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雛祭り・おばあちゃん・国際女性デー

治部れんげ東京科学大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト

明日は雛祭りですね。我が家は2歳娘のため、先週、お雛様を出しました。もともと私のものだったのを実家から送ってもらいました。狭いマンションなので、全員集合ではなく、お雛様お内裏様と三人官女に花や色んな道具を並べています。五人囃子は、近い将来、もう少し広いスペースが取れるようになったら登場してもらう予定です。ずっと親しんでいる顔が並ぶと、懐かしく嬉しい気分になります。ああ、そうだ、この顔を自分が幼稚園の時も、小学生の時もずっと見てきたんだと。

お雛様を出すと思いだすのが、母方の祖母のこと。お雛様を飾る大きなガラスケースと人形のセットを大きな箱に入れて、静岡の自宅から当時私たちが住んでいた川崎まで、自ら持ってきてくれました。

「おばあちゃんはね、これをかついで持ってきてくれたの」と、母から何度も聞いていたので、そのシーンをまるで見ていたかのように思い出します。こういうエピソードに象徴されるように、祖母はとても優しく働きものでした。大きな農家の家に生まれたため、小学校を出るかでないうちから、家の手伝いをたくさんしていました。友達の家の前を通ると、教科書を読む声が聞こえて「いいなあ、私も勉強がしたいな」と思った、という話を祖母自身から何度か聞いたものです。

時代が時代だったので、娘時代は軍需工場で働いたそうです。「欲しがりません、勝つまでは」というフレーズは、祖母本人から聞きました。工場でよく働いたので表彰されたのが自慢でした。

20歳前後で結婚すると、大勢いた小姑たちの世話、そして家事と育児。働きもの気質は子どもの手が離れても変わらず、お盆やお正月に遊びに行くと、手打ちそば、海老フライ、自分で握ったお寿司や揚げ物をテーブルに一杯並べて「たくさん、食べな」と言ってくれたものです。

祖母が子育てをほぼ終えた年と、ほぼ同じ年になった私は、2歳と5歳の子どもを育てながら仕事を続けています。女の子も男の子と同じように教育を受けるべきと考える両親のもと、高等教育を受けたおかげで、同じ能力を持つ男性と同じ仕事をして同じ賃金をもらえる環境にいます。

残念ながら、祖母は私が大学生の時に亡くなりました。その後も人生の節目節目で、祖母のことをよく思い出します。アメリカに留学していた頃、雪の積もった美しいキャンパスを歩きながら、祖母ともう一度話をしたいと思いました。「おばあちゃん、日本はもうアメリカと仲良くなっているよ。アメリカで勉強する時、私を応援してくれた人がたくさんいるんだよ」と。

今度の土曜日、3月8日は国際女性デーです。祖母が切望した、勉強する権利を当たり前のように享受できたことのありがたみを感じつつ、それを獲得するために戦った女性達のことも、あらためて学びたいと思います。

7日(金)には国際女性デーにちなんで、女性議員を増やすための会議が開かれます。主要政党の女性議員も参加するので関心と時間がある方は、足を運んでみませんか。

http://wlb-cafe.hatenablog.com/entry/2014/02/24/115254

東京科学大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト

1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。2006年~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年からフリージャーナリスト。2018年一橋大学大学院経営学修士。2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、国際女性会議WAW!国内アドバイザー、東京都男女平等参画審議会委員、豊島区男女共同参画推進会議会長など男女平等関係の公職多数。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館新書)、『ジェンダーで見るヒットドラマ』(光文社新書)などがある。

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