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ホームで開幕4連敗を喫した京都で早くもエースとして期待を集める22歳寺嶋良が抱く揺るぎない覚悟

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
22歳ながら京都ハンナリーズのエース的役割を担い始めている寺嶋良選手(筆者撮影)

【ホームで開幕4連敗を喫した京都ハンナリーズ】

 Bリーグはシーズン第2節を終了し、すべてのチームが4試合を消化した。ここまで宇都宮ブレックス、シーホース三河、秋田ノーザンハピネッツの3チームが4連勝を続ける一方で、京都ハンナリーズ、三遠ネオフェニックス、信州ブレイブウォリアーズの3チームが4連敗を喫している。

 中でも京都と三遠は、有利と言われるホームで4試合を戦った上での未勝利なだけに、厳しいスタートを強いられることになった。

 ただ三遠の対戦相手は千葉ジェッツと三河の強豪チームだったのに対し、京都は富山グラウジーズ、秋田と、昨シーズンまで互角以上の戦いをしてきたチームだけに、今シーズンのチームに不安を感じるブースターもいるのではないだろうか。

【ディフェンスが機能せず大量失点を許す展開に】

 4連敗した3チームの中で、最も得点しているチームが京都(計303点)なのだが、その一方で最も失点しているのも同じく京都(計363点)だ。

 ここまで4試合中3試合で90点以上の失点を許しており、明らかにディフェンスが機能していない。

 今シーズンから指揮をとる小川伸也HCも、チームの課題として真っ先にディフェンスを上げている。

 「結果が出ていないので課題は1つだけでは無いんですけど、やはりディフェンスの面で不安定さが残っています。まず土台となるディフェンスを如何に構築できるかというのが、すごく重要な課題だと思います」

 ただ11日の秋田第2戦では、ディフェンスに定評のある秋田と互角に渡り合うディフェンスを披露する場面もあり、小川HCも「今後につながるディフェンスができました」と、4連敗の中にも好材料を見出している。

【まだまだ未完成のチーム状態】

 今シーズンの京都は“新生”という言葉が相応しいチームで、まさにゼロからのスタートを切っていた。というより、まだスタートすら切れていない状況と言った方が正確なのかもしれない。

 過去9シーズンにわたり京都を指揮してきた浜口炎HCがチームを去り、チーム編成も大きく変わり若手中心にシフトした。

 また浜口HCを支えてきたデイヴィッド・サイモン選手、内海慎吾選手、永吉佑也選手、松井啓十郎選手が残留しているものの、内海選手は開幕からインジュアリーリストに入り、サイモン選手も開幕戦に出場したのみで欠場を余儀なくされている。

 さらに外国籍選手に関しては、新加入のレヴォンテ・ライス選手、ジャスティン・ハーパー選手が新型コロナウイルスの影響でチーム合流が遅れ、現在は外国籍選手追加契約ルールで加入したジョーダン・フェイソン選手しか戦力になっていない状況で、まだ本来の戦力が揃っていないのだ。

 現在の小川HCは現状について「毎試合、毎練習ごとに成長することにフォーカスしていて、小さな階段を一歩ずつ登っている段階」と説明している。

【エースとして期待される22歳の寺嶋選手】

 そんな状況下にあって今後のチームの行く末を左右する存在と言えるのが、寺嶋良選手だろう。

 昨シーズン途中に東海大学4年生で特別指定選手として京都に加わると、すぐに先発PGに大抜擢。そこからチームは連勝を重ね、チームの流れを一気に変えてしまう存在感を発揮していた。

 昨シーズンから得点能力の高いPGとの評価を受けていたが、今シーズンは試合のコントロールのみならず、日本人選手として松井選手に並ぶスコアラーとして大きな期待を寄せられている。

 この4試合は松井選手が相手チームから徹底マークされていることもあり、寺嶋選手が日本人選手最高の1試合平均16.8点を記録しており、すでにオフェンス面でチームのエースとして機能している。

 まだ22歳の寺嶋選手に、チームのエース的役割を担わせるのは酷なことかもしれないが、やはり彼の台頭無くして京都の成功は考えにくい。

【「僕が攻めることがチームに利益を与える」】

 まだチーム本来に戦力が揃っていないこともあるが、現在の京都はオフェンス面でもセットプレーをなかなか展開できず、単調な攻撃しかできていない状態が続いている。

 そうした現状を打破するためにも、寺嶋選手の攻めの姿勢が重要になってくる。それは本人も十分に認識し、その覚悟もできている。

 「やっぱり攻め手がなくなった時は、僕が点をとらなきゃという気持ちがあります。今回(11日の秋田第2戦)は前半で2点しかとれなくて、そこの部分でチームとして点をとって流れを掴まなきゃというのがありました。

 僕が(攻めて)いく分、KJ(松井選手)とか周りの選手についているディフェンスが(自分に)寄ってくるので、パスを飛ばしKJが決めてくれるという…。僕が攻めることがチームに利益を与えると思うので、そこはチームとして(自分が)求められていることであり、続けていきたいです。

 また副キャプテンとしてチームを引っ張っていくことを(キャプテンの)永吉さんとやっていくんですけど、どれだけ期待されているかは正直あまり分かっていないんですけど、まあかなりされているのは思うので、そこには応えられるようにやっていけたらなと思います」

 すでに相手チームからも警戒される存在になり、マークも厳しくなっているのは寺嶋選手も実感している。そうした日々試合で経験を積みながら、真のエースになるため更なる成長を続けようとしている。

 だが今シーズンの目標を聞かれ、「個人タイトルなんて要らないので、とにかく勝ちたいです」と断言するほど、今は心底チームの勝利に飢えている。

 若きエースは次節の大阪エヴェッサ戦で、今シーズン初勝利を狙っている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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