ジャズ喫茶の扉を開けるとボクは一歩だけオトナになった気がした
●ジャズ喫茶の灯、守る 左京・3月1日改装オープン|京都新聞
1970年開店という歴史をもつ、京都でも有数の老舗ジャズ喫茶「YAMATOYA」が新装開店したというニュースです。
1960年代の日本はまだまだ流通システムも通信インフラも十分に整備されておらず、アメリカで起きている流行が1年後にようやく伝わってくるということも多かったようです。ジャズの情報もまた然り。
ところが、1961年に来日したアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズがもたらした“アメリカで起きている現在進行形のジャズの衝撃”を浴びたことで、もっと多くの情報をもっと早く得たいというニーズが高まりました。
当時の日本では、アメリカで発売されたアルバム(もちろんアナログ・レコードです)を直輸入するにも手間がかかり、そこに1ドル360円の固定レートが追い打ちをかけるととても高価になってしまったため、おいそれと買えるものではなかったのです。
そこで街なかでは、その高価なジャズ・レコードを仕入れて“聴かせる”ことを商売にする人が現われ、これが当たって、一気にジャズ喫茶が乱立することになりました。
来店した人は、コーヒー代を“入場料”として支払い、1杯で何時間も居座って、新しく発売されたアメリカ発のジャズに耳を傾けていたのです。
時代は移り、インターネットでアメリカのライヴハウスのステージをリアルタイムで観ることができてしまう世の中になると、ジャズ喫茶はその使命の大半を終えたと思われるようになりました。
しかし、いままた脚光を浴びているのは、自宅ではなかなか叶わない高価なサウンド・システムによる大音量での鑑賞ができることに加えて、同じ趣味をもつ人たちが集まるリアルなコミュニティとしての価値が見直されているからではないでしょうか。
商売には“寿命”があり、いち風俗の栄枯盛衰にアレコレ言うのは野暮だと承知していますが、こういうニュースを耳にすると、機会をつくってでも「あの独特な音の洪水に浸ってみたい」と思わせる魅力があることは否定できません。
京都、行きたくなっちゃいました……。