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田中将大を失っても89年ぶりの快挙を達成したヤンキース先発投手陣の明るい未来

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ホワイトソックス戦で今シーズン6勝目を挙げたゲリット・コール投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【先発4投手が7回以上無失点リレーを達成】

 ヤンキースのゲリット・コール投手が現地時間5月22日のホワイトソックス戦に先発し、7回4安打無失点7奪三振の好投で、ア・リーグ1位に並ぶ今シーズン6勝目を挙げた。

 この結果この日のコール投手を加え、同19日のレンジャーズ戦でノーヒットノーランを演じたコーリー・クルバー投手、同20日のレンジャーズ戦で7回6安打無失点を記録したドミンゴ・ヘルマン投手、同21日のホワイトソックス戦で7回4安打無失点11奪三振だったジョーダン・モンゴメリー投手と、先発4投手が4試合連続で、7回以上無失点登板を達成している。

 MLB公式サイトによれば、ヤンキースでこの先発投手によるリレー記録が達成されたのは、1932年以来の快挙だという。また4試合スパンで失点をわずかに1点に抑えたのも、1932年と2002年に記録されて以来チーム史上3度目のことだという。

 さらにコール投手個人としても、開幕10試合で92奪三振を記録し、ヤンキースのチーム記録を塗り替えることに成功している。

【開幕直後は決して好調でなかった】

 シーズン開幕前のヤンキース先発投手陣は、決して盤石といえる布陣ではなかった。昨オフはチームの逼迫した財政事情から、FAになった田中将大投手との再契約を断念し、彼の予算でクルバー投手とジェームソン・タイヨン投手の2人を獲得する道を選択した。

 しかしこの2投手とも、故障の影響もありここ数年は不振続きだった。にもかかわらず、ヤンキースで十分な実績を残した田中投手と袂を分かつ判断をしたブライアン・キャッシュマンGMの補強策に、メディアから疑問視する声も挙がっていた。

 実際にシーズン開幕当初の先発投手陣はコール投手の孤軍奮闘状態で、他の4投手はなかなか5回まで投げ切れない状態が続いていた。

 それを物語るように、4月終了時点での先発5投手の防御率を見ると、コール投手が1.43という素晴らしい成績を残す一方で、クルバー投手は4.15、モンゴメリー投手4.39、ヘルマン投手4.05、タイヨン投手6.23──という状況だった。

【クルバー投手とヘルマン投手が復調傾向に】

 そんな先発投手陣が徐々に変化していった。そのきっかけになったのがクルバー投手とヘルマン投手の復調だ。

 まず5月に入ってからのクルバー投手は、前述のノーヒットノーランを含め登板した4試合すべてで5回以上を投げ切っている。月間成績も3勝0敗、防御率1.88と、圧倒的な安定感を誇っている。

 クルバー投手は元々サイヤング賞を2度受賞するなど、その実績は十分だ。彼が完全復活したとなれば、コール投手と先発2本柱を形成できる実力を有している。

 またヘルマン投手も、5月の月間成績は2勝0敗、防御率2.22と、確実に安定感を増し始めている。

 彼は2019年にチーム最多の18勝を挙げる実績を持ちながら、DVによりMLBから出場停止処分を受けたため、今シーズンは2年ぶりの実戦だ。今後さらに実戦感覚が戻ってくれば、まだまだ好投を期待できるところだ。

【シーズン後半にはセベリーノ投手の復帰も】

 さらにヤンキースには、昨年2月にトミージョン手術を受けたルイス・セベリーノ投手がシーズン後半に復帰してくる可能性があるのだ。

 彼もまた2017年からの2年間でヤンキース先発投手陣の中心的な役割を果たしており、彼も完全復活するようなことになれば、MLB屈指の先発4本柱が揃うことになる。

 田中投手を失ったヤンキース先発投手陣だが、その未来は一気に光り輝き始めている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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