Yahoo!ニュース

リーグ最終戦で1敗で並ぶクボタとの直接対決に臨むトヨタ自動車 後半失速する展開を克服できるか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
三菱重工戦後に円陣を組むトヨタ自動車の選手たち(筆者撮影)

【1敗を守り直接対決に臨むトヨタ自動車とクボタ】

 ラグビーのトップリーグは、2つのカンファレンス(レッドとホワイト)に分かれて実施されたリーグ戦がいよいよ今週末に最終戦を迎える。

 リーグ戦終了後4月17日から始まるプレーオフトーナメントでは、この順位に合わせて振り分けられるので、どのチームも少しでも順位を上げておきたいところだ。

 すでに本欄でも報告しているように、ホワイトはパナソニックと神戸製鋼が5勝1分けで並んでおり(勝ち点はパナソニックが1ポイント上回る)、リーグ最終戦でカンファレス1位が決することになる。

 一方レッドは、唯一全勝を続けるサントリーが1位通過するのが濃厚で、5勝1敗、勝ち点24で並ぶトヨタ自動車とクボタの2位争いに注目が集まるところだ。

 この2チームはリーグ最終戦で直接対決することになっており、引き分けさえなければ、勝者が2位の座を確保することになりそうだ。

【トヨタ自動車が抱える不安要素】

 トヨタ自動車、クボタともに、唯一の1敗はサントリーに敗れたもの。両チームの対サントリー戦の試合内容を比較すると、ややトヨタ自動車の方が上回っていたように思う。

 試合開始早々に先制トライを奪うと、その後も優勢に試合を進めながら26対12で前半を終えた。後半にサントリーの反撃を受け一度は逆転を喫したが、終盤に同点に追いつく粘りを見せている。

 最終的に後半41分に決勝PGを決められ敗れることになったが、最後までサントリーと互角の戦いを演じているのだ。

 だが次戦の三菱重工戦では、不安要素を露呈する結果となった。実力差があるはずの相手に40対29で勝利しているものの、サントリー戦と同じような試合展開に持ち込まれてしまったのだ。

 前半は5トライを奪う猛攻を見せ、33対15で折り返したのだが、後半に入ると状況は一変。後半のスコア7対14からも明らかなように、三菱重工に優位に試合を進められてしまった。

三菱重工戦で2トライを奪う活躍をみせたマイケル・フーパー選手(筆者撮影)
三菱重工戦で2トライを奪う活躍をみせたマイケル・フーパー選手(筆者撮影)

【クロンHC「平均的な部分がたくさんあった」】

 試合後のサイモン・クロンHCは、以下のように現在のチームの課題を口にしている。

 「いつもチームには、素晴らしいチームになるには平均的であるということを受け入れない、平均的なものではよくない、と伝えています。

 しかしながら今日のゲームにおいては、平均的な部分がたくさんありましたし、平均的でもいいと思った選手がいたのではないかと思っています。

 スコアは大切ではなく、自分たちのパフォーマンス、そしてそこに辿り着くまでのプロセスを大切にしようと伝えているので、そこについては1週間かけてチーム全体で修正していきたいと思っています」

 クロンHCが説明しているように、まだ試合を通じてチームの意思疎通が確立できていない部分があるようだ。

【クボタ戦のカギを握る修正力と意思疎通】

 ただサントリー戦での戦いぶりからも明らかなように、チーム力、選手の陣容はリーグの中でもトップクラスなのは間違いないところだろう。

 2019年のW杯でニュージーランド代表のキャプテンを務め、トヨタ自動車でも共同キャプテンを任されているキアラン・リード選手はここ2試合出場枠から外れているが、今シーズン新加入した、同じW杯でオーストラリア代表のキャプテンを務めていたマイケル・フーパー選手が全試合に出場し、チームを牽引している。

 さらにはW杯を制覇した南アフリカ代表の一員で、これまで代表61キャップを誇るウィリー・ルルー選手がバックス陣の要を務めるなど、フォワード、バックスともに世界クラスの選手を擁している。

 チームがクロンHCの構想通りに機能するようになれば、間違いなく優勝候補の一角をなすチームだ。

 果たしてトヨタ自動車は、クボタ戦でどんな戦いを見せてくれるのか。勢いを掴んでプレーオフトーナメントに臨むためにも、スコア以上に試合内容が重要になってきそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事