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渡米後も収まらぬ小室圭さん・眞子さんへの報道熱 パパラッチするリスクを取材者の体験談から考える

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:アフロスポーツ)

 ニューヨークで新生活を始めた眞子さんが、イギリスのタブロイド紙「デイリー・メール」にパパラッチされたことが報じられている。「女性セブン」も早速現地で小室圭さん・眞子さん夫妻をパパラッチしており、小室夫妻に対する報道熱は収まりを見せていない。

 今後は、日本から記者やカメラマンがもっとニューヨークに乗り込んで来る可能性もあるだろう。ユーチューバーや現地に住む人々が“にわかパパラッチ”や“なんちゃってパパラッチ”となって、小室夫妻を追いかけることも起こりうる。

 しかし、パパラッチすることはリスクも伴う。パパラッチするには、マンションの出入り口や駐車場の出入り口など、取材対象者の出入りが起きる場所で長時間にわたり張り込みをしたり、尾行や車で追跡をしたりする必要があるが、そうした行動は様々なリスクをはらんでいるからだ。

パパラッチがバレたカメラマン

 アメリカでセレブを追いかけた取材者たち(日本人)の体験談を紹介しよう。

 場所はラスベガスの高級ホテル内のカジノ。そのホテルに宿泊していたあるセレブがブラックジャックしているところをパパラッチしていたカメラマンがいた。ところが、彼は柱の陰から撮影しているところをそのセレブの付き人に見つかってしまった。セレブとその付き人が彼を取り囲んでカメラを取り上げ、画像が入っているメモリーカード内のデータを全消去し、力持ちのその付き人はなんとそのカメラマンを頭上高く持ち上げてしまった。カメラマンは手足をバタつかせて「乱暴は止めて下さい」と声をあげ、何とかその場から逃れることができたという。

 場所はロサンゼルスのある高級住宅地。記者たちが、その住宅地に住むセレブの家の前の公道で、数日間にわたり車中で張り込みをしていた。すると、その付近に住んでいると思われる通りがかりの女性から「あなたたち、そこで毎日何しているの? 警察に通報するわよ」と凄まれ、スマホで、彼らの写真と車のナンバープレートの写真を撮られたという。公道であっても、長時間にわたって同じ場所にいると住民には不審がられるのだ。彼らはその女性に「取材だ」と説明したというが、聞く耳を持たれなかったようだ。記者は自分たちがアジア系で、白人居住者が多い住宅地の公道では目立っていたことも写真を撮られた一因ではないかと推測していた。

不法侵入して直撃

 無謀な直撃取材にもリスクが伴う。

 場所はテキサス州のあるゲーテッド・コミュニティ(ゲートを設けて、住民以外の出入りを制限している住宅地)。日本人記者は、ある人物を直撃すべく、そのゲーテッド・コミュニティに住むある人物の家をピンポンして、質問をぶつけた。取材を終えて、去ろうとゲート・コミュニティ内を運転している最中、彼は、サイレンを鳴らしながら追いかけてくるパトカーに気づいた。何かと思い車を止めると、警官に「不法侵入だ。車の中を調べる。パスポートを見せろ」と凄まれ、武器を持っていないか身体や車内を調べられ、危うく逮捕されそうになったという。彼は、ゲーテッド・コミュニティのゲートが開いており、ゲートには守衛もいなかったので、中に入ってその人物の家をピンポンしていた。許可を得ることなく、ゲート・コミュニティの中に入ったため、彼は不法侵入者とみなされてしまったのだ。おそらくは取材対象者が警察に通報したのだろう。

 ある日本人記者は、高級住宅地ビバリーヒルズにある某ハリウッド・スターの状況を取材しようと、ハリウッド・スターの家の付近をピンポンして聞き込みをして回ったことがあった。すると、まもなく、その地域をパトロールする警察の車が目につき始めたという。職務質問こそされなかったものの、その記者は、自分の行動が怪しまれているに違いないと確信していた。

 また、ある日本人記者は、フリーウェイ(高速道路)から、取材対象の人物が勤務する問題の企業の外観写真を撮影したことがあったが、数日後、その取材対象者から「フリーウェイから企業を狙っているテロリストがいたことが社内で騒ぎになった」という話を聞き、それは自分のことを指しているのではないかと青ざめたという。写真を撮っていた光景が、銃を向けている光景に見えたのかもしれないと。

 このように、筆者は、パパラッチが乱暴な目にあったり、取材者が不審人物やテロリストに間違えられたりするという体験談を少なからず聞いてきた。張り込みや尾行、追跡による取材、不法侵入に当たるような行き過ぎた取材は警察に通報されるリスクが伴うし、実際に通報されることもあるのだ。

 特に、アメリカでは、9.11以降、市民の警戒感が高まっている。また、取材者が日本人のようなアジア系ともなれば白人以上に人目を引くことになるので、不審人物とよりみなされてしまうリスクもある。

車で追跡しパパラッチするリスク

 もちろん取材にリスクはつきものだし、リスクを取らなければスクープを得られないとも言える。「報道の自由」もある。

 あるパパラッチは筆者にこう明言した。

「取材対象の了解を得た上での写真など撮りたくない」

 しかし、パパラッチも行き過ぎる無謀な行動を取った場合、自身や取材対象者が危険な目にあうリスクもあるのだ。特に、車で追跡してパパラッチすることは危険を伴う。

 例えば、2012年7月、人気ポップ・シンガーのジャスティン・ビーバーが、フリーウェイを制限速度超えで走っていたことから、スピード違反で警察に検挙されるという事件が起きた。ビーバーがスピード違反を犯してまでして走っていたのは、パパラッチに猛スピードで追跡されていたからだ。この事件では、2011年にカリフォルニア州で施行された、有名人の写真撮影を目的とした無謀運転を禁じている「反パパラッチ法」が初めて適用され、パパラッチしていたカメラマンが検挙された。

 この翌年には、ビーバーを追跡していたパパラッチが高速道路で車には撥ねられて死亡する事故が起きている。

 また、2017年7月には、今度は、ビーバーの方がビバリーヒルズにある教会の礼拝に出席後、止めていた車を出そうとした時にパパラッチを撥ねるという事故が起きている。

 セレブとパパラッチの対立が起きているアメリカでは、このような事故が起きるリスクもあるのだ。

 眞子さんは渡米前に国際免許証を取得したとみられている。アメリカ生活に慣れれば、車を運転することもあるかもしれない。過剰な報道熱が続けば、パパラッチによる無謀な追跡が事件や事故に繋がらないとも限らない。1997年には、ダイアナ妃が乗っていた車がパパラッチに追われてトンネル内の柱に激突、ダイアナ妃が亡くなるという悲劇も起きている。

 また、パパラッチの無謀な行動により、パパラッチ自身や取材対象者だけではなく、その時周囲にいる関係のない人々も危険な状況に巻き込まれるリスクだってあるだろう。

 パパラッチすることは「報道の自由」だ。しかし、同時に、無謀なパパラッチをすることにより、事件や事故が起きるリスクがあることも認識されて然るべきではないか。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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