ドイツが核兵器禁止条約にオブザーバー参加しながら核兵器シェアリングを維持する矛盾
ドイツのSPD(社会民主党)を中心とするショルツ新政権は、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を表明しました。その一方で同時にアメリカとの核兵器シェアリングは維持すると表明しています。
核兵器を自ら使う用意があるが、核兵器禁止を訴えるという、ドイツの態度は矛盾しています。相反する政策を同時に掲げたことになります。ドイツは昨年のメルケル政権時にアメリカから「核攻撃機」であるF/A-18Eスーパーホーネットを購入する決定をしていますが、これを追認する方針になります。
ドイツがアメリカ製「核攻撃機」の購入を決断(2020/4/23)
SPDはメルケル政権時も連立与党の一画に居ましたが、当時のヴァルターボルヤンス党首はアメリカとの核兵器シェアリングから抜けるべきと表明していました。アメリカ製「核攻撃機」の購入に反対したのです。
しかしSPD内部は一枚岩ではなく、外交や安全保障を専門とする身内の議員からは核兵器シェアリング維持を訴える声が強く、ショルツ政権発足の直前にヴァルターボルヤンス氏が党首を退いて、核兵器シェアリングを止める考え方は新政権に受け継がれませんでした。
こうしてドイツはSPD主導の新政権が発足したにも関わらず、核兵器シェアリングを維持したまま核兵器禁止条約にオブザーバー参加するという、矛盾に満ちた中途半端な政策を決定しました。
これはSPDが核軍縮についての考え方を後退させたことを意味します。昨年のSPDの主張通りならば、アメリカとドイツの核兵器シェアリングは無くなっていた筈だからです。
2022年3月2日追記:ドイツが新しい「核攻撃機」をF-35ステルス戦闘機に変更 ※核攻撃能力を強化する決断