「ゆっくり茶番劇」事件は商標権放棄で一件落着しそうなわけだが
日本の商標制度における最大の炎上事件との声もある「ゆっくり茶番劇」の勝手登録事件ですが(関連過去記事)、権利者が所属するマネジメント組織による「働きかけ」により権利者による自発放棄ということで一件落着しそうです。
一般に、商標権を放棄すると、その権利は「空き状態」になってしまうので、別の第三者による再度の勝手出願を防ぐためには、商標権としてはキープして、権利者としてふさわしい人(東方ProjectのZUN氏なのか、ニコ動運営なのか、今回の権利者の所属事務所であるCoyu.Liveなのかといった議論はあるでしょうが)に無償譲渡するという考え方もあるでしょう。しかし、今回のケースでは、仮に、別の第三者が「ゆっくり茶番劇」を再度出願しても、特許庁が登録する可能性はきわめて低いと考えられます(おそらく、商標法3条1項6号(識別力がない商標)として拒絶するでしょう)ので、放棄でも特に問題はないのではないかと思います。
現在、特許庁に対するほとんどの手続は専用ソフトを使ってネットで行えますのでリアルタイムで完了しますが、いったん登録された権利に関する手続は紙ベースで行うしかないので(仮に弁理士が代理で行っても)時間がかかります。放棄したことを確実かつ迅速に示すためには、代理人に放棄届けの書類を特許庁に持参してもらって、控に受領印を受けたものをネットにアップすればよいと思います。
手続が終わるまでは(コロナの影響もあり)結構時間がかかります(1カ月以上は普通にかかります)ので気長に待つしかありません。さらに、手続が完了してもネット(特許情報プラットフォーム)の反映にはさらに時間がかかります(これを書いておかないとネットで調べて「まだ放棄されていない」と騒ぐ人が出てきそうなので注意喚起的に書いておきます)ので、特許庁から手続完了の書類が届いた段階でネットにアップしていただくと皆さん安心するのではと思います(老婆心)。
今回は、一種の自浄作用により何とか解決しそうではありますが、また似たような問題が発生する可能性は十分にあります。制度的に何とかならないか、消費者(ネット民)としてどう対応すべきかについて、次回の記事で考えてみたいと思います。
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