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台風7号がゆっくり北上してお盆休みを直撃 進路の右側も左側も危険、可航半円は安全半円ではない

饒村曜気象予報士
2023年 お盆休み日程(提供:イメージマート)

お盆休みと台風7号

 強い台風7号は、小笠原諸島近海北部にあって、ゆっくりと西へ進んでいます。

 台風が発達する目安となる海面水温が27度と言われていますが、台風7号は海面水温が28度~29度の海域を進む予報となっています。

 このため、台風7号は勢力を維持しながら日本の南をゆっくりと北上し、8月15日(火)頃は、東日本や西日本にかなり接近し、上陸するおそれがあります(図1)。

図1 台風7号の進路予報と海面水温(8月13日0時)
図1 台風7号の進路予報と海面水温(8月13日0時)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください

 伊豆諸島ではうねりを伴った高波に厳重に警戒し、小笠原諸島では土砂災害、うねりを伴った高波に警戒してください。

 関東、東海、近畿では8月13日(日)から、四国では8月14日(月)から高波に警戒が必要です。

 西日本から東日本では、お盆休み期間に、台風7号が直撃する可能性がありますので、厳重に警戒する必要があります。

 8月13日0時現在の台風の中心気圧は955ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は40メートル、最大瞬間風速は60メートル、風速25メートル以上の暴風域は全方向とも95キロとなっています。

 進行方向の右側は、左側よりも風が強くて暴風域が広いということにはなっていません。

帆船時代にできた言葉

 台風の進行方向右側は、進行方向左側に比べて風が強いとよく言われます。

 図2のように、台風全体を移動させる風Aと、台風自身の風Bが強めあうのが右側で「危険半円」、弱めあうのが左側で「可航半円」と呼ばれる所以です。

図2 台風の進路と風の模式図
図2 台風の進路と風の模式図

 実際の風はそのようになっていることが多いのですが、誤解もあります。

 まず、台風全体を移動させる風が弱い場合(速度が遅い台風)は、今回の台風7号のように、右側と左側では風の差がでません。

 危険半円、可航半円という言葉は帆船時代にできたものです。

 帆船は動力が風ですから、台風の中心から逃れようとするときに、向かい風となる右側が「危険」、追い風となる左側が「可航」です(図3)。

図3 台風の中心から船舶が逃げようとするときの風向
図3 台風の中心から船舶が逃げようとするときの風向

 つまり、中心から逃げようとするときに向かい風のせいで逃げられない場所が危険半円です。

 可航半円は、危険であってもとにかく可航半円に入れば、追い風を利用して脱出するという意昧です。

 決して「航海できるほど安全」という意味で「可航」という言葉を使っているのではありません。

 進行方向の左側でも、台風の中心付近では強い風が吹き危険です。

 また、地形の影響で、日本列島を縦断する台風の中には、左側の方が右側より強い風が吹くものもあります。

ハリケーンから台風8号の発生

 台風は、熱帯で発生する低気圧(熱帯低気圧)のうち、東経180度(日付け変更線)以西、赤道以北の北西太平洋(インド洋を含む)において、域内の最大風速が17.2メートル以上になったものをいいます。

 したがって、日付け変更線を挟んで、台風になったり、台風でなくなったりしています。

 8月8日のハワイ諸島・マウイ島は、南海上(北太平洋中部)を西進していたハリケーン「ドーラ(DORA)」による強風によって山火事が発生し、市街地に燃え広がるという大火が発生し、8月11日夜までに80人が死亡したと伝えられています。

 このハリケーン「ドーラ(DORA)」は、8月12日9時に日付け変更線を越えて、北西太平洋に入ってきました。

 台風の定義から、8月12日9時にミッドウェー諸島近海で台風8号が発生したことになるのですが、正確には、この時刻にハリケーンから台風8号に変わったということです。

 北太平洋中部から入ってきたことによる台風発生は、平均すると、2~3年に1個はあり、前回は、平成30年(2018年)の台風17号ですので、約5年ぶりと少し間隔があきました。

 ただ、台風8号は、弱まって北上する見込みですので、日本への影響は、ほとんどないと考えられます(図4)。

図4 台風8号の進路予報(8月12日21時)
図4 台風8号の進路予報(8月12日21時)

台風7号の最接近

 現在、台風7号と台風8号がありますが、当然のことながら、警戒すべきは7号です。

 気象庁では、5日先まで、台風の暴風域に入る確率を発表していますが、これを見ると、台風が最も接近する時間帯がわかります。

 台風7号による暴風域に入る3時間ごとの確率を見ると、和歌山県の新宮・東牟婁地方(新宮市や紀伊半島南端の串本町など)では一番大きな値が41パーセントですが、この値になるのが、8月15日未明と明け方です(図5)。

図5 台風7号による暴風域に入る3時間ごとの確率
図5 台風7号による暴風域に入る3時間ごとの確率

 つまり、和歌山県の新宮・東牟婁地方では、8月15日の未明から早朝に台風が接近するということを示す予報であったのです。

 同様に、名古屋市などがある愛知県の尾張東部地方では、8月15日昼前が20パーセントと一番高い値ですので、この頃に最接近と考えられます。

 さらに、大阪府の大阪市では、8月15日朝には16パーセントと一番高くなっていますので、この頃に最接近と考えられます。

 暴風域に入る3時間ごとの確率が、その時に何パーセントだったということも重要ですが、新しい情報のたびに増えているか、減っているかをチェックするのも重要です。

 そして、暴風域に入る確率が増えてきた場合は、特に警戒が必要となります。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:饒村曜(平成27年(2015年))、気象予報士完全合格教本、新星出版社。

図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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