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【豊島区】「ライト建築」の中で「ライト建築」を学び体感する〈自由学園明日館〉

かつらこ定年後を楽しもうとブラブラしているライター(東京都豊島区)

JR池袋駅のメトロポリタン口から徒歩7分ほど。静かな住宅街の中に佇む、国の重要文化財「自由学園明日館」(みょうにちかん)。この夏から秋にかけてその「明日館」の中で「ライト建築」を学び体感してきました。

日本では帝国ホテルの設計者としても有名な近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト氏。アメリカに残されている作品の一部は世界遺産にも登録されています。そのライト氏の回顧展が昨年から今年にかけて行われました。日本では26年ぶりの開催ということで、とても盛況だったとのことです。そのライト氏が日本で手がけた建築のひとつが「自由学園明日館」です。

◆明日館の前身は「学校」
1921 年(大正10 年)、羽仁もと子・吉一夫妻が創立した「自由学園」(現在はひばりヶ丘の地に移転)の校舎として建設されました。設計に携わったのは、フランク・ロイド・ライト氏と遠藤新氏。シンメトリーでシンプルな外観は、「簡素な外形にすぐれた思いを」という創立者の願いが込められています。開校当時の生徒数は26 名でした。
創立から100年以上過ぎた現在、創立時の校舎「明日館」は国の重要文化財の指定を受けたのち、大規模な保存修理工事を経て、一般の皆様が訪れることができる施設になりました。

◆建物解説
明日館では見学可能日の14時から「建物解説」を行っています。希望者が少数の日は建物の中を歩きながらの解説ということですが、取材したこの日は月に1度の休日見学日で参加者が多く、講堂で画像を見ながらの解説になりました。参加者は解説の前後に建物内を自由に見学することになります。
解説はスタッフが交代で行うそうですが、この日は館長が解説を担当されていました。解体修理の様子を間近で見てきたお話は聞き応え充分で、あっという間に時間が過ぎました。その内容をここですべてご紹介することはできませんが、キーワードをご紹介しますので、答え合わせは是非現地で皆様ご自身で行っていただければと思います。

◆明日館を知るポイント(解説から一部のみご紹介します)
1「色」
明日館の外観の写真をご覧ください。いくつかの特徴的な色があります。解説の中では4つの色が紹介されていました。

明日館の外観
明日館の外観

2「天井高」
場所によって天井高が変化することによって味わうことのできる感覚があります。ぜひそれを実際に味わってください。

3「壁画」
明日館の中には創立10周年に当時の自由学園の生徒の手によって描かれた壁画があります。その壁画は長年壁材で隠すように塗り込められていたそうです。なぜ壁画は隠されたのか。その秘密は歴史の中にあります。

壁画
壁画

4「家具」
明日館の中には100年以上使われている椅子や机が多くあります。代表的なものとしては「新椅子」「六角椅子」などがあります。「六角椅子」は写真でご紹介します。その他は是非ご自分の目でご覧になってください。

六角椅子と暖炉
六角椅子と暖炉

5「暖炉」
明日館の中には5つの暖炉があります。暖炉は団らんの象徴として建物の中心に置かれています。明日館にお越しの際に探してみてください。なお、明日館の暖炉は現役です。冬場には暖かい火が人々を癒やします。もちろん煙突はあるとのことですが「見えない」そうです。

◆日本にある「ライト建築」4か所のうち現地保存・公開されているのは2カ所
アメリカ国内で世界遺産に登録されているライト建築は8カ所、その他の国でライト建築があるのは日本だけだそうです。そして日本で建物が公開されているのは2カ所、この「自由学園明日館」と「ヨドコウ迎賓館(兵庫県)」です。また、明治村には「帝国ホテル中央玄関」が保存されています。建物解説では明日館とヨドコウ迎賓館などとの共通点なども紹介されました。また、ライト氏とともにこれらの建築に携わった遠藤新氏の別の作品などとの比較もありました。どのお話も興味深く、建築を見るときのヒントをたくさんいただきました。
建物解説には他にも、自由学園の歴史や、重要文化財に指定されることの意義、解体修理とは何かなど、ただ建物をひとまわり見るだけでは得られないお話がぎゅっと詰まっていました。
この日参加したほとんどの方は「明日館は初めて」ということでした。解説終了後には「おもしろかったね」という声が聞こえてきました。私も同感です。明日館を見学される際には是非建物解説に参加することをおすすめします。

◆ライト建築のなかで建築を学ぶ
明日館では建物が国の重要文化財ということもあり、ライト建築をはじめ、建築に関する講座が多く開かれています。これから開催される講座をご紹介しますので、ご興味のある方はホームページよりお問い合わせ、お申し込みください。

○私が考えるフランク・ロイド・ライドーライトインパクト
1/11(土)13時半~15時 3,120円

○F.L.ライトと日本と日本建築ーライト建築で学ぶライト
全4回 11/13(水)他 19時~20時半 
対面:15,600円 
オンラインのみ:13,950円

○近代建築・日本のモダニズムードコモモ・ジャパンの選定作品とその魅力
全3回 12/25(水)他 19時~20時半
9,360円

○ル・コルビュジエとは誰かー海への憧れ ル・コルビュジエと大西洋/地中海
全2回 11/26(火)他 19時~20時半
6,240円

◆静かな「建築ブ-ム」がやってきたのかもしれません
明日館では見学や建築に関する公開講座で訪れる人の数は増加しているそうです。
私が明日館公開講座の建築に関する講座の取材をしたのはまだ暑さが盛りのころでした。その取材当日もゲリラ豪雨の中にもかかわらず、30名以上の方が明日館に集まりました。「テーマは建築だし男性の方が多いのでは」という私の見通しははずれ、半数が女性とお見受けしました。先日の建物解説の日も老若男女様々な皆様が参加されていました。もしかしたら静かな「建築ブーム」がやってきたのかもしれない、あるいはその楽しみにようやく自分が気づいたのか、と感じた取材でした。
そして、その建物にまつわる歴史や思想、建築の特徴、どこをどのように見ると何が伝わってくるのか、という知識があるのとないのとではその建物を見る目がまるで違ってくる、ということにもあらためて気づかされました。何度となく通っている明日館ですが、講座や解説の前後では、建物を見る目も写真を撮る目も変わったように感じました。

講堂外観
講堂外観

自由学園明日館の基本情報
  所在地 :豊島区西池袋2ー31ー3
  電話  :03-3971-7535
  HP   :重要文化財 自由学園明日館
  通常見学:10:00~17:00(15:30までの入館)
※他に夜間見学日や休日見学日も設定されています。
  見学料(税込み)
   建物見学のみ  :500円
   喫茶付見学   :800円
   夜間見学・お酒付:1,200円
   中学生以下無料
  休館日 :毎週月曜(月曜日が祝日または振替休日の場合はその翌日)
       年末年始、不定休あり
※不定休や、施設の使用状況により一部見学できない箇所がある場合もありますので、詳しくはHPのカレンダーにてご確認の上おでかけください。

定年後を楽しもうとブラブラしているライター(東京都豊島区)

教員として定年を迎えて数年。どっぷり浸かっていた学校以外の世界を覗いてみたくてあれこれお試し中です。高齢者の方にもお役に立つ情報がお届けできればと思いながら、街をブラブラ、キョロキョロしています。

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