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深川麻衣が揺れ動く“柔軟”と“受け身”の狭間。

中西正男芸能記者
映画「おもいで写眞」に主演する深川麻衣

2016年にアイドルグループ「乃木坂46」を卒業し、女優に転身した深川麻衣さん(29)。TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞した初主演映画「パンとバスと2度目のハツコイ」に続く主演映画「おもいで写眞」が1月29日から公開されます。NHK連続テレビ小説「まんぷく」にも出演し、テレビ東京「日本ボロ宿紀行」では地上波連続ドラマ初主演も果たしました。女優として着実にステップアップを遂げてきましたが、胸に抱いてきた悩み、そして、新型コロナ禍での思いをストレートに語りました。

“受け身”と“柔軟”

 「乃木坂46」を卒業して、今の事務所に移籍したのが2016年。これは本当にありがたいとしか言いようがないですけど、尊敬できる先輩がたくさんいらっしゃって、自分もこうなりたいと心底思える中で、お芝居の仕事を始めることができました。

 「おもいで写眞」は事務所の25周年記念という節目の作品なんですけど、そこで、入ってまだ4年の私が主演を務めさせていただきました。

 さらに、高良健吾さん、香里奈さん、井浦新さんら先輩たちが脇を固めてくださる。そのありがたさ、そして、頼もしさ。

 いろいろな思いがこみ上げましたし、プレッシャーがないと言ったらウソになりますけど、すごく恵まれた環境でお芝居をさせてもらったことを痛感しています。

 皆さんに本当にお世話になったんですけど、(井浦)新さんとの撮影が終わった後、言ってくださった言葉がありまして。

 「監督の演出に応えたくて、反射的に『はい、分かりました!』と言う気持ちはすごくよく分かる。だけど、少しでも腑に落ちないところがあるんだったら、そこはちゃんとぶつかっていかなきゃダメだよ」

 実は、これまでも、自分の中で“受け身”という言葉が一つの課題というか、ある意味のキーワードになっていたんです。

 監督からの演出に応えて、監督が表現したいものに順応する。そういう自分でいたいという思いと“受け身”の間で悩むといいますか…。

 柔軟でいることと、受け身でいることは違う。それは分かるけれど、じゃ、どうするのがいいのか。そういう思いが、新さんからいただいた言葉で整理されたと言いますか。

 お芝居なので、もちろん与えられた役があって、セリフがあって、流れがあるんです。それが大前提なんですけど、自分という存在の意味もそこに加える。

 この作品を撮影して以来、特に強くそういうことを考えるようになったんですけど、そこには新型コロナの影響もあったのかなと思います。コロナ禍によって、今まで以上に“自分”というものを意識するようになったんです。

“自分”の再認識

 コロナ禍でいろいろなお仕事が延期になりましたし、撮影も止まりました。女優という仕事は、基本的にオファーをいただいて人から呼ばれないと成立しない仕事なので、それまでは待っているしかないんです。

 でも、ほぼ全ての動きが止まる中で、お声がけもストップする。もし、このままお仕事ができなくなったらどうなるんだろう。そんな不安も、すごく感じました。

 でも、心配するばかりではどうしようもないですし、せっかくなら、生まれた時間をきちんと使ってみようと思ったんです。

 例えば、家にいる時間が多くなるので、これまで以上に自炊もしました。そうすると、自分の食べるもの、ひいては、自分の体をすごく意識するようにもなったんです。

 あと、自分が出た作品を見るのが苦手だったんですけど、時間があることを利用して、それも今一度見てみようとなったんです。それをすることによって、見てみると、やっぱり発見もありますし、気づくことがたくさんありました。

 そうやって“いつもとは違うこと”をやる中で、それが自分を見つめ直すことにもなったなと。最初は心身ともに不安が大きかったんですけど、自分のカタチみたいなものを再認識することによって、以前よりも、徐々に気持ちが落ち着いていきました。

 コロナ禍の前でも、仕事がなかったらブレてしまう自分がいたり、仕事で評価されないと自分を全否定されるというか、自分に価値がないと思ってしまう感覚も正直ありました。

 ただ、それって、あまり良くないなとコロナの時期に思ったんです。

 もちろん、仕事を続けていくことは大事だし、仕事は大切なんですけど、それとは別に自分という軸がきちんとある。自分はこういうことが好きだ。自分はこういう人間だ。そういう軸がないとダメだなと。

 これまでも軸はあったとは思うんですけど、仕事となると、そこがブレてしまう。撮影が詰まっていたりすると、休みの日も、仕事がずっと頭から離れない。例えば、買い物に出かけるにしても、台本を持っていないと不安という感覚になる。

 その気持ちはあってもおかしくないし、もしかしたら大事なのかもしれないけど、そこにメリハリをつけることで“自分”というものをより意識してみようと思ったんです。そういう意識が強くなると“柔軟”と“受け身”という部分も整理されていく気がしますし。

 コロナ禍で本当に大変な時間が続いてますけど、マイナスな部分ばかりでは何も進まない。せめて、そこから前向きなことを抽出する。それも最近特に考えたことではあります。

 そう考えると、失敗ということへの意識も変わってきました。

 失敗というのは怖いですし、できれば経験したくはない。でも、自分のお芝居の中で「やっぱり、こっちが正解だったかな…」と思うことによって自分が作られていくとしたら、そうやって、間違えることにも大きな意味があるのかなと思うんです。

 なんだか、すごく真面目な話になっちゃいましたかね(笑)。でも、本当に思っていることだし、周りの方々にも感謝するばかりですし、大変な時期ですけど、頑張っていこうと思っています。

(撮影・中西正男)

■深川麻衣(ふかがわ・まい)

1991年3月29日生まれ。静岡県出身。2011年、アイドルグループ「乃木坂46」の1期生オーディションに合格する。12年に同グループのファーストシングル「ぐるぐるカーテン」のカップリング曲「左胸の勇気」「失いたくないから」でCDデビュー。15年には「NHK紅白歌合戦」に出場する。16年に「乃木坂46」を卒業し、芸能事務所「テンカラット」所属となり、女優として活動を始める。17年「スキップ」で舞台初主演。18年公開の「パンとバスと2度目のハツコイ」で映画初出演にして初主演し、第10回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞を受賞する。NHK連続テレビ小説「まんぷく」などにも出演。テレビ東京系「日本ボロ宿紀行」で地上波連続ドラマ初主演も果たす。主演映画「おもいで写眞」が1月29日から公開される。共演は高良健吾、香里奈、井浦新、古谷一行、吉行和子ら。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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