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【英会話】have to move って言ったら、首を傾げられた なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 仕事で英語を話して20年ほどになりますが、ちょっと気を抜いてしまって頭に浮かんだ日本語を直訳して失敗することがまだまだあります。頭が英語モードになってなくて、イメージから英語を作ってないんですねぇ。

 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むと英語頭で話す感覚を得られるお得なエッセイです。

エアコンの部屋に移動する必要があってね

 暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので、火曜日あたりからようやく過ごしやすい空気になってきました。夏の真っ盛りは37度だの38度だのという気温がこのまま続くんじゃないかと不安になったものですが、しっかり地球は公転してくれてる。太陽の高さが低くなってほっとします。これで、書斎で仕事ができる。
 なんで、書斎があるのにそこで仕事をしないのか? と疑問が浮かばれると思いますが、実は、書斎にしている部屋が共用スペースの廊下に接しているんでエアコンが置けないんです。室外機を置く場所がない。夏はなかなかの地獄で、仕事しているとぽたりぽたりと天井から血が、ではなく顎から汗がノートに落ちて、書いた文字がどんどん滲(にじ)んでいく。読み返すと、自分が書いたはずの文字がどこにもないというちょっとしたホラーです。
 そういうわけで、書斎を脱出してエアコンがあるリヴィングに移動して仕事。English man のRichとのウェブミーティングもそこでということになるんですが、画面の背景が変わってるんで、どうしたの って訊(き)かれる。そこで、こう言ったんです。

It’s bloody hot today so I have to move to a room with an air conditioner. (今日はひどく暑いんで、エアコンの部屋に移動する必要があってさ)

 そしたら、Rich、さらっと首を振ってきた。私の英語、頭が英語モードになってないために不自然なんですが、みなさん、どこが不自然か気づかれるでしょうか?

 bloody hot みたいなちょっと聞き慣れない言い方が入ってるんで、そこかな? と思う方もいらっしゃると思いますが、そこは大丈夫。bloody はとんでもなく とかすんげ~ ぐらいの意味で、English people がよく使う単語です。bloody fantastic とんでもなく素晴らしい とか、No bloody idea ぜんぜん想像がつかない みたいに使います。ちょっと砕けた言い回しなので親しくない人には使わないほうが無難ですけど。

 Richとは付き合いも長いんで、そこは大丈夫なんですが、問題は助動詞です。わたしは~する必要がある という日本語をそのまま英語のhave to ~ にしちゃったんですが、これがいけない。have to ~ って~する必要がある って訳されるんですけど、微妙にニュアンスが違うんです、日本語と。
 have to ~ って、きちんと訳すと、状況的な義務として~する必要がある って意味なんです(obligations which come from outside the speaker from Cambridge Dictionary)。日本語の~する必要がある よりやんなきゃいけない感が強いんですね。
 それを踏まえると、たしかに書斎はbloody hot なんですけど、やろうと思えば仕事をできなくはない。義務じゃないんでhave to ~ そぐわない。それは知っていたんですが、まだ暑さにやられていたせいか、昨日のワインが残っていたせいか、思わず直訳しちゃった。私もそれにすぐ気がついて、自分で決めたというイメージを作って、

It’s bloody hot today so I decided to move to a room with an air conditioner.

と言いなおすと、Richがthumbs-up. 自然な英語だって褒められました。

 ~する必要がある という日本語の言い回しは、自分に責任がない感じがして、ぼかす言い方として使います。have to ~ もそれは一緒なんですが、プラス義務というニュアンスが入ります。状況的に必ずやんなきゃならない というイメージが浮かんだ時に使いましょう。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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