小中高校生のインターネット・携帯電話事情をさぐる
高校生はほぼ全員な携帯電話利用率
今や多くの子供達の日常生活でも欠かせない存在となった携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォンの双方、以下同)は、どのような状況で使われているのだろうか。内閣府が発表した、主に若年層に関する公的調査の結果を取りまとめ、多方面から若年層の実態を精査した「子供・若者白書」から探る。
まずは一番気になる携帯電話そのものの利用率。昨今では携帯電話の利用はほぼ=インターネットの利用であるため、この値はほとんどそのままインターネットサービスの利用率と見なしても問題はない。ただし従来型携帯電話に限れば、初めから使えない設定のものや、防犯目的での利用のためインターネットの接続を遮断されている利用スタイルもある。
小学生では1/2、中学生では6割、そして高校生ではほぼ全員が携帯電話を有している。小学生の場合は防犯利用のみで保護者から与えられるためにインターネット機能を実質的に使っていない事例もあるが、それでも携帯電話の所有率が半数に達したのは注目に値すべき動き。
なお高校生はほぼ全員が携帯電話を利用しているが、この大部分はスマートフォン。
従来型携帯電話の新商品展開があまり行われなくなったのも一因だが、今後も防犯目的の携帯電話以外では、小中学生の利用率の上昇と共に、スマートフォンの利用も増加していくことだろう。ただしいわゆる「ガラホ」の展開次第では、異なる方向性を見せるかもしれない。また「格安スマホ」などの展開も気になるところ。
インターネットのフィルタリング利用状況
子供が携帯電話やパソコン、ゲーム機のインターネットへのアクセス機能を用い、保護者の視点では「アクセスすることは好ましくない対象」に足を踏み入れてしまう事例は十分ありうる。成人向けコンテンツ、多額の費用を請求され得る有料コンテンツ、買い物系サイトなどが好例。そこで一定基準に基づき、それら「好ましくない対象」へのアクセスを防ぐ働きを示すのがフィルタリングソフト(機能)である。
保護者などが監視状態にある中でアクセスする事例がほとんどとなるパソコンと比べ、子供だけでアクセスできる機会が多い携帯電話、とりわけスマートフォンでは、保護者の心配もひとしおなものとなる。昨今ではフィルタリングソフトベースでは無く、機種そのもの、あるいは設定のレベルで使えないようにできる機種もある。
インターネットに接続可能な機種で実際にインターネットを使っている子供に対し、このフィルタリング機能によるアクセス制限を適用させている状況は次の通り。なお今項目は保護者に対し、自分の子供に制限をしているか否かを確認した結果である。例えば「スマホ」の「高校生」は46.1%とあるので、スマートフォンでインターネットを使っている高校生の子供が居る保護者のほぼ半数は、その子供のスマートフォンに対し、フィルタリングによる何らかのアクセス制限を実施している。
ゲーム機やタブレット型端末、携帯音楽プレイヤーでは大よそ低学年ほど使用中の比率が高く、高学年ほど低くなる。低学年でこれらの端末をインターネットアクセスに利用している人はネット利用の際の主流端末としており、保護者も不安が大きいことが想像される。年上になるに連れて値が下がるのは、その程度ならば分別をわきまえているとの判断によるものだろう。
他方スマートフォンや従来型携帯電話は高学年の方が高め。高校生でも約5割はアクセス制限が設けられているのは意外だが、携帯電話は保護者の監視下から離れた場所での利用が容易なことに加え、使える機能も多種多様に及ぶことから、保護者の警戒心も強くなるものと思われる。小学生で低めなのは、保護者の目の前で使うことが多々あるからだろう。もっとも従来型携帯電話の場合は防犯目的で子供に利用させている場合、フィルタリング以前の問題で、インターネットの利用そのものを遮断している場合が多いのだが。
多機能との観点ではノートパソコンも同様だが、こちらは学校種類別の差異はほとんどなく、制限率も低い。端末利用が多分に自宅、しかも保護者が居るような状況で行われていると考えれば道理は通る。
保護者と子供との間の決まりごと
フィルタリングのような仕組みによる「取り決め」以外に、何らかの決まりを家庭内で設けて、子供のインターネットの利用を制限する切り口もある。いわゆる自主ルールである。これについて、利用者である子供側に尋ねた結果が次のグラフ。
特にルールは無く自由に(無論、端末にフィルタリング機能などを実装していればその範囲内で)使ってよいとの回答は小学生で1/5近く、高校生で約半数と、高校生の方が高い値を示している。保護者側が成長に連れて子供の分別・判断力を信用するようになった、あるいは強い要望によるところもあるのだろう。利用時間・利用場所の制限も、成長と共に規制される率は低くなっている。
一方で「利用者情報の漏えい厳守」「他人の誹謗中傷の禁止など送信・投稿内容の制限」は大よそ高年齢ほど実施率は高くなる。幼い頃はフィルタリングの実施などでアクセスそのものができなかった場所にも、歳を経るにつれて規制が解除され、踏み込めるようになる。しかしそれと共に他人とのやりとりの中でのいざこざ、個人情報の漏えいによる嫌がらせなど、面倒なトラブルのリスクも積み増しされる。それらに対する決まり事を、保護者がしっかりと教えさとす意味でルール化したものと考えられる。
「利用料金や課金方法など金銭的な上限」「困った時には保護者に相談」は学校種類別に限らず高い値を維持している(後者はやや下がるが)。前者は家計全体にも影響を及ぼし得る問題であり、学年を問わず重要な要素。後者は子供の教育全般に係わる、あるいは他のさまざまなトラブルに連動しうる問題の初期状態を確認し、早いうちに対処するのには欠かせない決まりごと。子供の虫歯や病気、けがに関して、隠さずに自己申告をするようにうながすことで早期に対応でき、悪影響を最小限に留められるのと同じである。ただし後者がいくぶん歳と共に下がるのは、子供側の気恥ずかしさを考慮して、実効性が薄いと判断した上でのものかもしれない。
もっともこれらの「決まり」は概して子供向けに限らず、インターネット利用時における一般的なマナーに他ならない(保護者は保護者自身に相談はできないが)。個々の事例において、教える側の保護者が守っているか否かを考えると、100%自信を持って「守り切っています」と答えられる人がどれだけいるだろうか。子供がルールを順守して、正しい利用方法でインターネットと接していくためには、まず大人自身が良い例を示さねばならないのは当然至極の話に違いない。
■関連記事: