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異例のプロ野球2020年シーズン 大記録樹立の可能性も 行方を占う3つのキーワード

上原浩治元メジャーリーガー
プロ野球オープン戦 無観客試合の様子(写真:ロイター/アフロ)

プロ野球はセ・パ両リーグの6月19日同時開幕が決まった。新型コロナウイルス感染拡大で当初よりも約3か月遅れた上、当面は無観客での開催となる。試合数も当初の143試合から120試合と23試合も削減され、交流戦とオールスター戦も中止。過去にない異例のシーズンとなりそうだ。そんな混沌とした2020年シーズンの行方を占う上でのキーワードは、ズバリ「主力層の厚さ」「率」「無観客」の3つだ。

 ■「主力層の厚さ」が鍵を握る

 各球団は6月2日~14日まで練習試合を無観客で11~12試合ずつ行う。目前に迫る開幕に向けた調整の意味合いが強く、オープン戦のように若手を試す余裕はあまりないだろう。レギュラーを中心とした起用が予想される。そして、シーズンが始まってもある程度は固定したレギュラーで戦うことになるので、主力選手の層が厚いチームほど有利になるだろう。セ・リーグなら巨人を軸に、阪神、先発投手の層が厚いDeNAが優勝を争うとみている。

 選手個々で言えば、先発投手は難しい調整が強いられる。というのも、レギュラーの打者ならこの期間に30打席は立つことができ、生きたボールにも慣れていけるだろうし、中継ぎや抑えの投手も登板機会は確保でき、実戦感覚を取り戻せるはずだ。しかし、先発投手はローテーションの関係で、多くて3試合の登板に限定されてしまう。

 選手のタイプで言えば、スタートダッシュがうまい選手が有利になる。尻上がりに調子を上げていく選手は、残り試合数が少なくなってくれば焦りも出てくるかもしれない。

 ■「率」で大記録が生まれる

 各選手の成績では、「すごい記録」が生まれる可能性を秘めたシーズンになるとみる。

 記録は2種類ある。一つは投手の勝ち星やセーブ、打者の本塁打や打点、盗塁など積み重ねていくもの。そしてもう一つは防御率や打率のように「率」を残すものだ。

 試合数が少なければ、スタートダッシュに成功した選手が「高い率」を残すことが可能になる。例えば日本ハムの近藤健介外野手は2017年にけがで離脱するまで、50試合に出場して打率4割以上をキープしていた。選手にとっては「短期集中」で好記録を生み出してやろうというのはモチベーションにも繋がっているはず。若手にチャンスは少ないと指摘したが、うまくチャンスをつかんで勢いに乗った選手が120試合を戦い抜いて、いきなり大記録を作ってしまう可能性も十分にある。

 報道によれば、野球協約では各球団が主催する最低試合数を60と定めており、ビジター60試合と併せて120試合でシーズンは成立する。大記録が生まれれば、立派な数字として胸を張ればいいと思う。

 ■「無観客」試合に適応できるか

 プロとしていいか、悪いかは別にして、シーズンの行方に「無観客」が影響するとみている。

 なぜか。通常ならプロの選手にとって、観客の声援は実力を発揮する上で大きなモチベーションになる。しかし、中には、優れた選手であっても、満員の球場の雰囲気にのまれてしまい、過度に重圧を感じて練習時のようなパフォーマンスを発揮できない選手がいる。古くから「ブルペンエース」という言葉があることでもそれはわかる。

 無観客での公式戦は体験したことがないが、おそらく練習試合のような雰囲気になるだろう。当面の観客がいない期間に"ノープレッシャー"を追い風にできる選手がいれば、それも異例のシーズンならではの'アクシデント"だ。

監督やコーチは選手の性格もよくわかっている。「えっ」と思うような選手が起用されていたり、好成績をマークしていれば「無観客に強い選手」かもしれない。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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