「ちゃん」付けはアウト?やりがちな無自覚の「環境型セクハラ」に注意
改めて「セクハラ」とは何か
「セクハラ」とは、「セクシャル・ハラスメント」の略です。職場において、性差別につながる発言や、性的な言動による嫌がらせをすることです。また、セクハラには「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2種類があります。
今回は、「環境型セクハラ」のうち、無自覚にセクハラをしているケースについてお話しします。この場合の「無自覚」とは、加害者側には性的な意図も認識もないという意味です。たとえ加害者側に性的な意図がなくても、被害を受けた被害者が不快になり、職場に居づらくなってしまえば、それはセクハラです。
呼び方には心の親密度が表れる
「相手をどう呼ぶか」は、「相手をどのくらい親密に感じているか」に比例します。「◯◯さん」よりは「◯◯ちゃん」、「◯◯ちゃん」よりは「呼び捨て」の方が、より親密度が上がって感じませんか。呼び方には、人間関係の距離感が表れます。そういった意味で、「たかが呼び方じゃないか」と軽視できない、重要な役割を持っています。
呼び方には「相手とどんな関係性になりたいか」が表れます。例外的に、職場では年齢によって使い分けている場合もあります。自分から見て年上の相手には「◯◯さん」、年下の相手には「◯◯ちゃん」と呼ぶケースもありますが、概ね「◯◯ちゃん」と呼ぶ場合、親しみを込めて、あえてそう呼んでいるのです。
「◯◯ちゃん」と呼ばれた女性部下はどう思うか
では、呼ばれる方の気持ちはどうなのでしょうか。「◯◯ちゃん」と呼ばれる女性部下の気持ちを考えてみましょう。
●「嬉しい」と感じているケース
「フレンドリーな感じで、好意的な印象を受ける」という場合や、「上司との距離が短く、頼られていると感じる」と嬉しく思っている女性部下もいます。この場合、特に問題はないでしょう。
●「嫌だ」と感じているケース
「必要以上に馴れ馴れしくされている」と不快に思ったり、「異性である男性上司から『◯◯ちゃん』と呼ばれることが気持ち悪い」と感じている女性部下もいます。また、自分以外の女性部下は「◯◯さん」と呼ばれているのに、自分ひとりが「◯◯ちゃん」と呼ばれていることが特別扱いのようで釈然としないケースもあります。逆に、「◯◯ちゃん」と呼ばれる女性部下が多い場合は、自分だけ「◯◯さん」と呼ばれて疎外感を味わっている女性もいました。
男性上司は、親しみを込めて「◯◯ちゃん」と呼びかけているつもりでも、呼ばれた相手が不快だと感じていたら、それはセクハラです。女性部下から「自分に好意を持っているのかもしれない」と、あらぬ誤解を受ける可能性もあります。
「セクハラかどうか」は相手の気持ち次第
セクハラの「グレーゾーン」とされるものには、以下のような例があります。
・「結婚はまだ?」「今は彼氏いる?」と尋ねる
・「最近ちょっと太った?」「シワが増えたね」など見た目の話題
・肩を揉んだり、手を握る、腰を触るなどのボディータッチ
このようなグレーゾーンの例に、「ちゃん付けで呼ぶ」も含まれます。
セクハラかどうかの基準は、女性部下が「不快に感じるかどうか」によります。上記のような例は一見して「セクハラだ」と思うかもしれません。しかし、された側が不快に感じればセクハラですが、不快だと思わなければ、セクハラではありません。
同様に、「ちゃん付けで呼ぶ」も、呼ばれた側が不快ならセクハラですが、何とも思わないようならセクハラではないのです。
企業の中には、社員全員にニックネームをつけて呼んだり、それぞれが「◯◯ちゃん」と呼び合っている会社もあるので、社風にも左右されます。
まとめ
実際には、「◯◯ちゃん」と呼ばれて嫌な思いをしていても、部下の立場からは言い出せないケースも多くあります。そうした可能性を考慮すると、上司は部下の呼び方に気を配る必要があります。
しかし、同じ親しみを込めた呼び方でも、関係性の良い上司から呼ばれると「嬉しい」、関係性が良くない上司から呼ばれると「嫌だ」となることもあります。「誰から呼ばれたのか」により感じ方は180度変わるので、「これはセクハラに当たるのか」を事細かに気にするよりは、普段のコミュニケーションに気をつけて行動していきましょう。
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太田 章代