台風9号 予想進路とその影響
台風9号は発達しながら北上
台風9号は3日午後3時現在、マリアナ諸島にあり、ほとんど停滞しています。台風9号の雲(表紙)をみると、中心付近に濃密な雲域(CDO)はありませんが、非常に発達した雲域(Cbクラスター)が散在し、バンドパターンへ移行しています。
台風9号は今後も、海面水温の高い海域を北上するため、6日(月)には非常に強い勢力となる見通しです。発達した雨雲を伴ったまま、8日(水)には沖縄や奄美に近づく可能性が高くなっています。なお、台風の中心が予報円に入る確率は70%です。
マリアナ諸島を通過した台風は?
台風9号は5日(日)かけ、マリアナ諸島を通過する予想ですが、マリアナ諸島というよりも、グアム・サイパンといったほうが聞き覚えがあるかもしれません。このあたりの海域は一年を通して海面水温が高く、台風発生・発達地帯(The Typhoon Zone)というべき海域です。
過去、この海域(北緯10度-20度、東経140度-150度)を通過した台風がその後、どのような軌跡をたどったのか、調べてみました。
上図は、中国大陸から日本の東まで5つの領域(A~E)に分け、それぞれの領域に達した台風の割合を示したものです。25%以上の領域では、マリアナ諸島を通過した台風のおよそ4つに1つがやってきていることになります。マリアナ諸島を通過する台風は日本列島への影響が大きいと言えそうです。
また、年間では本州から日本の東にかけての領域C-Dで25%以上と高く、7月に限ると、黄海から本州にかけての領域B-Cで値が高くなる傾向がみられます。つまり、7月の台風の方が西へ偏る傾向があり、それは日本の東側で太平洋高気圧が強いことを表しています。
人的被害は減っても
昨年(2014年)は7月10日に台風8号が鹿児島県阿久根市に上陸しました。この台風8号は大型で非常に強い勢力(中心気圧930ヘクトパスカル、最大風速50メートル)で沖縄県を通過したため、特別警報が出されました。
また、本州に停滞していた梅雨前線が刺激され、台風が近づく前から、九州や北陸、東北で局地的な大雨が発生しました。
9日夕方には長野県南木曽町で土石流が発生し、住宅やJR中央線の橋脚が流されるなどの被害があったことを思い出します。
台風による人的被害は1979年(昭和54年)台風20号を最後に、100人を下回りました。しかし、2004年台風23号では98人、2011年台風12号では94人の方が犠牲になり、人的被害がセロになる目標は遠いままです。
一方で、経済的な被害は増加傾向にあり、2012年の台風による被害額は約46億5千万円に達しています。
台風と梅雨前線の組合せは典型的な大雨パターンでありながら、豪雨の予測が困難なパターンでもあります。とくに、台風が遠くても、不意の大雨が頻発するため、対応が後手になりやすい。肝に銘じたいと思います。
なお、台風9号の情報は常に最新のものをお使いください。
【参考資料】
気象庁:台風情報
デジタル台風
内閣府:平成26年版防災白書