたいことだと感じています。お芝居のけいこも、しっかりとできますしね。

 …ただね、あんまりけいこに没頭しすぎて、今、僕、額のところに爪のカタがついてるでしょ?どうもね、寝ている時に、夢の中でもセリフを覚えようとして「う~ん、覚えられへん!」と自分で自分の額をかくような仕草をしているみたいなんです。かきむしったら、頭の状況的に、爪痕も残りやすいから気づきましたけど(笑)。

 それとね、僕、B型で凝り性でもあるので、家でけいこを始めると、ついつい声も大きくなるみたいで…。この前も、夜、暑いから窓を開けながらけいこをしていたら、嫁さんから「恥ずかしいから、窓を閉めて」と言われまして。もちろん、周りには迷惑をかけないようにしつつもフルスロットルでけいこをやるためには、今は、嫁さんがどっか行ってくれへんかなぁと思っています…。ま、こんなん言うてたら、きれいに怒られるんですけどね(笑)。

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(撮影・中西正男)

■山本浩之(やまもと・ひろゆき)

1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学卒業後、85年にアナウンサーとして関西テレビに入社。関西テレビへの入社後は、プロ野球・競馬などのスポーツ実況や、情報番組、バラエティー番組などを経験。「クロスファイア」「ナンボDEなんぼ」「FNNスーパーニュースアンカー」などを担当。2013年、50歳を迎えたことを機に、関西テレビを退社。退社後は読売テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」など他局の番組にも出演し、MBSテレビ「ちちんぷいぷい」で14年から今年3月までメインパーソナリティを務めた。MBSラジオ「ヤマヒロのぴかいちラジオ」「茶屋町ヤマヒロ会議」に出演中。5月24日から26日まで大阪・ABCホールで上演される「黒田たもつPresents フードコートのランスちゃん」で舞台初主演を務める。共演は黒田有、山本量子、「ギャロップ」林健、佐藤亜沙美、武田訓佳ら。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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