本日夕方全国放送:まだみたことがない人にも触れてみて欲しい、映画「この世界の片隅に」
2016年公開のアニメ映画「この世界の片隅に」が、本日8月9日の夕方、昨年に引き続き再び地上波で放送されます。
“この時期に放送される、1945年前後の広島を舞台とした物語”
ーと聞くと、中にはどうしても身構えてしまったり、敬遠してしまう人もいるかもしれません。
しかし本作は、そうして見逃してしまうにはあまりにももったいない作品でもあります。
「この世界の片隅に」は、こうの史代氏による漫画を原作とした劇場版アニメです。
1930~40年代の広島を舞台に、広島市江波に生まれ、18歳で呉市へ嫁いだ女性・すずさんを主人公として、そこに生きる人々の生活や、様々な出会いと別れが描かれています。
映画の制作に際しては3000人を超えるファンからクラウドファンディングによる支援があり、完成・公開以降も鑑賞した人々から熱い支持を受け、当初は63館であった上映館数も、最終的には累計400館を上回るほどに広がり、公開から実に3年以上となる1133日に渡って各地の映画館でロングラン上映されるほどの根強い人気作となりました。
そんな本作の魅力のひとつとして、終戦前後の広島という要素を持ちながらも、あくまで物語の主軸がそこで生きる人々のドラマにあることが挙げられます。
それによって本作には、”戦時中の描写がある”と聞くとどうしても感じてしまう『こういう感想を抱かなければいけないのかな。こういうことを考えなければいけないのかな』といったプレッシャーよりも、作中で描かれる人々の感情や生活から自由に感想を抱かせてくれる懐の深さがあるように感じられるのです。
その点は本作が、ともすれば作品鑑賞のハードルを上げてしまう戦争という題材を含みながらも、戦争を体験した世代・親から聞いた世代・教科書の中の出来事である世代に関係なく、みた人がそれぞれの見方で作品に感情移入でき、幅広い層に受け止められて、ここまで支持されるようになった一因にもなっていると思います。
どうしても避けることは出来ない当時の広島での出来事ももちろん含まれますが、「この世界の片隅に」では、主人公・すずさんの十数年間を通して、その当時、その地域で生活していた人々がどんな生活を送って、どのようなことを想って、世界をどのようにみていたのかをのぞかせ、想像させてくれる物語が何よりも真摯に描かれています。
そんな本作は、確かに戦争映画にも分類される要素は持ちつつも、思わず身構えてしまうような“この時期に放送される、1945年の夏にかけての広島を舞台とした物語”と聞いて思い描くものとは少し違った景色と映画体験をも、きっともたらしてくれるはずです。
これまで敬遠していたという人も、この全国放送の機会に、すずさん達が紡ぐ物語に触れてみてはいかがでしょうか。
作品を好きになった方には、同じ時代が別の角度からも描かれた長尺版「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」もおすすめです。