ガソリンが2年5ヵ月ぶり高値、トランプの中東政策を警戒か
資源エネルギー庁が1月11日に発表した「石油製品価格調査」によると、レギュラーガソリンの全国平均価格(1月9日時点)は1リットル当たりで前週比0.2円高の141.9円となった。これで3週連続の上昇となる。昨年の7月3日時点の130.3円をボトムに過去半年で累計11.6円(8.9%)の値上がりになった計算だ。これは2015年7月27日以来となる、約29カ月(2年5ヵ月)ぶりの高値を更新していることを意味する。
国際原油価格の上昇が続く中、日本の原油調達コストは着実に値上がりしており、それがそのまま国内ガソリン相場にも波及した格好である。国際原油相場が急落する以前となる14年前半から中盤にかけての160円台後半は大きく下回っているが、16年3月7日の112.0円を最安値としたガソリン価格上昇のトレンドは維持されており、安いガソリン価格時代の終わりが強く印象付けられる状況になっている。
■トランプ大統領がガソリン価格を押し上げる可能性
国際指標となるNYMEX原油先物相場の動向をみてみると、昨年前半は年初の1バレル=50~55ドル水準に対して6月21日の42.05ドルまで急落していたが、年末にかけては60.42ドルまでの急激な切り返しをみせた。石油輸出国機構(OPEC)やロシアの協調減産体制が維持されている一方、世界の石油需要は堅調な伸びを示しており、余剰在庫が一掃とまでは言えないが解消方向に向かっていることが高く評価されている結果である。
その流れは年明け後も維持されており、直近の高値は63.67ドル(1月10日)にも達しており、14年12月以来の高値が更新されている。年末・年始を挟んでイランの反政府デモが供給不安を高めたが、その後は反政府デモが収束に向かったにもかかわらず、原油価格の高騰が続いている。
米国でイランとの核合意を見直す議論が活発化する中、一種の「トランプ・リスク」が強く警戒されている結果である。金融大手シティ・グループなどは1月9日付の最新レポートにおいて、中東や北朝鮮の地政学リスクが顕在化すれば、70~80ドルまで原油価格が更に高騰する可能性を警告している。
14年や15年の段階では過剰在庫を抱えていたことで、国際原油市場は各種の供給リスクを無視することができ、マーケットは寧ろ供給トラブルを原油需給・価格正常化のきっかけとして歓迎するムードさえみられた。しかし、在庫過剰の解消が進んでいることは、供給ショックに脆弱な通常の原油需給・価格環境に回帰し始めていることを意味し、トランプ大統領の対イラン政策の行方によっては、ガソリン価格の160円台乗せといった事態が予想以上に早く実現する可能性も浮上することになる。
仮にこうした中東や北朝鮮情勢を巡る大きな混乱状況が派生しなければ、シェールオイルの増産圧力が原油価格の上昇余地を限定することになる。米エネルギー情報局(EIA)は今年の原油価格の平均値として、現在の値位置を大きく下回る55.33ドル(昨年は50.79ドル)を想定している。このため、必要以上の原油高は逆に将来の需給緩和・価格低下リスクを高めることには注意が必要である。ただ、原油市場では余り材料視されていなかった「トランプ・リスク」について、今後はドライバーも関心を払う必要がありそうだ。米国=イラン関係の行方によっては、国内ガソリン価格は更に急騰することになる。