Yahoo!ニュース

セス・ローゲンの大麻ブランドがアメリカデビュー。自らデザインした灰皿、ライターも販売

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
セス・ローゲンと親友で脚本パートナーのエヴァン・ゴールドバーグ(写真:Shutterstock/アフロ)

 サラ・ジェシカ・パーカーは靴。キャメロン・ディアスとカイル・マクラクランはワイン。マシュー・マコノヒーはバーボン。

 演技以外でもクリエイティビティを発揮するそれらハリウッドセレブに、今度はセス・ローゲンが加わった。彼と、13歳の時からの親友で脚本パートナーのエヴァン・ゴールドバーグが選んだのは、いかにも彼ららしいアイテム。彼らの故郷カナダでも、彼らが現在住むL.A.でも合法化された、娯楽用マリファナだ。

 ブランド名は「ハウスプラント」。カナダでは2019年にスタートしていたが、今月になってアメリカでも展開を始めた。アメリカでのデビューに伴い、関連グッズの販売もスタートさせている。それらはどれも、なかなかお洒落で、お値段もそれなりだ。ローゲンがデザイン、制作した灰皿と花瓶のセットは、85ドル。持ち運び型でなく、テーブルに据置くタイプのライターは、220ドル。このブランドのホームページ(houseplant.com)には、ローゲンが5日間かけて灰皿を作る工程の動画が掲載されている。その器用な手つきを見ると、お下劣なコメディを得意とする彼にこんな側面があったのかと感心させられるはずだ。陶芸を始めたのは、コロナでロックダウン生活を強いられたのがきっかけだったらしい。

ローゲンがデザインした灰皿と花瓶のセット(houseplant.com)
ローゲンがデザインした灰皿と花瓶のセット(houseplant.com)

 据置き型のライターをデザインしたのは、ローゲンはライターをなくすのがお得意だから。「Los Angeles Times」とのインタビューで、ゴールドバーグは、「セスは人生で1万5,000とか2万5,000個くらいのライターをなくしてきたんじゃないか。50個セットのを買ったのに、1週間もすると、ライターがないと騒ぐんだ」と語っている。テーブルに据置きならば、なくすこともないというわけだ。

 肝心の商品であるマリファナを入れる缶も、とてもセンスが良い。そのデザインに惹かれる人は多く、マリファナが合法でない州の住人から「缶だけ売ってほしい」と言われることもあるという。それこそ、このブランドを立ち上げた理由なのだと、ローゲン。「長いこと、マリファナやそれにまつわるアイテムは、隠すべき存在だった。堂々と見せるものではなく、デザインにこだわるべきものではなかった。僕らは、マリファナを吸う人が、あるいはただデザインを愛する人が、誇りをもって見せられるようなものを作りたかったんだ」と、ローゲンは「Los Angeles Times」に対して語っている。

 もちろん、彼らが売るマリファナそのものにも、彼らは強い誇りをもっている。20年以上、毎日吸ってきた経験を活かし、自分たちが本当に愛するものを吟味、「これは、僕自身が毎日、1日中吸いたいと思うものだろうか?」と自問自答しながら選んだそうだ。その“リサーチ”を、彼らはずいぶん楽しんだようである。

 そんなおふざけ好きなふたりだが、企業精神は真面目で高尚だ。ウェブサイトで、ふたりは「僕たちは、この業界をもっと公平にしていくことを目標にしています。ハウスプラントは、多様な人々が働く職場作りを目指し、差別の歴史や、変化を生み出すために個人として何ができるのかを教育します」と述べている。提携する業者には女性、LGBTQ、障がい者、退役軍人などの会社を優先して選び、従業員のチャリティ活動を奨励し、手助けするとも宣言する。

マリファナを入れる缶のデザインにもこだわっている(houseplant.com)
マリファナを入れる缶のデザインにもこだわっている(houseplant.com)

 日本ではマリファナは違法で、当然のことながら非常に厳しい目で見られるが、違法な頃から現実的には身近な存在だったアメリカでは、昔からよくコメディのネタに使われてきた。最近はすっかり政治ネタが中心になった「Saturday Night Live」も、かつてはこの手のジョークが定番だったし、ローゲンとゴールドバーグは、マリファナ好きの男たちを主人公にした映画「Pineapple Express(日本未公開)」 をヒットさせている。最近ではセス・マクファーレン監督の「テッド2 」もマリファナジョークが中心だった。それはつまり、多くのアメリカのコメディアンにとっては、インスピレーションの源でもあるということ。ローゲンとゴールドバーグが自信をもってL.A.に送り出し、自分たちでも愛用するこのマリファナは、彼らがこれから書く映画を、もっと面白くしてくれるだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事