米国ではHDMIテレビ戦争へ突入
テレビ局を運営したがる新聞社たち
新聞社USA Todayのガーネット社が22億ドル、2200億円で20局の地方テレビ局を買収(2013年6月13日)し、トリビューン社が27億3000万ドル、2730億円で19局もの地方テレビ局を買収(2013年7月1日)する。そして、マードック氏のニューズコープは、新聞部門(ウォール・ストリート・ジャーナル他)とTV映画部門を分割し(2013年6月28日)、「21世紀フォックス」として分割上場させニューズコープブランドとの分割をおこなった。日本のソニーの大株主である米ヘッジファンドのサードポイントも、同様の分割上場を提案している。
つまり、これは新聞社がテレビ・ネットワーク産業に進出していく構図をよく表している。日本の新聞市場同様に、米国の新聞市場もシュリンクしているからだ。
GoogleのTVに対しての取り組み Chromecast
2007年にAppleは、テレビのHDMIケーブルへ接続する「Apple TV」を発売した。それ以来、幾度ものアップデートを重ね、YouTubeやVimeo、そしてレンタル&セルビデオ、そしてHulu(米国ではHulu PLUS やNETFLIXや)などのプラットフォームとしてテレビのHDMIの外部入力として鎮座するようになった。
地上波テレビ、BS衛星テレビなどの無料放送、CS BSなどのペイテレビ、CATVのペイテレビから、従来のストリームライブ放送ではない、蓄積型オンデマンドテレビとしてのApple TVの市場に、ようやくGoogleが参入することとなった。
それが、Chromecastだ。
Chromecastは、AppleTV同様に、テレビを視聴するためのものではなく、HDMIに接続されたテレビ上に、クラウド上にあるコンテンツを表示するためのデバイスだ。スマートフォンや、Chromeブラウザや、AppleのiPadやiPhoneなどからもコントロールできる。
変貌するテレビ・ビジネスモデル
テレビのビジネスモデルは地上波に代表される広告付き無料プログラムが中心だ。
日本のテレビ広告市場は、1兆7757億円(2012年)+NHKの受信料 6725億円で、合計2兆4482億円。
米国のテレビ広告市場は385億ドルで約3兆8500億円(2011年) + CATV 300億ドル3兆円で、6兆8500億円市場だ。
そこに難視聴地域を対象に普及してきてCATVがペイテレビのプラットフォームとして加味されてきた。アンテナを購入することなくCATV経由でペイテレビを受信できるようになり、視聴者もハードディスクレコーダーや、ハードディスク内蔵テレビでエアチェックすることにより、番組を大量に保存できるようになった。また、地デジ対応になったことによりEPGで番組を確認できるので、連続録画などの機能でいつでも視聴する番組は、ストリームよりもオンデマンドで見たい番組だけを視聴するという「文化」が根付いてきていると思う。
生放送で見る必然性がなくなってきている。
当然、CMは30秒早送り機能などでスキップしながら視聴している。
HDMIテレビ視聴戦争
Apple TVや、AirPlayでパソコンで購入する最新の映画と比べると、ペイテレビの映画では、新作の登場が数ヶ月遅く感じる。むしろ、ライバルはレンタルビデオ店舗での新作DVDだ。当然、ブルーレイ画質でもなければ、映画監督の2時間たっぷりのコメンタリーチャプターは視聴できない。しかし、何よりも週末に見たいと思った時に、「貸出中」もなければ、返却しにいく手間もいらない、
このメリットは、映画が4ドル、400円で視聴できる以上の価値があると感じている。
そして、AirPlayだ。パソコンやタブレットの延長としてテレビモニタが使えるこの機能を知ると、これが本当の「インタラクティブテレビ」だということがわかる。手元のタブレットで探し、AirPlayでディスプレイに映し出す。これはまさにヴィジュアル付きのリモコンだ。
特に日本の地上波では、プライムタイムには、よしもと芸人とAKBとジャニーズだらけのラインナップで辟易とする。そこでHDMI入力を切り替えるだけで、vimeoなどのArt作品やWSJ.comのTechニュースなどが視聴できる。まるで、米国に住んでいるかのような気分になる。さらにYouTubeなどがもっとUIも含めて連続してタレ流しにしてくれるとテレビよりも便利なのかもしれない。日本ではニコニコ動画もぜひ、採用すべきであろう。
最近のニコニコ動画の国会中継や官房長官の発表中継などは、NHKよりもNHKらしい。公共放送のNHKでは中継していない時のほうが多いくらいだ。さらに弾幕のヤジが政治家のヤジよりもまともなので非常にユニークだ。
NHKの受信料収入は6387億円で、ニコニコのプライム会員収入は、月額525円200万人突破で、10.5億円だ(NHKの1/600の規模)。1/600の規模のニコニコの機動性が、公共性を帯びてきたとしたら第二の公共放送として認可してもいいかと思う。いや、電波を使わないので、総務省も関係ない世界だ。
つまり、テレビというビジネスモデルは、すでに電波を使わず、通信でマネタイズする時代へと急速に変化しつつあるといえるだろう。いや、誰も見なくなった電波ではもう無理なビジネスの成長なのかもしれない。
そして、YouTubeも有料チャンネルを開始した(2013年5月9日)。月額0.99ドル、100円からだ。
有料チャンネルはこんなラインナップだ。
YouTubeの年間広告費は、25億ドル、2500億円を稼ぐようになった(2006年、GoogleにYouTubeが買収された額は16億5000ドル、1650億円)。また、YouTubeチャンネルで番組を提供していたAwesomenessTVを、映画会社のドリームワークスSKGが3300万ドル、33億円で買収する(2013年5月1日)など、YouTubeのコンテンツが急拡大していることがわかる。
YouTubeネットワークと呼ばれる市場も拡大している。
ゲームチャンネルのMachinimaは、3500万ドル、35億円調達(2013年5月)
分析ツールのfullscreenは、3000万ドル、30億円調達(2013年6月)
監視ツールのZEFR
http://jp.techcrunch.com/2013/07/16/20130714the-art-and-science-of-youtube-networks/
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakatahiroaki/20130722-00026616/
ソーシャルテレビの到来
テレビ局のカテゴリーでテレビ局が勝手に編成した時間とプログラムに支配されたテレビプログラムから、HDMI経由で流れるブラウザの延長のようなテレビ局。
それが、GoogleのChromecastの狙いだ。
Apple TVが100ドル近いのに対して、35ドルだ。日本でも発売を予定している。Appleとの違いは、AppleがすべてAppleが設計するサービスであるが、GoogleはSDKを提供し、サードパーティーの参画を促進するという。
送り手のテレビ局がCMと予算と視聴率だけを考えて番組を制作・編成している間に、ユーザーはもっとネットワーク越しの新たな番組へと触手を動かし始めている。このトレンドは、最初はデバイスの普及で限られたユーザーだが、15秒や30秒の枠に縛られない広告枠で、しかもユーザーと意見を交換したり、対話ができるソーシャルテレビの時代になった時に、広告クライアントは、レガシーな番組に広告を出し続けるだろうか?