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独身世帯で減る公的年金への信頼…老後の生活費の収入源の実情や将来設計の中身を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 何をするのにもお金は欠かせない。老後は現役時代よりもっとやりくりが大変

老後の支えは公的年金、就業収入、私的年金のトリオ

心身の衰えで現役世代のような就労がかなわなくなる、あるいは自らの意思で打ち切る老後生活において、人々はどのような形で生活費をねん出するつもりなのか・しているのか。その実情を金融広報中央委員会の「知るぽると」が2016年12月付で発表した「家計の金融行動に関する世論調査」から確認していく。

次に示すのは「老後の生活費をどのような収入源で補うか」について尋ねた結果。単身・二人以上世帯双方ともトップは「公的年金」となっている。

↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(2016年)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(2016年)

二人以上世帯の方が「公的年金」への依存度が高いが、これは多分に受給額が大きい厚生年金を対象としているからだと考えられる。また夫婦二人分ともなれば、単純計算で世帯当たりの受給額が大きくなり、電気代や家賃などの固定費の節約も合わせ、やりくりもしやすくなるのも理解はできる。

第二位は「就業収入」だが、こちらは単身世帯の方が1.0%ポイント高い。配偶者の就業収入に頼ることもできず、「公的年金」の不足分は自らの手で稼ぐとの選択肢として考えれば納得はいく。一方第三位の「企業・個人年金、保険金」は老後を迎える前の備えを利用するものだが、やはり雇用事例や老後に至るまでの金銭的な余裕の比較で、二人以上世帯の方が高い値を見せる。

「公的年金」がメインで、「就業収入」「企業・個人年金など」が補完、余裕がある人は「金融資産の取り崩し」も併用。一人身ほど自らの手で稼ぐ傾向が強いなど、世帯構成によるお金周り事情の違いがすけて見えてくる。なお生活保護などが該当する「国・自治体からの公的援助」は単身世帯で1割が想定している。二人以上世帯でも4.7%。

ここ数年間の変移を確認

さてこれらの動向を直近10年の推移でみると、いくつかの動きが確認できる。なお「国・自治体からの公的援助」は2014年から加わった項目なので、2013年以前の値は無い。

↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(単身世帯)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(単身世帯)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(二人以上世帯)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(二人以上世帯)

過去においても大まかなウエイトは直近の2015年分と変わらないものの、

・単身世帯では「企業・個人年金、保険金」への傾注が増えると共に、「公的年金」が減っている。「就業収入」は高い水準を維持。

→「公的年金」への期待低下、それを補完するために自ら働こうとする意志の高レベルでの維持

・二人以上世帯では「就業収入」「企業・個人年金、保険金」への傾注が増える

→漠然とした収入の減退不安、それを補完するために自ら働こうという意志の高まり

・2011年以降の「金融資産取崩し」回答者急減

・2013年における単身世帯での「企業・個人年金、保険金」「金融資産取崩し」の下落とその継続。同じタイミングで「就業収入」も減退の動き

の傾向が確認できる。単身世帯と二人世帯それぞれの、世間一般に語られる「リスク」の違いがそのまま表れている。

2011年に発生した「金融資産取崩し」への回答者の急減は原因を特定できない。単身・二人以上双方の世帯で同じ動きが確認できるため、データ上の「ぶれ」とも考えにくい。景気悪化、あるいは震災による被害の回復のために、老後に備えていた金融資産の漸次取り崩しを行い、将来まで維持できそうにないとの考えが急速に広まった可能性もある。

ともあれ、老後の生活を支える収入源としては、「公的年金」に依存期待をしながらも、単身・二人以上世帯それぞれが各個の事情や思惑に従い、対策を練り実行していることがうかがえる。特に二人以上世帯で「就業収入」への傾注が継続して高まりを示す状況は、現時点でも大きな社会問題化している失業率・雇用市場との関係も深いことから、今後の動きを見据える必要がある。少なくとも現状では、高齢者の労働への参加意欲は、さらに高まりそうだ。

他方、2014年以降の設問ではあるが、単身世帯で「国・自治体からの公的援助」を選択する人が1割台と高水準を維持している点も問題に違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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