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【札幌市中央区】「赤いはちみつ」は祖母が残した宝物の一部。10月10日は新店にとっても大事な日です

吉川雅子野菜ソムリエ上級プロ&フードツーリズムマイスター(札幌市)

1998年10月10日、伊達市大滝区で自家製はちみつを取り扱う「花カフェアイバレー」がオープン。その日と同じ、2022年10月10日、宮の森に2号店となる「アイバレー宮の森」がオープンしました。透明な赤いボトルでインパクトがある「赤いはちみつ」のヒミツなどをご紹介します。

物産展でも目をひく「赤いはちみつ」

9月8・9日に開催された『パッケージデザインも楽しむ 北海道物産展』のことはここでもご紹介しましたが、「寺島デザイン事務所」30周年記念の、同社が関わった北海道産食品などを集めたマルシェでした。

私がこの物産展でとても気になった商品が「赤いはちみつ」だったのです。

『パッケージデザインも楽しむ 北海道物産展』
『パッケージデザインも楽しむ 北海道物産展』

購入した「赤いはちみつ」をヨーグルトにかけていただきました。とにかく赤い色が美しく、目でも楽しめ、アロニアの独特な風味もほんのり感じられてとても美味しくいただきました。

「花カフェ アイバレー」の「赤いはちみつ」

支笏湖から美笛峠を抜けて洞爺湖へ向かう途中の、緑に囲まれた伊達市大滝地区にある「花カフェ アイバレー」。24年前に石川淳子さんが始めた“花とカフェとはちみつ”のお店です。ドイツからプロの養蜂家を招き、巣箱の設置から採蜜まで敷地内で行い、非加熱の天然ハチミツをつくっています。

ある時、店舗周辺に咲く数百種類の花にミツバチが集まるのを見て、大滝特産の「アロニア」を加えてみたらどうだろうかと考え、何度も何度も研究を重ねて、「赤いはちみつ」を誕生させました。

スーパーフードとして人気上昇中のアロニア

スーパーフードとして、現在では東欧や北欧などで栽培されているアロニア。イチゴやラズベリーなどと同じバラ科の植物です。

日本では北海道産が約9割を占めています。全道各地の広いエリアで栽培されていますが、中でも大滝村(現・伊達市大滝区)や江別市が多いです。

スーパーフード」として紹介されることが多いアロニアは、「ミラクルフルーツ」「パーフェクトフード」などとも呼ばれ、その圧倒的な栄養価の高さが注目されています。

特に、抗酸化作用が高いとされるポリフェノールをふんだんに含んでいます。中でも、紫や青紫色の野菜やフルーツに多く含まれる天然色素で抗酸化物質のアントシアニンが豊富。このアントシアニンにより、アロニアは老化や生活習慣病などの予防に良いとされ、スーパーフード、ミラクルフルーツとして注目を浴びることになったのです。

ほかにもβ-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイドも含まれてて、活性酸素を除去する抗酸化力が強い成分とされ、さまざまな病気の予防にもつながるといわれています。

しかし、英語でアロニアを「チョークベリー」(チョークとは「息がつまる」という意味)といいますが、息がつまるほど渋くて苦い果実を表現しています。だから、ジャムなど砂糖などを加えて加工することが多いのですね。

砂糖をはちみつに置き換えて!

生の果実は苦みや渋みがあるため砂糖を入れて加工することが多いことから、“その糖分をはちみつにしては?”と考えてできたのが、「赤いはちみつ」だったというワケです。

アロニアの美しい赤色が加わった「赤いはちみつ」は、さらりとした食感とフルーティーな香りが特徴です。

インパクトのある「赤いはちみつ」のパッケージ
インパクトのある「赤いはちみつ」のパッケージ

2号店となる「アイバレー宮の森」がオープン!

大滝の「花カフェ アイバレー」の姉妹店として、10月10日、「アイバレー宮の森店」がオープンしました。

白と木の木目がきれいな壁と2階まで続くガラスがとてもモダンな外観
白と木の木目がきれいな壁と2階まで続くガラスがとてもモダンな外観

木目が美しいドアに、アイヌ文様の木彫りがぴったりとはめられて印象的です
木目が美しいドアに、アイヌ文様の木彫りがぴったりとはめられて印象的です

ハチの巣をイメージした棚がオシャレですね
ハチの巣をイメージした棚がオシャレですね

1階ではちみつのテースティングや商品の販売を行っています。

2階のカフェスペースでは、アロニアを使ったドリンクやスイーツが味わえ、また、ギャラリーもあります。

2階のイートインコーナー。床もハチの巣のように組まれているのがオシャレです
2階のイートインコーナー。床もハチの巣のように組まれているのがオシャレです

こちらがメニューです
こちらがメニューです

私はアロニアスムージーをオーダー。

アロニアの実にヨーグルトとはちみつが加わって、アロニアの特徴である苦みや渋みはほとんど感じなくごくごく飲めました。飲んだ後は目がシャキッとしました
アロニアの実にヨーグルトとはちみつが加わって、アロニアの特徴である苦みや渋みはほとんど感じなくごくごく飲めました。飲んだ後は目がシャキッとしました

ステキな手仕事の展示!

すっきりとした店内をぬくもりある空間に仕上げているのが、さまざまなアイヌ文様の作品の数々です。

アイヌ文様+和のテーストの刺繍が施された上品な色遣いの作品
アイヌ文様+和のテーストの刺繍が施された上品な色遣いの作品

いずれも祥未さんの祖母の石川愛子さんの作品です。

愛子さんが40年間に渡ってアイヌ文様をベースとした彼女ならではの手法で制作され、どれもとても魅力的で見応えがあります。

入口を入った右手、2階に続く壁に飾られた3メートルほどのタペストリーは落ち着いた優雅さの中に力強さを感じます
入口を入った右手、2階に続く壁に飾られた3メートルほどのタペストリーは落ち着いた優雅さの中に力強さを感じます

石川愛子さんは、故・砂澤ビッキ氏と出会い、草木染めの創作活動を開始ししました。ビッキ氏が彼女の活動の地を「アイバレー」と名付けてくれましたそうです。その意味は『愛する谷』。この名称がいつしか愛子さんの愛称となりました。

ひと針ひと針、時間と思いを込めて作られた作品はどれも圧巻です。

この10月10日は、愛子さんがアイヌ刺繍を始めた特別な日でもあります。その記念すべき日にオープンしたお店。残念なことに、今年7月、92歳で逝去。このお店を見ることはできなかったそうですが、この店にはたくさんの思いが詰まっています。

ほかのはちみつの特徴

白いはちみつ」は上品な甘さがふんわりと広がります。クセがなく、はちみつが苦手な方にもおすすめです。

白いはちみつ
白いはちみつ

緑のはちみつ」は柑橘系のさわやかな味し、整腸効果が期待できます。

緑のはちみつ
緑のはちみつ

祖母の愛子さんの染め物の知識があったからこそ「赤いはちみつ」が誕生したと祥未さんは言います。この美しい色になるまで7年かかったそう。

今までの経験や知識、時間や思いなど、たくさんのものが詰め込まれた特別なはちみつを中心に、愛子さんが残したたくさんの宝物を次の世代へもつないでいく、ステキなお店です。

<Aivalley MIYANOMORI アイバレー宮の森店>

*住所:札幌市中央区宮の森2条7丁目1-58)

*TEL:011-215-9427

*営業時間:11:00~18:00

*定休日:不定

野菜ソムリエ上級プロ&フードツーリズムマイスター(札幌市)

札幌市在住。「野菜ソムリエ上級プロ」。ほかにも生産者のブランディングをする「青果物ブランディングマイスター」、地域の食をツーリズムに生かす「フードツーリズムマイスター」などの資格を有する。「簡単におうちで野菜たっぷりな料理をしよう!」をモットーに料理教室やワークショップなど食に関する話題提供や、野菜や果物を使った商品開発やメニュー開発、アグリツーリズム企画なども行っている。また、原田知世・大泉洋主演の映画『しあわせのパン』では、フードスタイリストとして映画作りに参加。著書:『北海道チーズ工房めぐり』『野菜ソムリエがおすすめする野菜のおいしいお店』など。

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