国際系学部2015年入試の結果採点~ピカピカ・ボロボロの落差は?
国際系学部の事前予想は、こうだった
大学にとって、結果が順当であれば明らかにしたいもの、順当でなければ明らかにしたくないもの。
それが入試結果です。
とは言え、義務化されている以上、情報公開をしなければなりません。7月下旬に2015年入試の結果がようやく明らかになりました。
拙著『時間と学費をムダにしない大学選び2016』では、国際の章のコラムで、新設の国際系学部について、以下のように予想しました。
●安泰
山口大学国際総合科学部、青山学院大学地球社会共生学部、名古屋外国語大学外国語学部世界教養学科、龍谷大学国際学部
寸評…山口大は国立大などで黙っていても受験生が来る。青学も同じ。名古屋外国語大も外国語大の老舗で英語嫌いはまず来ない。龍谷大は前身の国際文化大も堅調だったのをさらに衣替え。
●微妙
順天堂大学国際教養学部、神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部、安田女子大学現代ビジネス学部国際観光ビジネス学科
寸評…神戸学院大は産近甲龍クラスの下の摂神追桃クラスの一角。桃山学院大国際教養学部、追手門学院大国際教養学部はどちらも苦戦(定員割れではない)。ただ、神戸学院大自体が伸びているのでどうにかなる可能性も。安田女子大は地元女子大の伝統校だが現代ビジネス学部は苦戦。順天堂大は医療系大学の名門でこうした大学が国際系学部を新設するケースは初。お茶の水キャンパスという立地の良さは受験生を集める可能性大。ただ、医療系大の文系学部新設だと杏林大が総合政策学部(1984年)・外国語学部(1988年)を設立し、2000年代はずっと苦戦している先例もあり。
●苦戦
千葉商科大学国際教養学部、関東学院大学国際文化学部、名古屋学院大学国際文化学部、大阪国際大学国際教養学部
寸評…どこも前身がぱっとしない。あるいは大学全体が受験生集めで空回りしている。よほど補習教育がしっかりしていないと、定員割れになる可能性が高い。
2015年入試結果から予想を検証
さて、結果は、こうなりました。
※データは左から入学定員、一般入試の受験者数、同合格者数、同競争率、入学者数、予想結果(◎が当たり、△が中立評価、×が外れ)
※データ出典は一般入試の受験者数、合格者数、競争率が旺文社『蛍雪時代8月臨時増刊 全国大学内容案内号』。入学定員、入学者数は各大学サイトの情報公開ページ、または受験ページ
●安泰予想
・山口大学国際総合科学部…100/135/115/1.2/104/×
・青山学院大学地球社会共生学部…190/2523/355/7.1/225/◎
・名古屋外国語大学外国語学部世界教養学科…100/2819/461/6.1/‐(大学サイトからは8月9日現在不明)/◎
・龍谷大学国際学部…450/4164/1111/3.7/542/◎
●微妙予想
順天堂大学国際教養学部…120/291/144/2.0/124/×
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部…150/424/284/1.5/124/×
安田女子大学現代ビジネス学部国際観光ビジネス学科…60/269/121/2.2/77/◎
●苦戦予想
千葉商科大学国際教養学部…75/201/117/1.7/58/◎
関東学院大学国際文化学部…260/722/504/1.4/295/△
名古屋学院大学国際文化学部…150/453/339/1.3/136/◎
大阪国際大学国際教養学部…120/377/308/1.2/154/△
予想が大外れの山口大、順天堂大、神戸学院大
結果は、◎が6校、△が2校、×が3校。
自己採点は70点で、一応及第点と思うのですが、いかがでしょうか?
まず、大外れだったのが、当欄でもさんざん出している山口大。
国立大だし、外れはないだろうと思いきや、まさかまさかの2倍割れ&定員割れ一歩手前。
長崎大多文化社会学部や今年新設の福井大国際地域学部など、それに今後も文系学部の改組が相次ぎます。
単純に国立大だから信頼できる、というものでないことがよく分かりました。
山口大国際総合科学部は哲学者の小川仁志を准教授に起用するなど、面白そうなんですけどね…。
微妙予想だった順天堂大と神戸学院大もともに定員割れで外れ。
順天堂大は、同じ医療系大学の杏林大がかつて外国語学部と総合政策学部を新設し、その後長く低迷しているので、その二の舞かなあ、と。ただ、お茶の水キャンパスというアクセスの良さから、そこそこ集まるだろうと思い、微妙予想に。
しかし、医療系大学の老舗でお茶の水という立地の良さがあっても、やはりダメ。
都心にあればあったで、他大学と競合するわけで、そこが読み切れなかったですね。
神戸学院大は英語コースが定員90人に対して入学者101人とまずまず集まりました。が、中国語コース定員30人・入学者16人、日本語コース定員30人・入学者7人、この2コースが足を引っ張り定員割れ。
ここ最近の神戸学院大の躍進を考えれば、もうちょっと集まりそうだったのですが、グローバル・コミュニケーション学部の名前で中国語コースと日本語コースはイメージに合わなかった、ということでしょう。
苦戦予想で倍率2倍割れでも定員確保の関東学院大、大阪国際大
中立評価の2校は苦戦予想だった、関東学院大と大阪国際大。一般入試の倍率2倍割れは予想通りでした。
が、意外と言ったら申し訳ないのですが、この低倍率で定員割れを起こしていません。
推薦・AO入試でしっかり確保した、というところでしょうか。ただ、今後、どの程度、教育を展開できるか、注目です。
安全安心高利回りのブランド校と外国語大
◎は、安泰予想の3校と苦戦予想の2校。
安泰予想の青山学院大、名古屋外国語大、龍谷大は、予想通り。
青学・龍大ブランドは衰えていませんし、名古屋外国語大も外国語教育の老舗ですから、世界教養学科と出して集まらないわけがありません。
苦戦予想◎の2校は他にも定員割れ学部が
苦戦予想の2校も、そりゃそうだろうな、という結果に。
名古屋学院大は同じ新設学部の現代社会学部も仲良く定員割れ。
千葉商科大は、入学者58人。合格者は推薦16人、AO31人、一般54人、センター利用63人。推薦・AO合格の47人が取りこぼしがない場合、一般入試・センター入試からの入学者はわずか11人です。
元ロッテの里崎智也が特命講師なので、個人的には応援したいところですが、これだとちょっと厳しいかなあ。
そもそも千葉商科大は、2014年開設の人間社会学部も定員200人に対して入学者は2014年104人、2015年109人と悲惨な状況です。
国際教養学部もこのまま浮上しないと、人間社会学部との統廃合の可能性が出てしまいます。
英語嫌いはそもそも国際系学部に行かない
今回の入試結果を見ていくと、いくつか予想が外れたところはありますが、根本は外れていないことを確信しました。
それは、
「英語ができない高校生(基本的に成績が悪い)は、国際系学部を選ばない」
というものです。
この受験生心理を考えずに、単にグローバルだの、教養だの、と展開しても無理。
ところが、この心理を無視してしまう大学の、なんと多いことか。
2016年入試でも、国際系学部新設ないし学科増設・改組の大学があります。
勝ち組の大学はますます勝ち組に、負け組の大学はますます負けw組になるだけ、それが国際系学部と思うのですが…。
受験生や高校教員の方には、この進学者動向を参考にしていただければ幸いです。(石渡嶺司)