人気ペイントソフト「クリスタ」でクラウド障害。データ同期は危険?
人気ペイントソフト「CLIP STUDIO PAINT」(クリスタ)でクラウド障害が発生し、同期していたパソコン上のデータが一時的に消失したとの報告が相次ぎました。クラウドとのデータ同期機能は危険なのでしょうか。
クリスタには、開発元のセルシスが運営する「CLIP STUDIOクラウド」でファイルを同期する機能があります。この機能はデフォルトでは「OFF」になっており、そのまま使っていれば影響を受けなかったようです。しかし「ON」にしていたユーザーからは、12月2日の夜くらいからファイルが消失したとの報告が相次ぎました。
これに対して公式Twitterアカウントは、12月3日午前4時過ぎにクラウド機能のメンテナンスを朝9時から実施することを発表。同日10時過ぎにメンテナンスは終了し、障害の原因や影響を受けたユーザー向けの復旧方法を案内しています。
これによると、原因は12月2日12時〜12時半に実施したクラウド高速化を目的としたメンテナンスにあったとのこと。クラウド上のデータは「復旧可能」としており、「クラウドの履歴機能」を利用すれば自分で復元できるようです。それでも不具合が解決しない場合、サポートに問い合わせるよう案内しています。
ペイントソフトにクラウド同期機能がある背景として、クリスタはWindowsやMac、ChromeOS、iOS、Androidなど多様なデバイスに対応しており、クラウドを活用すれば複数のデバイスをまたがって作業を継続できるとしています。
クラウド上のファイルを手動で削除したとしても、ただちにローカルのファイルが消えるわけではないようですが、今回はクラウド側で何らかの不具合が起きたとみられます。本来は便利になるはずの機能が裏目に出たといえるでしょう。
クラウド同期は危険?
このようにクラウドとローカルのデータ同期にまつわる問題は、比較的ありがちなものです。そのため「クラウドは危険」という印象を持っている人がいるかもしれませんが、うまく使いこなせばクラウド同期はメリットのほうが多いと筆者は考えています。
重要な機能の1つが「履歴」です。履歴機能があれば、間違って編集したファイルがクラウドに同期されてしまったとしても、履歴をたどって古いバージョンに戻すことができます。CLIP STUDIOクラウドにも履歴機能はあり、イラストを何度も直したり、元に戻したりする作業を支援しているようです。
システム開発や運用の世界では、古くからソースコードや設定ファイルをバージョン管理する習慣が普及しています。筆者の場合、執筆中の原稿ファイルはDropboxで履歴を管理しており、クラウドに関するトラブルはたまにあるものの、それを上回るメリットを得られています。
ただし、クラウド同期だけではバックアップが万全とはいえません。クラウド同期の影響を受けないフォルダや、USBメモリーや外付けHDDのようにパソコン本体から取り外して保管できるメディアにコピーを取っておくことも重要です。