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ノート(72) 「塀の中」の買い物や差入れの実態 獄中で特に役立つモノとは

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

~達観編(22)

勾留27日目

自作カレンダー

 この日は、朝から入所後2度目の居室内点検を経て、数日前に購入の手続を行っていた青色ボールペンや何冊目かのノート、天花粉などを受け取った。

 これで手もとのボールペンは黒、赤、青がそろったことから、ノートを使い、平日を黒、日曜祝日を赤、土曜を青で色分けしたカレンダーやスケジュール帳が自作できるようになった。壁にもカレンダーが貼られているが、半年表記のものである上、書き込みが禁止されているので、使い勝手が悪い。

 天花粉については、販売物品のリストの中に250円という価格で記載があり、どのようなものか興味本位で購入したものだったが、箱の中には野球のピッチャーが使うロジンバッグのような白い塊が入っているだけだった。

 どう使うべきか頭を悩まし、汗をかく夏場に首周りや脇などに塗るものだろうと推測したが、既に季節は10月中旬となっており、一度も使わないままで終わってしまった。

購入の手続

 参考までに、ここで少し物品の購入や差入れといったシステムの具体的な流れなどについて説明しておこう。

 まず購入手続だが、急に弁護人に相談したいことができ、手紙を送りたいが切手や封筒などが手もとにないといったような場合には、「一般願箋(がんせん)」と呼ばれるA4の半分大の用紙に特別購入の許可を求める記載をし、その旨を願い出ることが可能だ。

 しかし、あくまで例外的な取扱いであり、基本的には日用雑貨品と嗜好品とに分かれたマークシート式の「購入願箋」を朝の点検後に刑務官に提出し、注文する。

 例えば文具や衣類、日用雑貨だと月、水、食料品や菓子類だと火、木などと提出日が決まっており、もし購入の希望があれば、必ずその前日のうちに刑務官からマークシート用紙をもらっておかなければならない。

 こうして注文すると、拘置所預かりとなっている所持金の中から代金分が差し引かれ、数日後の平日には手もとに届けられる。

 マークシートには、「称呼番号」と呼ばれる各自の固有番号や姓、居室の舎房や階、商品番号や購入する個数などを正確に記載しなければならない。鉛筆ではなく黒色ボールペンで記入する必要があり、書き損じたらその1回分は注文を見送らなければならないから、気が抜けない。

 売店などに出向いて現物を見て購入するというわけではなく、商品名や商品番号、金額が書かれたリストを見て決めなければならないので、冒頭で述べた天花粉のような失敗もありうる。

 例えば、リストの中に「スキンクリーム・420円」、「ミルククリーム・500円」、「男性クリーム・400円」というものがあったが、具体的なブランド名や中身、容量などは全く分からず、どれを選べばよいのか混乱を招くようになっていた。

 全て定価販売だから、何もかもが驚くような値段だ。100円ショップで手に入るような単3マンガン乾電池4個パックが255円、使い捨てカイロが350円もした。

差入れの手続

 次に差入れだが、家族など差入れをする者が拘置所まで出向き、窓口で行うものと、手紙に同封したり、宅配便などを使って郵送するものとがある。郵送の場合、飲食物はダメだが、現金や衣類、本、切手などは可能なので、遠方にいる家族や支援者の場合、この手段を使うとよい。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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