パリの映画館はまるでホテル空間!会議やセミナー、パーティーまで開催できる
2023年8月、パリを訪れました。話題の『バービー』が公開され、友人と近所の映画館へ。そこで驚いたのが、映画館がリノベーションされ、ホテルのように洗練された空間になっていたこと。更に驚いたのは、映画館で会議やセミナー、イベントやパーティーまで行えるのです。フランスのエスプリを感じるイノベーションをレポートします。
ホテルのようにリノベーションされたパリの映画館
2023年8月のパリ。世界中で話題の映画『バービー』が公開され、友人と連れ立っていち早く近所の映画館に見に行きました。
その際に驚いたのが、かつてはパリの映画館というと古き良きノスタルジックなイメージだったのが、木材を活かしガラス窓の向こうにグリーンを臨める中庭が配された、ホテルのような空間に生まれ変わっていたこと。日本人建築家が手がけたかのような和モダンともいえる内観です。
壁には、昨年亡くなったジャン=リュック・ゴダールら歴代の映画監督をはじめ、アラン・ドロンなど俳優たちのモノクロームの写真が配され、フランス映画へのオマージュがしっかりと感じられます。この辺りは映画愛の強いフランス人への配慮が行き届いているようです。
そして、奥にはサロンが。ホテルのラウンジのような空間にスクリーンが設置されています。一瞬、カフェかと思いました。
その美しい館内を見て、「しばらく映画館に来ないうちに、こんなことになっているとは知らなかった。」とフランス人の友人も驚いていた様子。
リノベに伴いチケット料金が値上げ
日本と比べると、以前フランスの映画館ではチケット料金がだいぶ安かった(コロナ禍前で1,000円前後)のも、フランスに映画愛好者が多い理由の一つだと思います。リノベに伴いそれが大幅に値上げ。15€ほどだったので、円にすると2,250円(2023年8月中旬時点)と、円安を受けて2倍ほど上がった印象です。動画配信全盛時代に、これでは映画館人口は減る一方だろうと心配になりました。
ただしこれは筆者が行った、映画制作・配信会社「Pathé(パテ)」の最新映画館の価格で、今でも6~8€(約1,000円強)で映画を観られる、古き良き映画館は存在します。
映画館でセミナーやイベントを開催できる!?
そして映画を観始めると、日本と同じように他の映画の予告編が始まりました。そこでまたしても驚いたのが、映画館内でセミナーや会議、更には誕生会などのプライベートなイベントやパーティーまで開けるという宣伝が流れていたこと。
元々、人と同じことをするのを嫌い、個性を重んじるクリエイティブ気質なフランス人。ビジネスとは縁遠いイメージのフランスも、さすがにイノベーションを起こし始めたかと、映画制作・配信会社Pathé社の斬新な試みに感心しきり。
■PATHE BUISINESS:https://www.location.pathe.fr/
上記の公式HPによると、セミナーやイベントは、映画館のスペース、飲食代、スクリーン代込みのオールインクルーシブで借りることができるとのこと。
プライベートでも、例えばラグビーワールドカップ2023、クリスマスパーティなどを仲間で楽しむなど、オーダーメイドのイベントにも対応可能。「映画館で誕生日を祝おう!」とスクリーンにも流れていました。夜にはシャンパンなどを楽しめるカクテルパーティーが出来るそうです。さすがは、「何でも楽しんじゃおう!」という精神のフランスならでは。
ちなみに、映画館では高品質の映像と音質で知られるImaxやDolby Cinémaを採用しています。フランス国内に約1000室用意され、60~600席に対応可能。
しかしこれも、NetflixやAmazon Primeなど動画配信サービスの躍進やコロナ禍による、映画館生き残り対策の一環なのでしょう。
映画の国フランスでこのような状況というのは、少し寂しい気もします。しかしPathé社のように映画館を他の用途で活用しつつ維持していくという方法は、なかなかよいアイデアではないでしょうか。