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JAL、生涯の搭乗実績+日常生活でのマイル獲得での新しい上級会員制度スタートで得する人、大変になる人

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
羽田空港に駐機中の国内線仕様のエアバスA350型機(筆者撮影)

 JAL(日本航空)は11月14日にJALの新しい生涯実績プログラム「JAL Life Statusプログラム」を2024年1月からスタートさせることを発表した。毎年の搭乗実績で決まる「クリスタル」「サファイア」「JGCプレミア」「ダイヤモンド」の1年単位の上級会員制度は継続され、新たに生涯実績での継続型の新プログラムが始動する。

世界の航空会社の傾向として、日常生活でのマイル獲得も上級会員資格基準に上乗せする流れ

 航空会社では、搭乗実績が多いマイレージプログラム会員を上級会員(多頻度会員)として、ラウンジの利用をはじめ、優先チェックインカウンター、手荷物の優先引き渡し、空席待ちの優先などのサービスを行っているが、近年の傾向としては、搭乗実績だけでなく、航空会社のクレジットカード利用額や航空会社のサイト上でのオンラインショッピンクなど日常生活での利用実績も上級会員資格獲得に上乗せさせるケースが増えている。

 ANA(全日本空輸)も2020年から飛行機の利用実績に加えて、ANAカード・ANA Payの一定金額以上の決済額、指定されたANAの各種サービスの利用数(ライフソリューションサービス)を達成することで上級会員になることができる新サービスを開始し、2022年からは「ライフソリューションサービス」という名称となった。ライフソリューションサービスを活用することで搭乗実績(プレミアムポイント)の基準ポイントが下がることになり、上級会員を目指す人にとっては好意的に受け止められている。

JALも搭乗実績+日常生活での上級会員プログラム開始。生涯にわたってサービスが受けられるプログラムに。既存の上級会員制度も継続

 そして今回JALでは日常生活も含めた利用実績で上級会員になることができる新プログラム「JAL Life Status プログラム」を発表し、概要の一部が明らかになった。ただANAは単年での上級会員資格基準において日常生活でのカード利用などが加わる形であるのに対し(ANAでは生涯の搭乗マイルによるマイル有効期限撤廃などのサービスも別途ある)、JALでは現在の単年での上級会員制度を残しながら、もう1つ別のプログラムとして、生涯におけるJALグループ便での搭乗実績(1980年4月以降)、更に2024年以降のJALカード利用などの日常生活の利用がポイントされ、ポイントに応じたサービスを受けられることになる。

 つまり、2024年以降は単年型の「FLY ONプログラム」と生涯型の「JAL Life Statusプログラム」の2つの上級会員プログラムが併用できる形となる。

新生涯プログラムのサービス内容は?USJのエクスプレスパスも

 具体的にはラウンジの利用をはじめ、優先チェックインカウンター、手荷物の優先引き渡しなどの現行のJALグローバルクラブ会員向けのサービスに加えて、モバイル通信のデータ量の無料提供、タクシーアプリ利用時の割引やツアー割引、更には上位ランクになるとマイルの有効期限無制限や無料空港宅配サービス、ホテルの優待や限定イベントへの招待などのサービスが基準を達成することで生涯にわたってサービスを受けられるという仕組みになっている。「Life Statusポイント」数に応じて6つのランク(スター)が設定されている。JAL発表のリリースの中でモバイル通信関連では「povo」、タクシーアプリでは「GO」のロゴがあることから、両社のサービスが受けられることになる。

 またJALによると、提携先の1つに大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が入っており、待ち時間を短縮できる「JAL ユニバーサル・エクスプレス・パス」などの提供が含まれるほか、今後提携するホテルチェーンのホテルステータスの付与も含まれる。どのホテルチェーンになるかについては今後改めて発表するとのことだ。

 これまで長い期間、JAL便を利用し続けてきた人においては、メリットが大きい新プログラムと言える。

「JAL Life Statusプログラム」はポイントによって6つのランクに分けられる。1500ポイント以上でJALグローバルクラブ会員の申し込みが可能(JALホームページより)
「JAL Life Statusプログラム」はポイントによって6つのランクに分けられる。1500ポイント以上でJALグローバルクラブ会員の申し込みが可能(JALホームページより)

「JAL Life Statusプログラム」のベースとなるJALグローバルクラブの入会基準が大きく変わる

 「JAL Life Statusプログラム」は、JALグローバルクラブがベースとなる。現行ルールでは、JALグローバルクラブは一度入会することで搭乗実績に関係なくクレジットカードの年会費を払うことでラウンジなどの上級会員のサービスを継続的に受けられるサービスとなっており、現行のJALグローバルクラブの入会基準は1月~12月の期間でJALマイレージバンクの上級会員「サファイア」以上の資格(5万FLY ONポイントもしくは50回かつ1万5000FLY ONポイント※その他条件あり)を得ることで可能だ。

 つまり現行ルールでは1回でもサファイア以上の上級会員になれば、サファイア会員の期間中にJALグローバルクラブの会員になることで、次年度以降のJAL便の搭乗実績がなくても、ラウンジ利用などができる上級会員を維持できる仕組み。その為、JALグローバルクラブを目指して、1年だけ「修行」と呼ばれる、上級会員を目指す為に飛行機に乗るという人も多いが、来年(2024年)以降はJALグローバルクラブ会員になる為のハードルがほとんどの人で高くなる。

 2024年以降、JALグローバルクラブ会員になるには、過去の搭乗実績も含めた新基準「Life Statusポイント」が対象となり、過去の搭乗実績に加えて、JALカードなどのライフスタイルでの利用も含めたポイントが対象となり1500ポイント以上で入会資格を得る形になる。基準は以下の通りとなっている。

「Life Statusポイント」積算基準

フライトの場合

・JAL国内線 1搭乗あたり=5ポイント

・JAL国際線 1000区間マイル=5ポイント

※JAL便利用はマイル積算運賃での利用が対象で、国際線の区間マイルは運賃種別(積算率)に関係なくマイル積算運賃であれば区間マイルでの計算となる。

※1980年4月以降、JALのプログラムにフライト記録を登録済みの搭乗実績を過去に遡って積算

日常生活の場合

・JALカード 2000マイル=5ポイント

・JAL Pay 500マイル=1ポイント

・JAL Mall 100マイル=1ポイント

思わぬ形で、過去のJAL便利用実績で2024年に新たにJALグローバルクラブ会員になれる人も

 仮に単純計算にはなるがJAL国内線のみの利用の場合は、1500ポイントを獲得するのに300回以上の搭乗実績が必要となる。搭乗実績は過去に遡って、1980年4月以降の搭乗実績が対象とのことで、JALマイレージバンクのサイトから過去実績が確認できる。

 新ルールでは、過去にJAL便に沢山乗っていた人が思わぬ形でJALグローバルクラブ会員になることができるケースもある。特に今までのルールでは単年での上級会員にはなれなかったが、年に20~30回のフライトを10年以上飛んでいる人や年10回程度のフライトを30年近く飛んでいる人、継続的にJAL国際線を利用している人などで1500ポイント以上になる人が出ることも想定される。そういった人も2024年以降はJALグローバルクラブ会員になることができる。過去に出張が多かった人や飛行機移動での単身赴任をしていた人などは要チェックである。

JALホームページ内においてマイレージ番号でログインすることで生涯実績を確認することが可能(JALホームページより)
JALホームページ内においてマイレージ番号でログインすることで生涯実績を確認することが可能(JALホームページより)

既存のJALグローバルクラブ会員は影響なし、新規会員のハードルが上がる

 既存のJALグローバルクラブ会員については、来年以降も資格は継続されるので今回、新基準の影響は受けない。一番影響が出るのが、これからJALグローバルクラブ会員になりたい人である。来年(2024年)以降は、仮にJALマイレージバンク「サファイア」「ダイヤモンド」になっても、単年だけではJALグローバルクラブ会員へ入会できないことになる。

12月までにサファイア会員になってJALグローバルクラブ会員を目指す動きも

 今年中(2023年1月~12月)は、「サファイア」以上に到達できれば、JALグローバルクラブ会員の入会資格はあるので、サファイア会員の基準となる5万FLY ONポイントもしくは50回(かつ1万5000FLY ONポイント)を残り約1ヶ月半での達成へ向けて動き出そうとする動きもネット上の書き込みで見られる。

 現実的には不可能ではないが、「サファイア」資格である、5万FLY ONポイント(国内線は1マイル=2FLY ONポイント、国際線は1マイル=1FLY ONポイント※アジア・オセアニア路線は1マイル=1.5FLY ONポイント)もしくは50回かつ1万5000FLY ONポイント(※その他条件あり)の達成はかなり大変であるが、ただラストチャンスなので、一気に目指す方もいるだろう。仮に50回(フライト)であれば、鹿児島や沖縄の離島路線などを活用することで1日8~10フライトを乗り続ける「修行」をしながら、5日~7日を費やすことで実現不可能ではない。

羽田空港第1ターミナルのJALチェックインカウンター(11月11日、筆者撮影)
羽田空港第1ターミナルのJALチェックインカウンター(11月11日、筆者撮影)

航空業界は「非航空事業」を強化する方向へ

 今回の新しい生涯実績プログラム「JAL Life Statusプログラム」は、旅行や出張だけでなく、日常生活でも長い期間を通じて航空会社と消費者の交流を持ちたいという意味合いも強い。航空会社は全世界で新型コロナウイルスにより大きな影響を受けたなかで、パンデミックが起こった際にもしっかり収益を確保するべく、近年は「非航空事業」に力を入れており、自社クレジットカード(JALカード、ANAカード)に加えて、新しい決済手段の導入(JAL Pay、ANA Pay)、オンラインショッピングの拡充などに力を入れている。今後もこの流れは続くことになりそうで、これまで以上に飛行機以外で航空会社との接点を多く持つことになりそうだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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