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「敬老の日」に先祖に思いを馳せる。

竹内豊行政書士
「敬老の日」にご先祖様に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。(写真:アフロ)

本日は、敬老の日です。

敬老の日は、国民の祝日に関する法律によって、「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。」日とされています。

ご自身の親に感謝を込めてプレゼントを用意している方も大勢いらっしゃると思います。そこで、さらにもう一歩踏み込んでご先祖まで思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。「そうは言っても、よくわからないよ」という方にお勧めなのは、戸籍をさかのぼってご先祖様を調べることです。

「戸籍」とは

戸籍は,人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので,日本国民について編製され,日本国籍をも公証する唯一の制度です。

戸籍は、その市町村の区域内に本籍を定める1組の夫婦およびこれと氏(姓)を同じくする子ごとに編成されています。

戸籍は必ずつながっていますので、戸籍をさかのぼることでご自身のルーツを調べることができるのです。

請求できる範囲

戸籍は、戸籍は、氏名、生年月日、親子や夫婦関係などの身分関係が記載される大切な帳簿です。したがって当然、だれでも請求できるものではありません。

戸籍を請求できる者の範囲は、原則として、戸籍に記載されている本人、またはその配偶者(夫または妻)、その直系尊属(父母、祖父母等)もしくは直系卑属(子、孫等)に限られています(戸籍法10条1項「戸籍を請求できる範囲」について)。

なお、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士または行政書士は、受任している事件または事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができます(戸籍法10条の2第3項)。

戸籍を請求するには

戸籍を請求するおもな手順は次のとおりです。

どこに請求するのか

本籍を定めている市区町村役場です。住民登録をしている市区町村ではないので注意してください。

請求方法

請求するには、次の書類が必要です。

身分証明書

請求する方の「本人確認」ができるもの(運転免許証,パスポート,顔写真付きの住民基本台帳カード等の写し)

手数料

定額小為替で支払います。定額小為替は、全国のゆうちょ銀行で購入できます。

返信用封筒

返信先(ご住所)を記入して切手を貼付けた返信用封筒を用意します。

申請書

各市区町村で様式が異なります。請求する市区町村役場のホームページからダウンロードできます。

どのくらい期間がかかるか

通常、転籍(本籍地を変えること)等で、一カ所の市区町村役場ですべての戸籍が揃うことはありません。3~5か所の役場に請求してやっとそろうということもめずらしくありません。そのため、一般に、自分の戸籍から収集をスタートしてから完了するまでに1~2か月程度を要します。

相続に活用できる

収取した戸籍謄本は親の相続でも使用できます。「戸籍は発行後3か月以内のものでなければ手続きに使用できない」と思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうことはありません。なぜなら、過去の戸籍の内容は変わらないからです。

相続が発生すると、だれが相続人であるのかを戸籍で証明しなければなりません(相続人の範囲の確定)。一般に、相続人の範囲を確定するには、1か月以上を要します。事前にご先祖様を調べておくことによって、相続手続の負担を軽減することができます。

思わぬ事実が発覚することも

ご先祖様を戸籍でさかのぼると、思わぬ事実が発覚することがあります。たとえば、父親が過去に結婚していて、しかも前婚で子どもをもうけていたなどです。そうなると相続でもめる可能性が高くなります。そのような予期せぬ事実が発覚した場合は、感情的にならずに冷静に話し合うようにしましょう。そして、遺言を残してもらうなど具体的な対策を講じてもらうようにしましょう。

遺言の無理強いは厳禁

なお、この場合、遺言を残すことを無理強いしてはいけません。そのようなことをすると、遺言が無効になるばかりか、「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」として相続秩序を侵害する非行をした相続人として、相続権を法律上剥奪されることがあります(相続人の欠格、民法891条4号)。

戸籍をさかのぼって得られる心境

戸籍をさかのぼった知人が、「自分は『生かされている』ということを実感した」と言っていたことが印象に残っています。おそらく、戸籍を見て、親、祖父母、会ったこともない先祖から脈々と引き継がれた命でいまの自分の存在を知ったことによる感想だと思います。

戸籍に名の連ねている一人ひとりの方たちには、困難なこと、辛いこともきっとあったでしょう。きっと知人はご先祖に思いを馳せて、感謝と共に授かった命を大切にしていかなければならないと感じたのではないでしょうか。

親やっての自分、その親があっての自分・・・。そのような当たり前のことを敬老の日に確認してみるのも悪くはないと思います。あなたはいかがですか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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