進化しつづける喘息治療 「自己注射」で劇的に改善する人も
喘息は、日本人の5~10%が持っているありふれた病気です。慢性的に咳が続こともあり、コロナ禍で「咳が出ないようにできないでしょうか」と相談されたことも何度かあります。喘息治療は、急速に進歩しています。最近は、自宅で「自己注射」の治療を受ける喘息患者さんも増えてきました。
喘息で咳が出る理由
喘息は、何らかの刺激によって一時的に気管支が狭くなり、咳が出る病気です。悪化と改善を繰り返すことで、健康な気管支と比べて喘息の気管支は細くなっています(図1)。
ほとんどの喘息はアレルギーによるものですが、気管支が過敏な人は、軽く運動しただけでも咳が出ます。
あまりにも狭くなると、増悪(発作)と呼ばれる状態になります。夜も眠れないほど、ぜえぜえ、ヒューヒューと呼吸がしんどくなってしまいます。
喘息と似た症状で、寒暖差で起こる乾いた咳の場合、咳喘息の可能性もあります(1)。
喘息の治療の主役
喘息は吸入薬を使ってコントロールします。炎症を抑えるステロイドを吸入して、狭くなりがちな気管支を穏やかな状態に保つ効果があります。
国内で吸入薬が使われ始めたのは1970年台です。2000年以降、たくさんの吸入薬が発売されました。吸入薬が普及するまで、喘息の死者数はとても多かったのですが、最近は亡くなる方が減りました(図2)。吸入薬は、喘息の歴史を劇的に変えました。
吸入薬は種類が多く、喘息だけで製品は10種類を超えます。「吸入薬ソムリエ」を気取っているわけではありませんが、各製剤の特長をふまえ「あなたにはコレがオススメです」とお伝えすることが多いです。
重症のアレルギーを持っている人や、長い間喘息をわずらっている人は、喘息のコントロールがなかなかつかないことがあります。
こうなると、吸入薬以上の強力な治療薬が必要になります。
そこで登場したのが、身体の喘息の反応を抑えるモノクローナル抗体と呼ばれる注射薬です。
「自己注射」する喘息治療薬
アレルギーに関与する物質をブロックする抗体を定期的に体内に注射することで、喘息を改善することができます。
事前に効果があるかどうかを類推する必要がありますが、現在喘息で苦しんでいる人の中には「もう良くならないと諦めていた」とおっしゃる人もいるので、是非この治療選択肢を知っていただきたいと思います。
コロナ禍において人前で咳をすると白い目を向けられ、つらい思いをした喘息患者さんはたくさんおられます。注射薬を紹介し、復職することができた患者さんもおられます。
医療機関で注射することもできますが、糖尿病のインスリンのように「自己注射」できる製剤もあります(写真)。
2~4週間ごとの自己注射なので、会社や学校に持っていく必要はなく、定期的に自宅で注射すれば大丈夫です。
子どもの場合、親が自己注射します。ただし、喘息の注射薬は6歳未満の子どもには使えないので注意してください。
まとめ
注射薬は主に重症の喘息患者さんに使用されますが、吸入薬が喘息の歴史を変えたように、注射薬もまた歴史を変える薬剤だと思います。
薬価が高いため、高額療養費制度を適用することが多いですが、自己負担額が少なく済むこともあるため、喘息に困っている人は一度主治医に相談してみましょう。
(参考)
(1) 冷気で起こる咳は「咳喘息(せきぜんそく)」の可能性 喘息との違いは?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20221010-00318765)