第35エンド「最高最後のジャパン、シニア日本代表も世界に挑んだ。大奥ジャパン(仮)奮闘記」
ミックスダブルス日本代表、阿部晋也と小笠原歩が新種目で世界へ挑んでいた時を、というか会場も同じくして、シニアの世界選手権が開催されていた。
男子の日本代表は長岡秀秋率いる軽井沢GG、女子は川村みゆき率いるチーム北海道だ。
特に女子は序盤からイングランド、アイルランド、イタリアといった中堅チームから3連勝を果たし、グループリーグを引っ張る大健闘を見せた。
メンバーは稚内協会所属のスキップ・川村をはじめ、同じく稚内のフィフス・小林陽子、札幌協会所属のリード・桑原隆子、サードの松井佳津子は帯広協会で、サードの林縁(ゆかり)は北見協会という北海道オールスターズだ。
続くリトアニアには惜敗したが、スウェーデンからは星を挙げて勝ち越しを決めた。ロシア、カナダに敗れ4勝3敗でタイブレークに回り、ロシアにまたも屈し、クオリファイはできずに大会を去ることになってしまった。
それでも今季、カナダにタイムアウトを取らせた上にラストエンドまで競り、ラストロックを投げさせたジャパンは彼女たちだけだ。
話を聞かせてもらったが、
「カナダもロシアもやはり技術が高いので、できるだけハウスをオープンにクリーンに保って1点を取ってもらって、どこかでチャンスある時に2点を取りたい」
チームとしてのビジョンが明確で共有度も高い。LSDもカナダに次いでグループ2位で、初戦のイングランド戦などはラストロックをボタンドローで仕留めるといったシーンもあった。メンタルも強そうだ。
「諦めないこと、めげないこと。チームを信じること。ミスショットはどうしても出るから、ミスしても笑ってゲームを楽しもう」
とは、大事マンブラザーズバントの歌ではなく、川村みゆきが語ってくれたチームの基本スタイルだ。今季の女子A代表、ロコ・ソラーレ北見も同様のことを言っていた。あるいは大和撫子カーラーのDNAに組み込まれている、世界へ挑む共通姿勢なのかもしれない。
大会初日、カルガリーで開催されるグランドスラムの準備のために現地入りしていたSC軽井沢クラブが、ミックスとシニアの応援に駆けつけてくれた。シートを見つめるスキップの両角友佑に「将来はシニアの世界戦、出なよ」と声をかけてみると「あの人たちは本当にすごい。カーリング大好きなんですよ」と笑って呆れていたように、仕事や家庭をやりくりしながら、日本選手権を勝ち抜き、完全に実費でレスブリッジまで飛び、世界と互角に戦った。本当にカーリング愛に溢れたチームだった。
メンバーが最後に挙げてくれた課題と今後の抱負も頼もしい。
「まだ結成2年目だから、球(投げる石)のクセを知るのに時間がかかる」
「あとはコミュニケーションの質」
「でもそれは伸びしろだと思っています」
「ショット率を上げてまた戻ってきます」
全カテゴリーを通して世界一への道はどこも険しい日本カーリング界だが、あるいはこのチームが一番近かったりするのかもしれない。