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トップ5%の社員5つのの習慣(1/4)

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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今回のゲストは、2回目のご登壇となる株式会社クロスリバー 代表取締役社長の越川慎司さんです。越川さんは、コンサルティングを通して、805社17万人の「働き方改革」の支援事業を行ってきました。2020年9月には『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を発行。クライアント企業の働き方改革を支援してきた越川さんに、「トップ5%社員」が行っている習慣について聞きました。それは、意外とシンプルで誰もが真似しやすいものでした。

<ポイント>

・短時間で成果を上げる社員は、どういう働き方をしているのか?

・成果を出し続ける「5%社員」と、たまに成果を出す「20%社員」の違い

・5%社員が周囲を巻き込むために使っている法則とは?

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■トップ5%社員の働き方をAIで分析した結果

倉重:本日は2回目の登場で、越川さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。大変恐縮ですが、自己紹介をお願いしていいですか。

越川:株式会社クロスリバーという会社の経営をしています。コンサルティング企業で、日本企業を中心とした働き方改革の支援をする会社です。マイクロソフトを辞めてから5年近く、クロスリバーで「働き方改革」を支援して、805社、計17万人の働き方を変えてきました。

 ちなみに、われわれクロスリバー自身もメンバーが39名いまして、全員新しい働き方を毎日実践しています。もう4年以上全員週休3日ですし、週30時間労働です。

倉重:御社には副業の人しか居ないんですよね。

越川:専業禁止で、リモートワークは4年半前から完全に実践しています。われわれの学びもお客さまにご提供しています。

倉重:越川さんは元々マイクロソフトにいらっしゃったのですよね。

越川:マイクロソフトで、Word、Excel、PowerPointなどの担当役員でした。

倉重:ご著書の中でも「資料を作り過ぎるな」ということが出てきますね。

越川:PowerPointを使うことが目的ではなくて、「PowerPointで作った資料で相手を動かすこと」が目的だと思います。

倉重:越川さんは、働く方々の分析をされた結果、上位5%の方々の行動や思考プロセスなどをAI分析で浮き彫りにしたということですね。

越川:働き方改革は、労働時間を短くするだけではありません。「短い時間で成果を上げる社員は、どういう働き方なのだろう」ということを調べました。どちらかというと、社員教育や評価制度の見直しの観点から、突出した成果を出している人たちを調査したのです。われわれ人間には気付かないような共通点と一般社員との違いをAIが見つけだしてくれて、それを書籍にまとめました。

倉重:『トップ5%の働き方』ですね。誰もがそこに入りたいと思って働いているはずでず。そこを意識して、変えられるところは変えていけば、誰でも明日から使えることではないかと思います。

 まず、トップ5%の人はどういう形で働いているのか。原則1、2、3、4、5にそって伺います。

越川:『トップ5%社員の働き方」は、2019年までのbeforeコロナの調査です。若い人も含めてリーダーシップを持とうということでwithコロナの状態で調査したのが、2021年8月に発行した『トップ5%リーダーの習慣』です。今回は5%社員についてご説明します。

倉重:原則1が「目的のことだけ考える」。この辺はコロナでもコロナ後でも変わらないですよね。

越川:コロナでも変わりません。まずトップ5%社員は、個人の目標を達成する人です。チームの目標を達成する5%リーダーとは、目的が違います。目的のことだけ考えるというのは、例えば派手なPowerPointを作ったり、徹夜をしたりして充実感を持つということではありません。

倉重:作業をして「やった感がある」というのは、とても多くの人に経験があると思います。

越川:これは少し日本の評価制度の影響があると思っています。昔は成果の出し方が画一的で、お客さまのニーズも結構似たり寄ったりでした。高性能で低価格の製品を出しておけば売れるという時代だったのです。頑張れば頑張るほど売れるので、「頑張った自慢をすればよい」「結果ではなくプロセスをアピールすればよい」という意識になりました。そこが恐らく資料枚数を増やすことや、残業することにつながったのだと思います。

倉重:「資料を今日50枚追加してこい」などと言われましたね。

越川:僕がいたときもそうですけれども、中身は良くても他者よりも資料枚数が少ないから、「何でもいいから追加してこい」ということがあったのは事実です。

 ただ2000年代に入って評価制度がどんどん変わってきて、成果主義がより出てきました。その中で、資料の枚数が重要なのではなく、資料によってどうやって社内稟議(りんぎ)を通したか、契約を取ったか、どう人を動かしたかということに評価の軸足が置かれるようになりました。それを敏感に察知した5%社員は、目的・目標を常に明確にして、2週間に1回ぐらいは振り返って、目的の進捗(しんちょく)などを確認しています。

倉重:内省の時間を持っているということですか。

越川:そうです。内省の時間を取るということです。

倉重:少し話が戻りますが、目的というのはチームの目的ではなく、あくまで個人の目的というのが重要ですか。

越川:基本は年に1回、目標設定を上司と部下の1対1でやるものです。上司と部下で握っている内容を達成したら昇格して、達成しなかったら評価が下がるということをしています。そこを突出して、100%達成ではなくて120%、150%達成を狙っていくために必要なことは何かということを考えます。

倉重:「頑張ったからいいだろう」ではないということですね。

越川:書籍にも、「充実感ではなくて達成感を目的にする」と書きました。プロセスではなく、アウトプットで達成感を得るというのが5%社員の特徴です。

倉重:充実感と達成感は、確かに混同しがちですね。

越川:調べたら、ビジネスパーソンの稼働時間の68%が3つのタスクにとらわれていました。その1つが社内会議です。社内会議には43%も費やされています。

倉重:もう半分近くですね。

越川:それから14%が資料作成。派手なExcelとPowerPoint作成に時間をとられています。これは僕の責任でもあるかもしれないですが。最後の11%はメールとチャットです。

倉重:ほぼ何も生み出していないということですね。

越川:個人でコントロールできるところで言うと、例えば会議の発言数や意思決定などには影響を与えられます。一番影響を与えられるのは資料作成とメール・チャットのコミュニケーションのところです。特に資料作成は非常にシンプルで的を射た資料を作るのが5%社員です。伝えたいことをPowerPointのスライドにたくさん盛り込んでしまうのが一般社員ということが調査で分かってきました。

倉重:ちょうど前回の対談が『無敗営業』という本の高橋浩一さんでした。まさに同じ話で、「長い資料をひたすら読むのをやめろ」とおっしゃっていました。まず1枚でしっかり決める。その前にお客さんのヒアリングを先にするという、全く同じ話が書いてありました。

越川:例えばお客さまの対応で、「伝える」のを目指すのが一般社員。「伝わる」のを目指すのが5%社員です。

倉重:伝わった結果、契約を勝ち取るというのが目的ですからね。

■5%社員は運と実力を見誤らない

越川:彼らの特徴として、成功しても失敗しても必ず相手からフィードバックをもらう習慣が身に付いています。

倉重:契約できなかったとしても、ですか?

越川:どこが良かったのか、どこが悪かったのかを必ず聞きます。特に一般社員との違いは、うまくいったときも、必ず内省していることです。これが5%社員たるゆえんだと思います。成果を出す社員はトップ20%なのです。

倉重:意外といますね。

越川:成果を出し続ける社員がトップ5%です。特に従業員1,000名以上の大手企業ですとジョブローテーションがあり、大体3年から5年で部署が替わっていきます。5%社員というのは、部署が替わろうが、後輩が来ようが、変な上司が来ようが、成果を出し続けます。

倉重:営業から人事に替わったとしても、ですね。

越川:彼らが目指しているのは再現性です。運と実力を見誤らないというのがまず一つ。だからフィードバックをもらうのです。失敗したのはなぜか、成功したのはなぜかというロジックを自分の中で組み立てていて、次の成功確率を高くしていきます。成功確率を高くするというのが、5%社員と20%社員の違いです。

倉重:20%社員も成果はそれなりに出すこともあるけれども、毎回出せるかどうかわからないということですね。

越川:ここがポイントです。

倉重:20%社員は一匹狼的な人が多いですよね。周りにきちんと感謝を伝えたり、コミュニケーションを取ったりするのは少し苦手といいますか。

越川:20%社員は短期的なゴールを目指すのです。例えば営業では、ラッキーパンチはよくあります。

倉重:確かにたまたま大型契約というのもあります。

越川:そういう20%社員は、翌年すごく高い目標を設定されてクリアできないので、次の年は評価が下がっていくというのは、よくあるパターンです。

 5%社員は、やはり複雑な課題は1人で解決できないと把握しているので、「みんなで協力していこう。協力した人たちにはしっかりと報いよう」というチーム戦を挑む感じです。

■5%社員は「巻込力」が高い

倉重:その関係で次の原則2の話につながるかと思います。「弱みを見せる」というのは、チームを築いていく上で、自分から自己開示していくという感じですか。

越川:5%社員は圧倒的に巻込力が高いのです。AIが分析して分かったのですが、彼らは「自己開示と返報性の原理」を使っています。これは好意の返報性とも言いますが、この2つが人を巻き込むために効果的だということが分かりました。

倉重:Googleの社内調査で自分ががんであることを告白したマネジャーのチームが生産性が高かったという話がありました。

越川:返報性の原理は、民族や国家によって影響を与えられることが多いのです。調べると日本、韓国、フランスは好意の返報性が利きやすいことも別の調査で分かっています。

倉重:人種によるのですか。

越川:確かにそう言われると、僕も何度か行ったことがありますが、その3つの国は百貨店、デパート、スーパーでよく試食をしています。

倉重:「もらったから買わなければ」ということですね。

越川:ソーセージを1切れ食べたら、高級ソーセージを1袋買ってしまうということです。庶民が行くようなスーパーで試食をするのは、確かにこの3つの国が多いのです。

倉重:ヨーロッパでもフランスはそうなのですね。

越川:フランスは有名なスーパーマーケットがありますが、確かにワインやチーズなどの試食が多いです。

多分この辺が人を巻き込む上では重要だと思っています。「この人に助けてもらったから今度は助けてあげる」とか、「あの人が腹を割って話してくれたから自分も腹を割って話す」ということが本能的に感覚として分かっている5%社員は、まず自ら自分の腹を割る行為、弱みを見せる行為をしています。

(つづく)

対談協力:越川 慎司(こしかわ しんじ)

株式会社クロスリバー 代表取締役CEO/アグリゲーター

国内外通信会社に勤務、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフトに入社。日本マイクロソフト 業務執行役員としてPowerPointやExcelなどOfficeビジネスの責任者等を務めた後、2017年に株式会社クロスリバーを設立。

クロスリバーでは、選択式週休3日・完全リモートワーク・複業(専業禁止)を導入し、新たな働き方を実践しながら800社以上に「稼ぎ方改革(More with Less=より短時間で、より大きな成果を)」の実現を支援。

メディア出演、講演多数。講演の受講者満足度は平均94%、受講後に自発的に行動を起こす受講者は70%以上。

著書16冊『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣『AI分析でわかったトップリーダーの習慣』『ずるい資料作成術』『超会議術』『巻込力』など。その多くが重版となり海外でもベストセラーに Amazon等で発売中

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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