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「日韓戦の意味はわかっている」代表監督の会見全文で読み解く韓国チーム事情。ソン・フンミンは来るのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

3月25日に横浜で行われるサッカー日韓戦に臨む韓国代表メンバーが発表になった。発表された24名の中にはJリーグで活躍している選手はもちろん、イ・ガンイン(バレンシア)、ファン・ヒチャン(ライプツィヒ)などヨーロッパでプレーしている選手も含まれている。

アーセナルとのノースロンドン・ダービーで負傷交代したソン・フンミン(トッテナム)もメンバーに含まれているが、はたして韓国代表を率いるパウロ・ベント監督はどんな狙いをもって今回の日韓戦に臨もうとしているか。

メンバー発表の記者会見で語った言葉をもとに、読み解いてみたい。

「日韓戦の意味が何なのかはよくわかっている」

これは記者会見の質疑応答の冒頭で放った言葉だ。「韓日戦が持つ特殊性についてどれだけ理解しているか」という記者の問いに、ベント監督はこう答えたが、彼にとって目下大事なのは6月に延期された2022年カタールW杯アジア2次予選なのだろう。

「今回の招集は今年6月のワールドカップアジア2次予選の準備に使われる予定だ。6月は半月以内に4試合を行わなければならない。今回は22日に招集し、25日に試合を行う。短い招集期間だ。私が予想するに、選手全員がそろって練習できる機会は試合の前日しかなさそうだ。新型コロナによる変数でメンバー構成に困難もあったが、全力を尽くしたい」

北朝鮮、レバノン、トルクメニスタン、スリランカが属するグループHの韓国はこれまで2次予選で4試合を終え、2勝2分の勝ち点8でグループ2位に位置している。グループHは6月に韓国で集中開催が決まっただけに、そのための強化の一環としても考えているようだ。

ただ、今回の日本遠征については韓国でも何かと否定的な意見もある。

(参考記事:韓国でサッカー日韓戦中止求める“国民請願”登場「試合を中止し、開催認めた協会幹部を解任せよ」)

記者からも「コロナがまた落ち着かない中で日本遠征に出ることに批判も多いが‥」という質問も飛び出したが、ベント監督は言っている。

「(新型コロナが流行している今)すべての社会構成員が、自分の所属する分野において防疫可能な範囲で自身の仕事をこなしている。我々はサッカーの試合をすることが仕事だ。

特に2019年11月から昨年11月まで、我々は1度しか招集トレーニングを行えなかった。その間、チェックできなかった選手もいる。さまざまな悪材料を乗り越えて、来る6月のワールドカップアジア2次予選を戦わなければならないが、日韓戦を通じてでもチームを最大限正常に運営しなければならないと考えた」

確かに発表されたメンバーは「チームを最大限正常に運営したい」という監督の意図も伺える。イ・ガンイン、ファン・ヒチャンだけではなく、ドイツのフライブルクでプレーするチョン・ウヨンも代表初選出された。

「チョン・ウヨンは絶えずチェックしてきた選手だ。今シーズンのチョン・ウヨンの活躍は以前よりもずっと良い。相当な競争力を持つブンデスリーガで良い技術を見せている。今回、短い期間でもチョン・ウヨンをチェックしたかった」

ただ、その一方でベント監督体制になって韓国代表の主力になった複数の選手たちが招集されなかつた。これについてベント監督はこう語っている。

「キム・ミンジェやキム・ジンス、キム・ムンファンらは韓国代表守備陣の主力だ。中盤にはファン・インボムがいる。彼らはテクニックに長けている選手であり、我々が戦術を変化させながら試合するにあたって大変有用な選手だ。ファン・ウィジョやイ・ジェソンも攻撃陣の主力だ。

ただ、彼らは全員来られない。もし今回、ソン・フンミンやファン・ヒチャンまで来られなければ、どんな困難があるかは皆が知っているはずだ。今、私に与えられた環境はこれまでと違う。仕方がない部分もある」

気になるのはソン・フンミンの名が今回のメンバーリストにあったことだ。

ソン・フンミンは3月15日(日本時間)、ロンドンのエミレーツ・スタジアムで行われたアーセナルとのイングランド・プレミアリーグ第28節に先発出場したが、前半17分にDFトビー・アルデルヴェイレルトのロングパスを追いかけてアーセナルのゴールに迫った後、左の太ももを押さえてピッチに倒れ、そのままベンチに下がった。それだけに今回のメンバー入りは韓国でも驚きをもって報じているが、ベント監督の言葉通り、ソン・フンミンの来日は今後の彼の状態次第だろう。

「ソン・フンミンの負傷は未明のアーセナル戦で確認した。ただ、負傷の程度や検査結果などについて、韓国サッカー協会とトッテナムがまだ疎通を図っている。ソン・フンミンの検査結果を確認し、負傷の程度によってはリストから外すか、含めるかを判断する」

チームは3月22日に招集・日本に向けて出国したあと、3月25日に日本代表と対戦。翌26日には帰国し、Kリーガーたちは4月2日までパジュNFCでコホート隔離(集団隔離)をしてそれぞれの所属クラブに復帰するが、今回のメンバーの中には王者・全北現代の選手が一人もいなかった。ベント監督はそれについても問われ言っている。

「チェックしている選手の中には当然、全北現代に所属する選手もいる。今この瞬間、このメンバーが最善だと考えた。我々が追求するサッカー、望む試合と結果を得るためには、このメンバーが最善であることをわかってほしい」

監督自らが「勝利を手にするためのベストメンバー」と念押しした韓国代表。言い訳なしの好ゲームを期待したい。

■3月25日 日本代表戦・韓国代表メンバー

GK

キム・スンギュ(柏レイソル)、キム・ジンヒョン(セレッソ大阪)、チョ・ヒョヌ(蔚山現代)

DF

キム・ヨングォン(ガンバ大阪)、パク・チュホ、パク・ジス(水原FC)、ユン・ジョンギュ(FCソウル)、キム・ヨンビン(江原FC)、ホン・チョル、キム・テファン、ウォン・ドゥジェ(以上、蔚山現代)

MF

ナ・サンホ(FCソウル)、オム・ウォンサン(光州FC)、イ・ドンジュン、ユン・ビッカラム(以上、蔚山現代)、チュ・セジョン(ガンバ大阪)、ナム・テヒ、チョン・ウヨン(以上、アル・サッド)、ファン・ヒチャン(ライプツィヒ)、ソン・フンミン(トッテナム)、イ・ガンイン(バレンシア)、チョン・ウヨン(フライブルク)

FW

イ・ジョンヒョプ(慶南FC)、チョ・ヨンウク(FCソウル)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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