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「そう思われたら、おしまい」。「I Don't Like Mondays.」YUが語る覚悟

中西正男芸能記者
「I Don't Like Mondays.」のボーカル・YU

 キャッチーかつ洗練されたサウンドで注目される4人組バンド「I Don't Like Mondays.」。新型コロナウイルス禍での閉塞感を打破すべく、8月から5カ月連続で新曲配信する試みを始めました。8月にリリースされた「モンスター」、9月23日に配信が始まった「MR.CLEVER」とも、これまでの歌詞とは一線を画した仕上がりにもなっていますが、ボーカルのYUさん(31)は「『I Don't Like Mondays.って、こんな感じだよね』。そう思われたらおしまいだと思っています」と今の思いを明かしました。

自粛期間で出会った思い

 僕は大学卒業の時期になって、音楽の道に進むことを決めたんです。それまで全くその思いはなくて。普通は子どもの頃とか、遅くとも高校あたりから意識してミュージシャンになるんでしょうけど、かなり遅い選択でした。

 というのも、もともと僕は実業家というか、事業をやる方向に進もうと思っていたんです。実際、権利関係というか、ライセンスを扱う仕事をしていて、アニメや漫画、いろいろなハイブランドとのコラボを手掛けたりしていました。

 その仕事をして痛感したのは、結局、権利を持っているところが強いということ。これは当たり前なんですけど、そのアニメや漫画を使わせてもらってビジネスをするので、ライセンス元の意向、OKだとか、ダメだとかがどこまでも強いんです。

 そこで思ったのが「ということは、自分がコンテンツを作ればいいんだ」ということでした。自分がライセンス元になる。じゃ、何を作るんだ。それを考えた時に、これは本当に大きな巡り合わせだったんですけど、今のメンバーと出会いました。「このメンバーとならできる」と思えたので音楽を選んだ。それが始まりでした。

 なので、言い方が悪くなっちゃいますけど、自分がライセンス元に振り回された経験もあるので、自分はそうはしないでおこうという思いも強くなりましたね。自分で言うのもアレなんですけど、すごく扱いやすいアーティストだとも思います(笑)。

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 音楽をやりだしてからも、歌うこと以外の表現方法として、何か世の中に訴えることができないか。そのための方法論として、やっぱり事業をやりたいという思いもあったんですけど、これまでは正直なかなかかなわずにきました。

 トライしたものの、キャパ的にも“二足のわらじ”は難しかった。どっちも中途半端になるのが嫌で、バンドに絞ったというのもあります。ただ、今回、コロナ禍による自粛期間で、これまでにないくらい自分と向き合い、“新しい考え”に出会うことができました。

やりたいことは全部やる

 今、僕は31歳です。若くもない、いい歳になってきて、自分の持っているもので、世の中に役立つことは何なのか。それをこの自粛期間に考えたんです。

 去年からavexに移籍をして、環境も変わった。新しいスタッフさんと曲を作り、ライブをし、バタバタと駆け抜けてきたところでコロナ禍になった。文脈的に、立ち止まって考える意味がより強くなったと感じていますし、アーティストとして、社会人として、人間として、自分がやりたいことは何なのか。今までの流れで本当に良かったのか。そういったことと真正面から対峙する時間になりました。

 リアルな話、世の中には、僕よりずっと若くて、才能を持ったアーティストもたくさんいます。これも正直な話、今はアーティストという意味では、くすぶってるというか、もっと、もっと、上がりたい気持ちがある。

 今までだったら、若くて才能を持った人を見た時に「いや、オレの方がすごい」というアタマになっていたと思うんですけど、自粛期間で今一度自分を見つめ直す中で、認められるようになったんです。「彼らはすごい」と。自分の心の中の話ですけど、これはすごく大きな変化でしたし、成長だと僕は受け止めています。

 僕らのバンドって、知名度も低いですし、これからavexさんと盛り上げていかないといけないんですけど、すごいものはすごいと認める。その上で、自分には何ができるのか。もっと言うと、自分にしかできないことは何なのか。そこを強く意識するようになりました。

 なので、一度は断念した事業にも、もう一回チャレンジしだしたんです。やりたいことは全部やる。もちろん、本気でやる。そして、その集合体がYUという存在になればいいなと。

 コロナ禍でリモートで人と話すことがかなり“普通”にもなってきましたし、対面でお話をしないことが失礼にあたる度合いも減ってきた。となると、移動時間を省くこともできるし、一日が24時間であることは変わらないんですけど、時間が増えたとも言える。

 という意味では、こちらが頑張れば、以前よりは音楽と事業の両立がやりやすくなったとも言えるし、実際に事業が動き出してから、音楽の方にも新たな発想が生まれてきてもいるんです。

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「『こんな感じだよね』と思われたら、おしまい」

 先月から始めた5カ月連続で配信する新曲にも変化が出ていて、一番変わったのは歌詞だと思います。これまでだったら、使わなかった言葉も使うといいますか。

 23歳、24歳の時に「こういうバンドを目指していこう」と考えた図式に則って、これまで曲を作ってきたました。曲は4人で作っていて、歌詞は僕が書く。多分に感覚的な話になるんですけど、これまで歌詞は“曲を引き立てる楽器”みたいな感じで、曲を邪魔しない。耳障りにならない。そういう趣旨で書いてきたんです。

 でも、今はそうではなく、僕が言いたいことを、曲にぶち込む。もっとストレートな言葉を使うというか、これまでだったら違和感としてとらえていた言葉も使いたければ使う。もちろん、これまで作ってきた歌詞も大好きなんですけど、もう一つ新しいフォームも身につけたという感じかもしれませんね。

 そうしないと僕も成長しないし、変な話、過去の曲を分析して、そのデータを入力したら「これまでの曲からすると、こんな言葉選びをしそう」とAIが導き出してくるような歌詞になっているのではという危惧も感じたんです。

 「『I Don't Like Mondays.』って、こんな感じだよね」と思われたらおしまいだと僕は思っています。そうならないためにも、今は僕の独断という要素をたくさん入れ込んでいます。どんな反応があるかは分からないけど、それが僕であり、僕の性格でもあるんだから、そこは臆せず出していこうと。

 これは今までもライブのMCで言ってきたことなんですけど「やりたいことは全部やろう」。自分の言葉ながら、それを改めて噛みしめています。次に生まれてきた時に同じような時代とは限らないし、同じ自分かどうかも分からないし、やりたいことがあるなら、今やらないともったいない。そう強く思っているんです。

(撮影・中西正男)

■YU

1989年2月26日生まれ。愛知県出身。CHOJI(ギター)、KENJI(ベース)、SHUKI(ドラム)と2014年にメジャーデビューしたバンド「I Don't Like Mondays.(アイドントライクマンデイズ)」でボーカルを務める。キャッチーかつ洗練されたサウンド、英語を効果的にとり入れた歌詞などで話題を呼ぶ。2019年からavexに所属。今年8月から5カ月連続で新曲を配信。8月には第1弾「モンスター」が、9月23日には第2弾「MR.CLEVER」が配信された。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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