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錦織圭に続き大坂なおみが証明! 日本人アスリートで最も稼げる競技はテニス?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
女子アスリートの史上最高年俸額を記録した大坂なおみ選手(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

【大坂なおみが女子アスリートの史上最高額年俸を記録】

 米有力経済誌の『Forbes』が現地時間の5月22日、過去12ヶ月の女子アスリートの年俸額で、大坂なおみ選手が史上初めて世界一に輝いたと発表した。

 アスリートの年俸ランキングは同誌の名物企画の1つで、来週発表予定のトップ100ランキングを前に、女子アスリート部門で大坂選手が世界一になったことを明らかにしたものだ。

 同誌の調査によると、過去12ヶ月の大坂選手の総収入額は3740万ドル(約40億4000万円)に上り、同じく女子テニスのセリーナ・ウィリアムス選手を140万ドル(約1億5000万円)上回り世界のトップに立ったという。

 この額は、2015年にマリア・シャラポワ選手が記録していた2970万ドル(約32億1000万円)を上回り、同誌が調査を始めてから女子アスリートの史上最高額となった。

 この結果大坂選手は、男子アスリートも含めたトップ100ランキングでも全体の29位に入ることになったという。

【15企業とエンドースメント契約】

 今回の調査は過去12ヶ月の総収入額を比較したものであり、2つのグラウンドスラム優勝(2018年の全米オープン、2019年の全豪オープン)で得た賞金は一切含まれていない。

 ちなみに昨シーズンWTAでの大坂選手のWTAの賞金総額は678万8282ドル(約7億3000万円)だった。ただここには全豪オープンの優勝賞金が含まれているので、今回の調査で計上されたツアー賞金額がこれを下回るのは確実だ。

 つまり大坂選手は、3100万ドル(約33億5000万円)以上の収入をツアー賞金以外で得ていることを意味している。

 それこそがエンドースメント契約(いわゆるスポンサー契約)によるものだ。『Forbes』の記事によれば、テニスウェアにつけるワッペン契約を結ぶ日清食品、全日空、マスターカードに加え、日産自動車、資生堂、ヨネックスなど、計15企業と契約を結んでいるという。

【錦織圭も年俸額で長年日本人1位に】

 これは大坂選手に限った例ではない。長年日本テニス界を牽引してきた錦織圭選手にも同様のことがいえる。実は錦織選手がここ数年間、常に日本人アスリートでダントツの年俸を獲得してきたのをご存じだろうか。

 前述した通り『Forbes』誌は名物企画として、毎年世界中のアスリートの年俸ランキングを発表しているが、この4年間(同誌サイトで2015年以前のランキングを確認できず)錦織選手は常にトップ50入りしている。

 日本人アスリートにも田中将大投手やダルビッシュ有投手など高額年俸を得ている選手がいるが、彼らでさえトップ50入りすることすらできない。にもかかわらず唯一錦織選手だけ、世界のトップアスリートと肩を並べる収入を得続けているのだ。

 その収入源こそ、大坂選手と同様にエンドースメント契約に他ならない。錦織選手も、日清食品、ユニクロ、日本航空、ジャックスカード、リクシルなど多数の企業と契約を結んでいる。

 ちなみに『Forbes』の2019年版ランキングでは、錦織選手は総額3730万ドル(約40億3000万円)で35位に入っているが、そのうちエンドースメント契約で得ている収入は3300万ドル(約35億7000万円)と上るとみられている。

【日本トップ企業にとって理想的な広告塔】

 改めて錦織選手や大坂選手とエンドースメント契約を結ぶ企業の顔触れを見ると、日本のトップ企業がズラリと名を連ねている。それだけ2人が投資に見合うだけ存在だということなのだろう。

 テニス界で世界のトップ選手の仲間入りを果たした2人は、日本のみならず世界中でメディア露出度が高く、日本のトップ企業にとって最高の広告塔になり得る。彼らが世界で活躍し続ける限り、これらも企業は喜んで投資し続けることになるだろう。

 もちろんすべての日本人テニス選手が錦織選手や大坂選手のような存在になれるわけではない。だが彼らのように世界で戦えるような選手になれれば、日本のトップ企業たちが見逃すことはしないだろう。

 前述の2019年版ランキングでトップ50入りしているテニス選手は、錦織選手以外ではロジャー・フェデラー選手(5位)、ノバク・ジョコビッチ選手(17位)、ラファエル・ナダル選手(37位)しかいない。日本のトップ企業が支援しているからこそ、錦織選手は収入面で、すでにテニス界の“ビッグ3”と肩を並べる存在になっているのだ。

 果たして錦織選手、大坂選手に続く日本人テニス選手が登場する日は訪れるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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