【川越市】麹菌や酵母菌が、蔵全体に棲み着いている。江戸時代から受け継がれる醤油蔵に感動と感謝。
川越の蔵造りの街並みの中に『松本醤油商店』という老舗の醤油店があります。
約250年続く蔵元である松本醤油商店には、江戸時代天保から180年にわたって受け継がれているの天然醸造の醤油の仕込蔵が、今も現役で活躍しています。
その貴重な醤油蔵を、土日祝日に誰でも見学することが可能です。
江戸時代からある蔵とは、いったいどんな蔵なのか見学してきましたので、その様子を少しご紹介します。
仲町交差点を曲がり、NTT埼玉西支店の敷地隣の道を入ると松本醤油商店が見えてきます。
土日祝日の13時~15時までに、3回醤油蔵を見学できるチャンスがあります。
予約しなくても10分前に店舗前で見学のガイドしてくださる店主が声がけを始め、誰でも気軽に見学ができます。
時間になると、店舗の奥の蔵のある敷地へ案内してくれます。
醬油蔵見学の流れ
麹つくり
まず、案内されたのが醬油を作るのに必要な麹を作る麹室。
麹つくりに必要な材料は、大豆・小麦・塩この3つです。
埼玉県産の小麦と川越産の大豆を使用。
麹菌を入れ材料を混ぜ合わせ、約3日間かけて麹を作ります。
いよいよ、醬油の仕込蔵の中へ
醬油蔵に入る扉があり、一礼をしてから蔵の中へ。
蔵に一歩足を踏み入れると醤油の香りが漂ってきて、ひんやりとした神聖な空間が広がります。
仕込蔵は、江戸時代の天保元年に建造されたので『天保蔵』と呼ばれています。
この蔵は、川越市の都市景観重要建築物にも指定さています。
もう、蔵が建造されてから180年も経っているのに今も現役なんて感動です。
もろみをかき混ぜる「櫂入れ」
この醤油蔵には、長い年月をかけて酵母菌や乳酸菌などの微生物が住み着いています。
麹室でつくった麹を、じっくりと自然の力のみで発酵・熟成をする天然醸造。
杉桶が全部で40個ほどあり、この杉桶の中で、発酵されたものが「醤油もろみ」。
菌の作用を促すために櫂棒(かいぼう)で、杉桶の中をかき混ぜることを「櫂入れ」(かいいれ)といいます。見本の桶で、中の醤油もろみの様子を見せてくれます。
もろみの絞り
熟成を終えたもろみを少しずつ布に広げ、それを何層にも重ね、3日間かけてじっくり搾り出します。絞ってできたものが「生醤油」。「火入れ」という熱を加える作業をすることによって香りが高くなり、同時に殺菌ができます。
醬油の絞りの工程でできる絞りカスは、捨てることなく牛の餌となるそうです。
醬油造りの工程は、麹やもろみの発酵・熟成の時間、混ぜ方、味などの加減は、すべて職人の長年の経験で培った感覚によって、コントロールされています。
再仕込で作られる「はつかり醤油」
松本醤油商店の主力商品は、絞った醤油を木桶に戻し、再度麹を加え、さらに1年発酵・熟成させ風味豊かに2年かけて作った「はつかり醤油」です。
もろみの発酵・熟成を再仕込し、手間のかかる工程で作る美味しい醤油は、
全国から注文がある松本醤油商店の人気商品。
はつかり醬油をはじめ、漬物や醤油プリン、ドレッシングなど色々な商品があり見学後は
直売所で、あれこれと目移りしてしまいそうです。
ドレッシングや醤油プリンは、とても人気があり、売り切れてしまうこともあり。
商品は、一部通販でも購入できます。(醤油プリンは、通販購入不可)
醬油を食べ比べてみた!
せっかく醤油が見学できたので、自慢の『はつかり醤油』と『甘露醤油』を買って
豆腐につけて、食べ比べてみました。
◆『はつかり醤油』50ml瓶
香りが甘露醤油より強く、鼻から抜ける爽快感がありました。味はきりっとした旨味のあとに塩味がじわっと染みわたります。醤油の旨味とは何か、この醤油が教えてくれます。
◆『甘露醤油』50ml瓶
香りは『はつかり醤油』に比べてまろやか。味は、名前にあるよう甘みがあり、全体的に味に丸みがあり、上品な味わいです。刺身や寿司など生ものに使うと素材の味を、さらに引き出してくれそうです。
普段、食べ比べたことがない醤油ですが、こんなに違いがあるなんて知りませんでした。
毎日使う醤油だからこそ、自分にあった醤油を見つけてみるのも楽しいと思います。
醬油蔵を見学してみて
江戸時代から受け継がれている醤油蔵の杉桶は、単なる桶ではなく酵母菌や麹金、乳酸菌などの微生物が棲み着いて、この醤油蔵全体が生きている建造物でした。
また、店主の松本さんのガイドは、まるで落語を聞いているかのようにテンポがよく、あっという間に見学の時間が過ぎて、とても楽しい時間を過ごすことができました。
この素晴らしい醤油蔵をここ川越で今まで受け継いでこられたことに、感謝と敬意を表したいです。
この歴史ある醤油蔵は、観光客の方も川越市民の方も、1度は見ておく価値ある建造物だと思います。
蔵の香りや醤油の味、歴史の重みなどは、やはり実際に見学し体験してみないと、この感動はお伝えできません。
醬油蔵の見学は、土日祝日に1日に3回、気軽の参加できます。大人からこどもまで楽しめる、ちょっとした社会科見学です。
ぜひ、180年前に作られた醤油蔵を実際に体感してみてください。
作られた工程や歴史を知ることで、何気なく食している醤油も、しみじみと心に感じ
食卓の醤油の味わいも変わってくるかもしれません。