【究極のご当地ラーメンが東京駅に】富良野発「とみ川」がこだわる“本当の”ご当地ラーメンとは?
ラーメンの食べ歩きを始めて、20年以上全国のご当地ラーメンを食べてきたが、このお店を取材するまで「ご当地ラーメン」の“定義”については考えたことがなかった。
全国の各地域に広がる、独自性を生かした地域色の強いラーメンを指すことは何となくわかっていたが、その定義は曖昧だ。昔から地域の味、いわゆる郷土食として広がったご当地ラーメンもあれば、近年、町おこしのために新たに開発されたご当地ラーメンもある。
富良野でしか食べられない“本当の”ご当地ラーメンを作りたい
今回取材したのは、北海道・富良野にある「富良野 とみ川」。
北海道のご当地ラーメンといえば、札幌ラーメン、旭川ラーメン、函館ラーメンが圧倒的に有名だが、富良野にラーメンのイメージはあるだろうか。
「とみ川」は映画『北の国から』のロケ地でも知られる富良野の麓郷という地にある。
店主の富川哲人さんは25歳までプロボクサーとして活動。実家が食堂を営んでいたこともあって、引退後は飲食の世界に飛び込む。3年間、日本料理を学んでからラーメンの世界に飛び込んだ。1997年創業。
富川さんがこだわったのが地元・富良野でしか食べられない“本当の”ご当地ラーメン。ご当地のものだけを使った一杯を作ることにチャレンジしたのだ。
お店の場所に選んだ麓郷は、大麓山の麓にあり、山からの湧水が蛇口から出るような土地。商売には適さないが、水がいいという理由だけでここで店をやることに決めたという。周りには小麦畑が広がる。
まずは麺。有機栽培された北海道小麦「春よ恋」に出会い、これを石臼挽きのそばの製法を応用し、石臼で挽いてみることにした。最高の小麦を余すことなく全部使い、全粒粉を2割も配合。小麦のクセを生かした麺を作った。つなぎは富良野産のさくら卵を使用。
お店では38センチの石臼が1日中ずっと回っている。富川さんは自分の麺を「日本でいちばん小麦の味がする麺」と自負する。
「最高の素材を見つけたら、それをどう活かすかをまず考えます。最大限活かすにはどうしたらいいかということです。とにかくこの地でしかできないものを作りたいと思い研究を重ねました」(富川さん)
オープン当初からたくさんのお客さんが集まった。お店の周りには半径5キロ以内に800人しか住んでいない地域。しかし他の街からも多くのお客さんが集まったのだ。
「富良野=ラーメンというイメージにはまだなっていませんが、『とみ川』のラーメンを食べれば富良野の食材がたくさん食べられます。超一流ではないかもしれないけど、きちんと吟味して作れば、地元産の食材だけで良いものは作れると思うんです」(富川さん)
食材も現地になるべく取りに行くようにしている。現地産の食材にこだわることで規格外品も使うことができ、余すことなくラーメンの味に生かすことができる。チャーシューに使う豚やネギも全て地元産だ。
東京駅に出店した意味
この4月27日からは東京駅一番街にある「東京ラーメンストリート」の「ご当地ラーメンチャレンジ」に4ヶ月限定で出店している。
「出店に際して、街を挙げて応援してくださっています。まさに憧れの企画でした。
催事などで手ごたえはもちろんありましたが、東京駅で数ヶ月お店をやるというのは少し怖かったです。
ですが、コロナが抜けて観光がV字回復していく中で、富良野といえばラベンダーだけではなく、食も凄いんだということをこの出店でアピールしたいなと思っています」(富川さん)
『北の国から』の脚本家・倉本聰さんもたびたびお店に訪れ、「とみ川」のラーメンに舌鼓を打っているという。『北の国から』がドラマで富良野の魅力を伝えるならば、「とみ川」はラーメンで富良野の魅力を伝える。
まさに、本当のご当地ラーメンを提供することで、地元を盛り上げたいという強い思いが伝わってくる。
富良野 とみ川
北海道富良野市麓郷市街地5
富良野 とみ川 東京ラーメンストリート店
東京都千代田区丸の内1-9-1 東京駅一番街 B1