Yahoo!ニュース

大規模な爆発「太陽フレア」で何が起きる?スマホは使えるの?オーロラは日本のどこで見られる??

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
衛星「ひので」がとらえた太陽表面の様子(画像提供:国立天文台/JAXA/MSU)

今月8日頃から太陽表面での大規模な爆発「太陽フレア」がたびたび発生しているということで、ここ数日は関連するニュースを目にした人も多いと思います。
そもそも「太陽フレア」とは何で、私たちにはどういった影響があるのでしょうか。スマホの通信はいつも通り使えるのか、人体に影響はあるのか、そして日本でもオーロラが見えるのでしょうか??

「太陽フレア」って?

太陽はもともと莫大なエネルギーを持っている、というのは多くの人が知っていると思いますが、時々その太陽の表面から電磁波や高エネルギーの粒子、そして電気を帯びたガスなどが大量に放出されることがあります。
このような高いエネルギーを持つ物質や電磁波が爆発のように吹き出す現象を「太陽フレア」と呼んでいます。

「太陽フレア」自体はめずらしい現象ではありません。ただ、今月8日頃から通常よりも規模の大きい「太陽フレア」が何度も発生しているため、ニュースになっているのです。

スマホは使えるの?人体への影響は??

結論から言うと、スマホの通信に直接影響はありません。
というのも、太陽から届くプラズマ粒子が地上において直接影響を及ぼすのは、主に「短波」と呼ばれるタイプの通信で、たとえば今では数が少なくなった短波放送のラジオや、アマチュア無線、航空機・船舶の通信が中心だからです。

ただ、地上においては限れらた範囲の影響しかなくても、宇宙においてはより影響が大きくなります。
爆発の規模が大きい場合は、宇宙空間を飛んでいる人工衛星に障害が起きて、衛星を利用した通信やGPSの計測に問題が発生するおそれがあるため、結果的に地上で衛星通信や高精度のGPSを利用する際に影響が出ることがあります。

一方で、地上で暮らす人の体に影響が出ることはありません(宇宙空間では人体に影響が出るので、たとえば国際宇宙ステーションではあらかじめ対策が取られています)。

オーロラはどこで見られるの?

参考資料:過去にカナダで観測されたオーロラ
参考資料:過去にカナダで観測されたオーロラ

太陽から電気をおびたガス(プラズマと言います)が大量に放出されると、プラズマ粒子と地球の大気とがぶつかってエネルギーが放出される際に光る現象「オーロラ」が発生します。

通常、オーロラはアラスカなどの高緯度でしか見られませんが、今回のように大規模な太陽フレアが発生すると、より緯度の低い地域でも見られることがあります。

今回は11日までですでに、ドイツやスイス、アメリカなど各国でオーロラが観測されたと報道されていますが、日本でも11日から12日にかけて、北海道など各地で観測が相次いでいます。
北海道では天文台で観測されたほか、気象会社ウェザーニュースのホームページによると東北や北陸でもオーロラが見えたという報告があるようです(追記:その後、報道では北関東や近畿での観測例も報じられました)。

今回の太陽フレアの影響は今後数日は続くと見られるため、12日以降もチャンスはありますが、オーロラを見るには夜に晴れている必要があります。
そのため12日~13日にかけて全国的に雨が降る今回は少し条件が厳しそうですが、夜に晴れている場所で、かつ街の明かりや遮蔽物が少ない場所であればチャンスはあるかもしれません。

今回の爆発はどのくらい珍しい?

NICTが毎日発表している「宇宙天気予報」(後述)。NICTのHPより抜粋。
NICTが毎日発表している「宇宙天気予報」(後述)。NICTのHPより抜粋。

情報通信研究機構(NICT)によると、今月8日から10日夕方までですでに最大規模クラスの「太陽フレア」が6回起きていて、このくらい短い期間で6回も発生するのは2005年以来だそうです。

なお、NICTでは今回のような大規模な爆発の際だけでなく、日頃から毎日「宇宙天気予報」を発表していて、太陽フレアの見通しやそれによる影響の予測を公表しています。
太陽の活動は今後数年は比較的活発な状態が続くと見ている専門家もいるため、仕事で衛星通信や高精度GPSを使うなど太陽フレアの影響を受けやすい方は、日頃からチェックしておくとよさそうです。

気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

植松愛実の最近の記事