金正恩「力不足」で餓死者続出…北朝鮮が迎える“重要局面”
韓国の聯合ニュースは6日、「北朝鮮の中では生活水準が比較的高いとされてきた南部の開城市で、餓死する人が続出しているようだ」と報じた。北朝鮮情報筋の話として伝えたもので「近ごろ開城では毎日数十人の餓死者が出ている。厳寒も相まって暮らしが立ち行かず、自殺者も多い」ともしている。
さらに聯合は「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が先月2度も幹部や側近を現地に派遣し、実情を把握するとともに人々の不安をなだめようとしたが力不足だった」とした上で、「北朝鮮が今月後半以降に朝鮮労働党中央委員会総会を開いて農業対策を話し合うのも、こうした状況が背景にあるとみられる」とも伝えている。
この情報の出所は、韓国の情報機関・国家情報院と見てまず間違いない。
北朝鮮から流出する内部情報の多くは、中国との国境地帯から出てくる。海外駐在員を通じるなどして平壌や内陸部の情報が出てくることもあるが、現地の詳細な様子まで把握するのは難しい。
特に、韓国から軍事境界線をはさんですぐ北にある開城は、外部からの接近が最も難しいエリアだ。新型コロナウイルス対策で外国からの人の出入りが極度に制限され、また南北関係が緊張局面にある今ならばなおさらだ。
ではこのニュースが、情報機関が流したものだったとして、その信ぴょう性はどうなのか。筆者としては「高い」と見ている。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
本欄でも繰り返し述べてきたが、平壌ですら4割の世帯が、食糧が完全に底をつき購入するお金もない「絶糧世帯」に陥っているという情報があり、地方では餓死者や自殺者も相次いでいる。国内有数の大都市である開城といえども例外ではいられまい。
国情院がここへ来てこうした情報を流したのだとしたら、それは冒頭で引用したような金正恩氏の重要動向を確認できたためかもしれない。
また、北朝鮮の混乱は韓国にとって安全保障上の重要な懸案となるため、国内世論に認識を与えつつ、北朝鮮の反応を探る「観測気球」として出したとも考えられる。
いずれにせよ、北朝鮮の飢餓と金正恩氏の失政が「重要局面」を迎える可能性が、少しずつ高くなっていると言うことができるかもしれない。