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皇治は 芦澤竜誠にMMAマッチでリベンジできるのか? 何が起こる?7・28『超RIZIN.3』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
昨年4月にキックルールで闘った芦澤竜誠(右)と皇冶(写真:RIZIN FF)

1年前、地元・大阪で味わった屈辱

「ちょうど1年前に恥をかかされたんで、今度は大きい会場でボコボコにして逆に恥かかせてやろうと思います。MMAでやり返します」

そう皇治が話した後に乱闘劇は始まった。

予定調和の煽り合いではなかった。挑発を受け先に蹴飛ばしたのは皇治だったが、芦澤は執拗に襲いかかり顔面に素手でパンチを見舞う。皇治の左頬には痣ができていた。ちょっとやり過ぎだろう。

5月24日、東京・用賀にあるGMOインターネットTOWERで開かれたRIZIN記者会見でのことである。

7・28さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』のメインエベントでは朝倉未来(JTT)vs.平本蓮(剛毅會)が行われるが、その前座を彩る追加対戦カードがここで発表された。その中の一つが芦澤竜誠(フリー)vs.皇治(TEAM ONE)のリマッチ。今回はキックボクシングルールではなくMMA(総合格闘技)ルールでの対峙だ。

記者会見でマイクを手に罵り合う芦澤竜誠(左端)皇冶(右端)。この直後に大乱闘が繰り広げられた(写真:RIZIN FF)
記者会見でマイクを手に罵り合う芦澤竜誠(左端)皇冶(右端)。この直後に大乱闘が繰り広げられた(写真:RIZIN FF)

両者の因縁は昨年4月・大阪『RIZIN.41』に遡る。

この大会のメインで皇治と芦澤はキックボクシングルールで対戦した。会場には地元ファイターである皇治のファンが多く集まっていて、戦前の予想も「皇治優位」。大方が皇治の凱旋勝利を願っていたのだ。

しかし、皇治は敗れた。顔を血で染められ彼は肩を落としてリングを下りる。直後にマイクを手にした芦澤に自らのファンを罵倒され、「ナマズ音頭」を熱唱されてしまった。

地元でのカッコ悪過ぎる結末─。

皇冶は「引退します」と口にして会見場を去り、メディアからの質問は受け付けなかった。格下と見なしていた芦澤に負けたことは屈辱的で、ファイターとして余程恥ずかしかったのだろう。

「ベアナックルでやろうぜ!」

この試合を最後に芦澤は、キックボクサーからMMAファイターに転向した。

すると皇治も、すぐさま引退を撤回しオープンフィンガーグローブを着用してMMAの練習に取り組み始めたのである。屈辱を味わわされた芦澤にどうしてもリベンジしたかったのだ。

両者は昨年の大晦日に『RIZIN. 45』のリングでMMAデビュー戦を行った。

皇治は、キングカズ(三浦知良)の息子・三浦孝太(BRAVE)と闘い2ラウンドTKO勝ち。一方の芦澤は実力者・太田忍(パラエストラ松戸)に挑み1ラウンド失神負けを喫した。明暗を分けたデビュー戦。だが闘った相手の実力が異なるため皇治と芦澤の実力を比較することは、ここではできなかった。

会見で乱闘劇が始まる前に芦澤は言った。

「これ(MMAでの再戦)やる必要ないだろ。俺は大阪のメインで勝ってるんだから。何で再戦をやる必要あるの? やるんならベアナックル(両拳にバンテージのみを巻いてのボクシングファイト)でやろうぜ。ベアナックルだったらやってやるわ」

皇治が返す。

「お前、俺にMMAで勝つ自信がないんか」

「黙れカス!ベアナックル以外やらないからな。お前とのMMA素人同士の試合なんて誰も観たくねえだろ? ベアナックルで殴り合って盛り上げたいんだよ!」

壇上で立ち上がり皇冶を挑発する芦澤竜誠(写真:RIZIN FF)
壇上で立ち上がり皇冶を挑発する芦澤竜誠(写真:RIZIN FF)

乱闘後、会見場に戻りメディアからの質問に答える皇冶。左頬には痣ができていた(写真:RIZIN FF)
乱闘後、会見場に戻りメディアからの質問に答える皇冶。左頬には痣ができていた(写真:RIZIN FF)

実力差をシビアに見極めたい

MMAではなくベアナックルファイト?

発表事項とは異なる方向に話が進むのか?

いや、そんなことはないだろう。

「MMA素人同士の試合なんか誰も観たくねえだろ」と芦澤は言った。

両者ともにキャリア1戦だから、「素人同士」はその通り。だが「誰も見たくない」わけではない。トップ戦線に比すればレベルの低い攻防になることは分かっている。それでも時に話題性でカードを組むのがRIZINであり、そこが面白い。

昨年4月、インテックアリーナ大阪に「ナマズ音頭」が響き渡り、皇冶が屈辱を味わってから1年余り。元K-1ファイターの二人は、現在ともにMMAに戦場を移している。そして、どこまでMMAファイターとして成長しているのか。観る者が知りたいのは、この一点である。

おそらく、予定通りMMAルールの下で試合は行われる。

皇冶、芦澤は、MMAファイターとしてこの数カ月でどれだけのスキルを身につけたのか。勝者はRIZINの舞台で次のステップへと進む。敗者は、また一からやり直しだ。

乱闘劇で盛り上げれば、それでいいというものではない。闘いは、いずれが強いのかを明確に炙り出す。両者のMMAファイターとしての実力差、そして適性を『超RIZIN.3』でシビアに見極めたい。

〈7・28『超RIZIN.3』主要対戦カード〉

7・28さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』では、上記のカードを含め十数試合が行われる(提供:RIZIN FF)
7・28さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』では、上記のカードを含め十数試合が行われる(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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