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国際ホロコースト記念日に「アンネ・フランクのデータベース」公開

佐藤仁学術研究員・著述家
アンネ・フランクハウス提供

ホロコースト教育でも人気のアンネ・フランク

第2次世界大戦時にナチスドイツによって約600万人のユダヤ人が殺害された、いわゆるホロコースト。1月27日は国際ホロコースト記念日である。1945年1月27日に旧ソ連軍によってアウシュビッツ絶滅収容所が解放された日であり、国際ホロコースト記念日に制定されている。

そしてホロコースト犠牲者のアイコン的存在として世界的に有名なのがアンネ・フランクである。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスの標的となり迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。

そんななか、アウシュビッツ絶滅収容所解放から78年目の2023年1月27日の国際ホロコースト記念日にアンネ・フランクハウスは「Anne Frank Knowledge Base」(アンネ・フランク・ナレッジベース)を開設した。Anne Frank Knowledge Baseではオンラインでアンネ・フランクや家族、匿ってくれた関係者や学校時代の友人などの情報、当時の様子がオンラインで確認することができる。またフランクフルト、アムステルダム、アウシュビッツなどアンネ・フランクに関係の深い場所が地図上で表示されて、その場所でのアンネ・フランクや関係者の情報が知ることができる。

欧米やイスラエルのホロコースト教育ではホロコースト犠牲者の情報を調べて発表している。調べるツールはほぼオンラインである。ネットで検索している。欧米でも日本と同じで図書館で本で調べるよりもインターネットで検索している。欧米やイスラエルのホロコースト博物館ではホロコーストの記憶と経験を後世に伝えるために、記憶のデジタル化に注力しており、様々な情報をデータベース化している。それらの情報はオンラインで世界中から検索して調べることができる。イスラエルの国立ホロコースト博物館のヤド・ヴァシェムでは約480万人のホロコースト犠牲者のデータベースがあり、それらは世界中からネット経由で閲覧することもできる。

だが、世界中の若者に人気があるのはアンネ・フランクである。世界中の若者に人気のインスタグラムには世界中のアンネ・フランクのファンがアンネの当時のモノクロ写真や、アムステルダムにある「アンネの家」を訪問した写真をたくさん投稿している。アンネ・フランクの生涯は「アンネの日記」をもとにした映画、ドラマ、演劇、アニメ、マンガなどで世界中で作品の題材として取り上げられ、演じられている。アンネの生涯を忠実に描いたノンフィクションである。

そのためホロコースト教育でも世界中の若者が調べて発表するのはほとんどがアンネ・フランクである。たしかに地元にホロコースト生存者が住んでいて、講演会で直接話を聞いたことがない限り、世界中の多くの若者にとってホロコースト犠牲者を調べたりすることは容易ではないし親近感がない。その点、アンネ・フランクは小説だけでなく映画、ドラマ、アニメなどで親しみもあるので学校のホロコースト教育の授業で調べるモチベーションにもなる。アンネ・フランクハウスが新たなに開設したAnne Frank Knowledge Baseも世界中の多くの若者のホロコースト教育で使用されるだろう。

Anne Frank Knowledge Base

▼アンネ・フランクハウスでAnne Frank Knowledge Base開設を伝える

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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