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40年間ほぼ当ててきた専門家による「勝敗予想」。現時点でどの候補者が有利か?【米大統領選】

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:イメージマート)

アメリカは11月に投票が行われる大統領選に向け、各党の候補者選びの真っ只中だ。

全米各州の党員集会や予備選挙を通じてそれぞれの党の候補者が絞られていき、野党・共和党は7月の党大会で、与党・民主党は8月の党大会で各候補者が決まる。

民主党は、現職で再選を目指すバイデン大統領のほかに有力な対抗馬が見当たらないとして、バイデン氏が候補者になりそうだ。共和党はトランプ前大統領が党内の支持を集め最有力と見られている。このままいけば、バイデン氏とトランプ氏の「再対決」の可能性もある。

共和党の有力候補として伸し上がってきているトランプ氏。サウスカロライナ州の共和党予備選を前に、今月10日現地で集会を開いた。今年6月で78歳。
共和党の有力候補として伸し上がってきているトランプ氏。サウスカロライナ州の共和党予備選を前に、今月10日現地で集会を開いた。今年6月で78歳。写真:ロイター/アフロ

そんな中ある専門家が今年の大統領選についての勝敗予想をし、注目を浴びた。

歴史家で選挙予測家のアラン・リクトマン(Allan Lichtman)氏は、1984年の大統領選以来、この40年間にわたりほぼすべての勝者を的中させてきた人物として知られる。

米メディアが報じるところによれば、同氏が今年の大統領選を占ってみたところ、もしバイデン氏とトランプ氏がそれぞれの党派の候補者として選ばれ、両氏の対戦になると仮定した場合、今のところ「バイデン氏がわずかにリードしている」とした。

リクトマン氏が勝者予測に使用する計算式「ホワイトハウスへの鍵(Keys to the White House)」は13の正誤問題(勝敗を分ける鍵)で構成されている。これまでも同様にこの計算式を用いて2016年の大統領選でトランプ氏の勝利を、2020年の大統領選でバイデン氏の勝利を予測し、その精度の高さは証明済みだ。

その13のキー(勝敗を分ける鍵)とは以下の要素である。

  1. 政党の授権(どちらが多数派か)
  2. 選挙戦(での戦術)
  3. 現職の地位か(大統領選は例外はあるものの多くの場合現職が再選している)
  4. 第三党の状況や異議申し立てがあるか
  5. 短期的な経済状況
  6. 長期的な経済状況
  7. 政策変更の実施はあるか
  8. 社会不安があるか
  9. スキャンダルがあるか
  10. 外交/軍事政策の失敗があるか
  11. 外交/軍事政策の成果があるか
  12. 現職大統領にカリスマ性があるか
  13. 対抗馬にカリスマ性があるか

それぞれの要素ごとに、2人の候補者についてtrue(正しい、そうだ)かfalse(正しくない、そうではない)を付ける。trueがついた候補者はキー(鍵)を獲得し、falseがついた場合は相手にポイントが加算される仕組み。

例えば、現職のバイデン氏は三番目の要素においては自動的にキー(鍵)が1ポイント与えられる。また大統領任期中に民主党が政策変更を実施するため、七番目のポイントも民主党(バイデン氏)に別のキー(鍵)が与えられる。

議会下院で過半数を占める政党が共和党のため、一番目のポイントは共和党、つまりトランプ氏に与えられる。

リヒトマン氏によると、バイデン氏はカリスマ性に欠けるということで、十二番目のキー(鍵)はトランプ氏が獲得する。

今月12日、ワシントンでの全米郡協会立法会議でのバイデン氏。81歳、最高齢の大統領だが、これまでの言動から健康を不安視する声が多く上がっている。
今月12日、ワシントンでの全米郡協会立法会議でのバイデン氏。81歳、最高齢の大統領だが、これまでの言動から健康を不安視する声が多く上がっている。写真:ロイター/アフロ

このように、リクトマン氏がこの計算式で今年の選挙戦を占った場合、今のところバイデン氏が5つのキー(鍵)を獲得したのに対して、トランプ氏は3つだということで、前述の通り「わずかにバイデン氏がリード」となっている。ただしこの予測はあくまでも「現時点」でのものだ。ほかに5つのキー(鍵)が残され、もしバイデン氏が外交や軍事問題で大きな成果を収められなかった場合、そのポイントがトランプ氏に加算されていく。トランプ氏が11月までにこの残りのキー(鍵)を掴む可能性もあると見られている。

大統領選の勝敗予想についてはほかにもさまざまな機関が行なっており、トランプ氏の勝利を予測しているものもある。この勝敗予測は専門家であっても非常に難しく、また投票日が間近になってスキャンダルが急浮上することも。今後の候補者選び、そして最後の勝敗の行方まで目が離せそうにない。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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