試合には負けたけど、おかげさまで優勝が決まりました!《阪神ファーム》
22日に行われたウエスタン・広島戦(由宇)で、阪神タイガースのファームが8年ぶりの優勝を決めました。優勝へのマジックナンバーを1として迎えた21日のソフトバンク戦は、9回裏に1点返すのが精いっぱいで敗戦。甲子園球場へ来てくださった2644人のお客様に胴上げを見せられず、今季のホームゲームを終えたわけです。
祝勝会用に準備されていた軽食を頬張りながら荷物を出し、遠征先へと移動していった選手たち。まあ祝勝会といっても例年、乾杯をする程度ですし、この日は大急ぎで遠征に出発しなければならないとわかっていたので軽食(唐揚げ、フライドポテト、いなり寿司など)だったのでしょう。
残るは由宇での広島3連戦のみとなり、勝つか引き分けるか、もしくは中止でも優勝は決まるという21日と同じ条件で臨んだ22日の広島戦ですが…またしても自力で決められませんでした。馬場投手が3本塁打を浴びて3回までに4点を失い、こちらはわずか4安打で完封負け。でも、タマホームスタジアム筑後でソフトバンクと戦うオリックスがアシストしてくれて優勝が決まっています。
なお、きょう23日の広島-阪神戦(由宇)は2回に緒方選手の2ランで先制したものの、逆転負けを喫しました。ちなみにソフトバンクもオリックスに負けています。阪神はあす24日が今季最後の公式戦です。4連敗でのシーズン終了はさすがに寂しいので、何とか勝って帰ってきてください。
では22日の試合結果をどうぞ。
《ウエスタン公式戦》9月22日
広島-阪神 23回戦 (由宇)
阪神 000 000 000 = 0
広島 301 030 00X = 4
◆バッテリー
【阪神】●馬場(6勝3敗)-福永 / 長坂
【広島】床田(3回)-○加藤(6勝4敗1S)(2回)-佐藤(1回)-ケムナ(1回)-中村恭(1回)-今村(1回) / 中村奨
◆本塁打 広:下水流2号2ラン、メヒア14号ソロ、メヒア15号ソロ(馬場)
◆二塁打 神:俊介 広:桑原
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]指:江越 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .214
2]二:荒木 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .224
3]右:高山 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .268
4]遊:板山 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .284
5]中:俊介 (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .348
〃打:緒方 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .271
6]一:山崎 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .254
7]三:今成 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .270
8]捕:長坂 (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .258
9]左:島田 (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .237
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
馬場 7回 87球 (7-5-0 / 4-4 / 3.30) 147
福永 1回 19球 (1-1-0 / 0-0 / 3.79) 144
《試合経過》※敬称略
打線は1回、先頭の江越が中前打を放ち、1死後に高山の右前打で一、三塁とチャンスを迎えるも、後続を断たれて無得点。先発の馬場はその裏、1死から桑原の二塁打に続いて下水流の2ラン、メヒアにもソロ。2死後にまた連打されながら抑えましたが、いきなりの3失点…。2回は三者凡退でしたが3回はまたメヒアのソロ(2打席連発のメヒアはこれで江越と並ぶ15号)。
計3本のホームランを浴びて序盤に4点を失った馬場でしたが、4回からは3イニング連続で三者凡退!7回は1死後、永井に左前打されたあと長坂が盗塁阻止!代打・坂倉を空振り三振に仕留めて3人で片付けています。8回は福永が登板して、まず安部を荒木の好守備で二ゴロに。2死から下水流に右前打されるも、最後はメヒアを空振り三振!追加点は与えていません。
2回、3回と三者凡退だった打線は2人目の加藤に対し、4回2死から俊介が中越え二塁打を放ちましたが、山崎は三振。5回は長坂と島田が連続で四球を選んで1死一、二塁としたものの江越は三振、荒木は投ゴロで得点なし。6回は先頭の高山がエラーで出ますが板山は三ゴロ併殺打。次の俊介に中前打という噛み合わない攻撃になっています。7回、8回、9回はリリーフ陣をとらえることができず、すべて三者凡退で試合が終わりました。
待機→胴上げ→胴上げテイク2
由宇は14時47分にゲームセット。一方、30分後の13時に試合が始まったタマスタはまだ中盤です。まずオリックスが3回に3点を先取すると、その裏にソフトバンクは4点取って逆転。由宇の試合が終わった頃の6回にオリックスが追いついて、7回に3点を勝ち越し。これで7対4となり、1点返された直後の8回にまた2点を追加したオリックス。ソフトバンクもじわじわと追い上げたものの、結局9対6でオリックスの勝ち。終了は16時12分、約1時間半の待機でした。
試合終了の報を受けてロッカールームから監督、コーチ、選手、スタッフの皆さんが一塁ベンチへ集まり、16時15分頃には三塁側ベンチ前で広島の水本監督やコーチ陣、残っていた選手たちも整列してくれて、いよいよ胴上げ開始です。とはいえ、そう慣れているわけでもないので率先する選手がいません。何となく打ち合わせのようなものがあり、矢野監督自ら「やらせの胴上げ、お願いしま~す!」と叫んで笑いを取り、選手たちからは「8回、8回」という声。
そして矢野監督が宙に舞い…いや“舞う”とはかけ離れた感じでクルクル回転してしまい、8回どころか3回で崩れてしまったのです。そんな状況ゆえカメラマンの皆さんから「ワンモア」とリクエストが。矢野監督は「ええ~!そんな。もう1回やったら、ほんまにやらせやで」と笑いながら拒否しますが、結局は「ほなやろか?もう1回」とスタンバイ。また矢野監督の掛け声と「3回やな?3回」という確認でスタートし、今度は前よりきれいな3回でした。
自力で決めたかったという思いから、やはり複雑な表情の選手もいました。自分たちが勝っていれば、もっと晴れやかに監督を胴上げできたのにと。だからこそ、でしょうね。そんな気持ちを察したからこそ、矢野監督はあえて「やるよ」「頼むよ」と明るく選手に声をかけ、自ら盛り上げたはず。ここにも矢野イズムがあったような気がします。
とはいっても、かなり不安だった1回目とテイク2を合わせた計6度の胴上げで、みんなも笑顔いっぱい。そういえば安藤コーチは、両手を挙げてカメラ前に割り込んだりしていましたね。また全部終わったところで島田選手が「ありがとうございました!」と大きな声で締めくくったのも、何だか成長を見たような気がして嬉しくなりました。
ところで、イースタン・リーグは巨人が2位に10ゲームくらい差をつけ、ぶっちぎりで優勝を決めています。これまで阪神が優勝したら巨人はしない、巨人が優勝する時に阪神はできないという巡りあわせで、1987年から始まったファーム日本選手権で一度も顔を合わせたことがありません。でも、ついに夢がかないました!勝てば2006年以来、12年ぶり5度目の日本一…ってのはまだ早すぎますか。
矢野監督のインタビュー全文
優勝が決まってから、矢野監督はまずテレビのインタビューを受けました。その内容からご紹介します。
Q、監督として胴上げされた今の気分は?
「そうですね、まあちょっと気持ち的には微妙な…。勝って胴上げしてもらいたかったですけど。でもやっぱり気持ちよくてね。やっぱり嬉しいです」
Q、1年間通して戦ってくる中で、ことしのチームはどんなふうに?
「みんなの可能性を僕自身も信じて、コーチのみんなもそう思って指導してくれて、みんな選手自身に眠っている可能性っていっぱいあるんだなと。ウエスタン記録になった盗塁の数とか、そういうのはわかりやすい数字ですけど、可能性のある選手が多いので、1年間ほんとに充実してやれましたね」
Q、その中でも陽川選手や大山選手などが1軍で活躍しましたね。
「僕たちはもちろん優勝できたってのも嬉しいですけど、一番の目標は選手の可能性を広げて1軍で活躍して定着してレギュラーになって、そしてファンの人に喜んでもらうことなので、そういう選手が出てくれたのは本当に嬉しいですね」
Q、“喜ばせる”というキーワードが出てきたが、矢野さんも先ほどはサイン会をされていたし、現役時代はヒーローインタビューで我々を楽しませてくれました。そういう意味で今のファームの選手たちはどうですか?
「そうですね。ちょっとずつ、そういう部分も。鳴尾浜でも何かメッセージを伝えようとか、まずはプレーで喜ばせてほしいんですけど。そういう部分でも、この選手を応援したいなとか、あいつ気になるなって思ってもらえれば俺らも嬉しいんで。そういうのもチームとして少しずつやってくれていると思います」
Q、ファームのMVPをあえて挙げるとしたら?
「うーん…難しいですねえ。まあでも試合には数多く出ていないですけど、小豆畑とか西田とか試合前の円陣ですごく盛り上げてくれたり、そういう選手もいたので。目に見えて盗塁したりホームランを打ったり勝ち投手になったりもありますけど、そういう選手を含めてみんなでやれたシーズンだったので、誰か1人ってのは難しいですね。そういう選手たちにも本当に感謝しています」
「過去よりこれからのことを考えていこうな」
Q、苦労された点は?
「それがね、あんまりなかったんですよ。最後のこの優勝と、この前の甲子園で優勝したかったというのはね、ちょっと残念な部分ではありますけど。本当に苦労というよりは充実した毎日を選手たちと一緒に過ごせたので、僕自身も楽しい…というのが合っているかどうかわからないですけど、そういう日々でした」
Q、ファームには不調で落ちてくる選手もいますし、ベテランから若手まで幅のある選手がいますけど、どういうアプローチを?
「僕は心技体で気持ち、心の持ち方がすごく大事だと思うので、技術はもちろん伝えないとダメですけど、そういう部分で“もっとやれる”とか“お前ならこういうとこが伸ばせるはずだ”とか、先ほど言ったように可能性のある部分を選手たちにしっかり伝えて、それを何とかやっていこうと意識してきた。本当に中堅、ベテランみんな、僕がもっとこうやってくれってのを言わなくてもやってくれましたし。西岡なんかは、その典型だった」
Q、これから1軍に送り出すファームの選手へかける言葉は?
「いつも言うのは、変わったことはできないので、今の自分にできることを信じて。悪いこと、三振したとかフォアボールを出したとか、そういうのに引きずられるのではなくてね、三振しても次の打席でヒットを打てばいいし、フォアボールを出しても次のバッターを抑えてゼロで帰ってきたらいいし。過去よりこれからのことを考えていこうなっていうのは常に言っている感じですね」
Q、イースタンは巨人が優勝、ファーム日本一をかけて戦うことに
「これもまたファンの人に喜んでもらえるものになるので、1試合だけですけど、ことし最後の試合として精一杯戦いたいですし、もちろん結果も求めて。今度はグラウンド上で胴上げしてもらって、阪神ファンの人に喜んでもらってというところを目指して頑張ってきます!」
「指導者としての中心にある超積極的」
続けて行われた囲み取材での矢野監督。試合を振り返って「1軍に上げる可能性を信じて伸ばしていきたい、眠っている可能性を呼び起こして1軍で何とか定着したり、試合に出られるようにというのを目指してきたんだけど。後半になると優勝ってのはもちろんあったし、俺自身もゲーム差がポンと開いて逆に難しかったというか、これだけ開いちゃったから勝たないとまずいよなっていう自分もいて。だからちょっと難しいゲームに、俺がしちゃったかもしれない」と話しました。
勝ち続けていく中で監督も選手も学んだことがありますか?「そうやね。やっぱり勝っている時は選手がいい顔してやっているし、いいプレーも多いよね。負けて学べることもたくさんあるんだけど、勝ちたいと思ったところの1個のアウトとかタイムリーとか、1個の盗塁とか全力疾走とか。でも選手には『そうじゃないぞ。勝っている時はできるけど、負けている時にそうやってできるのが逆にすごいことやぞ』と。全然関係ない時に凡打で一塁まで走るのは大変だと、俺自身も思うから」
超積極的はこれから成熟段階に入っていくのか、いったん完結するのかという質問に「俺は盗塁の数なんて知らんかってん。ウエスタン記録、なんぼ?みたいな(笑)。でも俺は超積極的にいくことで可能性を伸ばせると信じていたのよ。アウトになってもいいからトライしろよって。トライしたことから学んで、そのために走る準備力を高めて、アウトになっても学んでくれたらいいからと、こっちが背中を押したら選手がバンバン盗塁し出した」と矢野監督。
続けて「それって俺らが可能性を止めてしまっていた部分があるのよ。アウトになったら“何してんねん!”って言うことで選手たちは、次は怒られないようにしかプレーしなくなる。それじゃあ選手は伸びない。だから、ここではチャレンジやぞ、と。ここで盗塁できないやつが、上に行ってできることはあまりない。ここでチャレンジして“これでええんやな。上に行った時に、このピッチャーやったら俺も盗塁できるんちゃうかな”と思える。選手もチームもみんなプラスになる」と好循環を強調。
「そういうふうにやっていったことが、つながった。俺の指導者としての中心に超積極的っていうのがある。これからも変わらない。それが自分の中で確認できた1年だった」
人それぞれの役割があってのチーム
ファーム日本選手権で、今度は勝って胴上げですね。「まあね。でも1試合やろ?難しいとこあるねん。テレビ用にそう言うたけど(笑)。まあそういうのを経験できることがまず大きいと思うし、負けていい勝負はないからね。やる限りは全力を尽くして、戦っているメンバーで勝ちにいく。そういう1試合にしたいなと思うけど。まあ結果は。みんなに無理やりやってもらった胴上げじゃなくて、ちゃんとやってもらえたら最高やから、それを目指して」
このあと選手たちにどんな話を?「感謝っていうと大げさなのかもしれないけど、本当にそういう気持ちがあって。さっきも(西岡)剛の名前を出したけど、ファームに来て中堅やベテランが腐っていたらよくないのよ。だけど彼らは率先してやってくれた。森越とか今成とか、荒木もそんな表に出る方じゃないけどやってくれた。そういうのがタイガースの伝統として当たり前になってほしいなと思う。逆に、腐っているベテランや中堅を見て若いやつが、それでええんやと感じたら一番困るなと思ってたけど、頼んだわけじゃないのに率先してやってくれたから感謝している」
そういう話をきっと宿舎に戻って矢野監督はされたのでしょう。そしてテレビインタビューでも名前を挙げた、試合に出て活躍する選手がチームのすべてではなく、それ以外のところで支え、盛り上げている選手も大切だと言います。
「それに小豆畑も西田も。小豆畑は試合前の円陣で(発言し)、あいつのキャラだけどみんなにいじられて、あれだけ毎日やったらもうしゃべることないやろと思っても、そこにチャレンジして。結局シラーッとして終わるんだけど、それもすごく大事なのよ。西田は逆にメッチャ面白い話を持ってくるわけよ。横田は横田で、今できることは何なの?となったら一番声を出しよるねん。この前の鳴尾浜最終戦は、静かやなと思ったら横田がおらんかった」。多くの名前が出てきました。
「そういうのも含めて、チームとして何人か外れているやつがいるのではなく、輪になっていたんじゃないかなと思う。チームとして人それぞれ役割は違うけど、そういうのをみんなやってくれて、全体で戦えたかなと」。円陣での声出しは最初、森越選手が率先して盛り上げていたんですよね。そこから矢野監督の発案で始まった“ヒーロースピーチ”。きょう23日から1軍に昇格した島田選手が、その成果を見せてくれたら嬉しいですね。
<掲載写真は筆者撮影>