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“医者か芸人か”ではなく“医者も芸人も”。現役医師芸人・しゅんしゅんクリニックPを衝き動かす信念

中西正男芸能記者
現役医師芸人のしゅんしゅんクリニックP

 現役医師として診察にあたりつつ芸人としてフジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」などでも注目を集める“医者芸人”のしゅんしゅんクリニックPさん(37)。新型コロナウイルス禍で医療現場は苛烈な状況となっていますが、その中で掴んだ自らのスタンスへの信念とは。

昨年は学園祭営業で1位

 僕が日々診察をしているクリニックは直接的に新型コロナウイルスと関係が深い診療内容ではないんです。ただ、新型コロナウイルスへの不安から体調不良になる方も増えていて、僕が出勤する日数も増えています。今だと、週4日ほどはクリニックに出ています。

 出勤日が増えているもう一つの理由として、これも新型コロナウイルスの影響で、芸人としての仕事が激減したというのもあります。

 正直な話、去年は医者と芸人の仕事割合は5:5くらいでした。また、意外に思われるかもしれませんけど、去年、営業として学園祭に行かせていただいた本数は、吉本興業でいうと、僕が1位だったんです。2位が「EXIT」、3位が「アインシュタイン」という超人気コンビをおさえて。

 …ま、これもからくりがあって、芸風的に医療系の大学から呼んでいただく数が非常に多くて、そこで数を稼いだという部分もあったんですけど。去年の10月でいうと、芸人8:医者2くらいの仕事割合でした。

 それと、これは僕の中の気持ちの部分なんですけど“医者芸人”と言っている以上、もし自分が関わったイベントがクラスターになったり、自分が感染したりすると、普通の芸人以上にインパクトを持って伝わってしまう。その思いもあって、かなり慎重に仕事にあたっているのもあります。なので、今は状況的に“医者芸人”ではなく、普通に“医者”というのが本当のところです(笑)。

「医者なの?芸人なの?」

 もともと“医者芸人”といったポジションを目指そうという思いは全くなくて、シンプルに医者になるべく医学部に進学したんです。ただ、在学中に「M-1グランプリ」や「爆笑オンエアバトル」にのめり込みまして。心底「芸人ってかっこいい」と思ったんです。

 なので、医師免許もとりつつ、お笑いコンビを組んで医療とは全く関係ないネタで活動をしていました。ただ、そこからコンビを解散してピンになった。そこで改めて自分自身を見つめ直した時に、こうやって医者をやりながら芸人をしているところに意味があるんじゃないかと思うようになり、じゃ“医者芸人”を打ち出す形でやっていこうとなったんです。

 となると、よく聞かれるのが「医者なの?芸人なの?どっちなの?」ということなんですけど、実はその質問って今の感覚じゃないかなと僕は思っています。どちらかに決めることはないのかなと。どっちも頑張りたいというのが素直な気持ちです。

 というのも、新型コロナウイルスの中で、医療に対しても、お笑いに対しても、より思いが強くなりました。もちろん、医療に携わっていますので、医療の意義は日々感じてきましたし、芸人をやる中で皆さんの前でネタをやって笑っていただく喜びも痛感してきました。でも、今はその両方へのそれぞれの形で多くなったといいますか。

 先ほどお話をしたように、僕が出ているクリニックは直接的に新型コロナウイルスコロナの患者さんがお見えになることはほぼないんですけど、本当に多くの方が新型コロナウイルスへの漠然とした不安を抱えてらっしゃる。

 それを取り除けるのはやっぱり医療の力でもあるし、その仕事に関わっている意義を改めて感じましたし、もっと、もっと知識を伸ばしたり、技術を学んだりして、なんとか医者としてできることを増やしたいとも思いました。

 一方、芸人の仕事がほとんどできなくなって、逆に「やっぱり自分は心底芸人の仕事が好きだ」と思い知らされもしました。そして、心がふさぎ込みやすい今の世の中で、なんとか芸人としてたくさんの人に笑ってもらいたい。言葉にすると、何とも“寒い”感じになっちゃうかもしれませんけど、本当にそう思うんです。

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今、本が出た意味

 それと、もう一つ、9月8日に「しゅんPの病院あるある」という本を出させてもらいまして。もともと、本を出すなんて考えてもいなかったですし、本を出すのは有名で認知度が高い人がやることで、自分には縁のないものだと思っていました。

 ただ、フジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」に出演していた僕を見てくださった出版社の方から1年ほど前にお話をいただきまして。「ネタでやってらっしゃるような“医療あるある”をまとめて本にしませんか」と。

 そこから、いろいろな段階を経て、今の発売になったんですけど、要はお話をいただいた頃は新型コロナウイルスという話は全くなかったんです。たまたま、このタイミングでの発売になったんです。

 内容は、ネタでやっているような笑える医療あるあるがメインなんですけど、笑いながらも現場の空気というか、実態みたいなものを見てもらえる。その結果、医療現場への意識を持ってもらえたら少しは意義があるのかなと思いますし、今、本を出せたということに、何とも言えない巡り合わせを感じてもいます。まず、僕が芸人をしてなかったら、絶対に本自体が出せてもなかったでしょうし。

 なので、僕にとっては“医者か芸人か”ではなく“医者も芸人も”。そして、その思いが新型コロナウイルス禍でさらに強くなりました。

 ただ、ま、いやらしいことを言うと、仕事量的に医者と芸人で5:5だったとしても、収入比率的に言うと、医者の収入の方が多くはなるんです。なので、今の状況だと、芸人として売れれば売れるほど、どんどん給料が安くなるというパラドックス的なことに…(笑)。ただ、それでも、医者も芸人も頑張る。それが僕のやりたいことなんです。

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(撮影・中西正男)

■しゅんしゅんクリニックP

1983年7月2日生まれ。群馬県出身。群馬大学医学部卒業後、医師免許を取得。研修医期間を終えて、NSC東京校に16期生として入学する。芸人と医師を両立しながら、2018年にはフジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」の“モニター横芸人”に選ばれる。ダンスに乗せて医師のあるあるネタを言う「ヘイ!ヘイ!ドクター!」で注目を集める。アイドルユニット「吉本坂46」のメンバーとしても活動。今年3月、同じく「吉本坂46」のメンバー・三秋里歩との婚約を発表した。医療従事者のあるあるネタを集めた著書「しゅんPの病院あるある」を9月8日に上梓した。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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