マリファナで五輪出場資格を奪うのは人種差別か。セス・ローゲンのツイートにさまざまな意見
マリファナを“問題のあるドラッグ”として扱うなんて、狂っている。セス・ローゲンが、米陸上選手シャカリ・リチャードソンが受けた待遇を批判した。
リチャードソンは、先月オレゴン州で開催された全米選手権で五輪出場が決まっていたが、薬物検査でマリファナ陽性反応が出たため、1ヶ月の資格停止処分を受けている。この処分を宣告された後に出演したテレビで、リチャードソンは、全米選手権の2日ほど前、実の母が亡くなったことを取材記者から聞かされて知り、ショックを受けていたのだと明かした。その辛い気持ちをごまかすために、オレゴン州では合法であるマリファナを使用したのだという(オレゴン州では合法である、という部分はインタビュアーが言ったもので、リチャードソンは決してそれを言い訳にはしていない)。「自分がやったことはわかっています。何をするべきだったのかも。その決断をしたのは自分。同情は求めていません」と、リチャードソンは必死で明るさを装いながら語った。
それを見て、ローゲンはフェアじゃないと感じたのである。ローゲンは、カナダに住んでいた頃から20年以上日常的にマリファナを使用。今ではロサンゼルスで自分のマリファナブランドまで立ち上げた大のマリファナ愛用者だ。マリファナに運動能力を高める効果はないこと、そして歴史的に黒人がマリファナ所持で不当に重い刑罰を受けてきたことを踏まえ、ツイッターで「マリファナを‘問題のあるドラッグ’とする概念は人種差別に根付くもの。ヘイトにもとづく考えのせいでチームUSAがこの国で最も才能あるアスリートから資格を取り上げるなんて狂っている。彼らこそ恥じるべきだ」と、ローゲンはこの処分を強く非難。さらに、伝説の陸上選手フローレンス・グリフィス・ジョイナーの名前を出し、「もしマリファナで脚が速くなるなら、俺はフロージョーになっているよ」とも付け加えた。
ローゲンによるこのツイートには、西海岸時間2日午後5時の時点で、14万以上の「いいね」が付き、2万9,000回以上のリツイートがされている。コメントもさまざまだ。「100%正しい。完璧に言ってくれた」「23個のメダルを取ったマイケル・フェルプスは白人。彼はマリファナを使っていることをオープンにしていたのにオリンピックに出ていた。おかしいのでは?検査で陽性反応は出なかったにしても、使用していたのは明らかなのに」と、ローゲンの言う通り人種差別が関係しているとするコメントもあれば、逆に「人種差別とは何の関係もない。セス・ローゲンがアスリートのルール違反を人種差別に結びつけるのは残念。もしこれが白人アスリートだったらセス・ローゲンは何も言わなかっただろう」「なぜなんでもかんでも人種問題にしないといけないのか?彼女のことを可哀想だとは思うが、彼女はルールを知っていて無視したのだ」など、批判的なコメントもある。
また、「(1)開催地は東京。日本人がマリファナについてどう思っているかはご存知の通り。(2)ルールは彼女が参加するずっと前に設定されていた。(3)ほかの選手はルールに同意している」「マリファナが問題のあるドラッグなのかどうかではなく、世界規模ですべてのアスリートに対して禁じられているんだよ」など、客観的な立場のコメントも見られる。
それを踏まえた上で、このルール自体を変えるべきだと考える人も多い。「(リチャードソンが出られなくなって)すごく悲しい。もちろん彼女はルールを知っていた。だけどそのルールはクズみたいなルール。彼女は東京オリンピックに参加するべき」「思いつくだけでも、オリンピックに参加する国で少なくとも4カ国はマリファナを合法化している」「大食い競争でないかぎりマリファナにパフォーマンスを上げる効果はない。ばかばかしい」などというのが、その人たちの意見だ。
ローゲンに賛成するかどうかはさておき、この一件が論議を醸し出すきっかけを作ったことは間違いないだろう。一方で、少し前にはアメリカのメディア(もちろんNBCを除く)でも見られていた、今の東京でオリンピックを開催することへの疑問や批判を目にすることは減ってきている。だが、このまま突き進んだ挙句どうなるのかによって、それも大きく変わってくるのではないか。その頃、リチャードソンは「行かなくてよかった」と思っているかもしれない。