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EL準優勝のドニエプロが示した、日本代表が目指すべきサッカーとは?

河治良幸スポーツジャーナリスト

欧州2大カップ戦の1つであるヨーロッパリーグ(EL)の決勝はスペインのセビージャがウクライナのドニエプロを3−2でくだし、史上最多となる4度目の優勝を飾った。

エメリ率いるセビージャは堅固な守備と司令塔バネガを起点にアレイクス・ビダル、レジェスらが縦に仕掛けてコロンビア代表のFWバッカに合わせるスタイルは欧州レベルでも目を見張るものがある。ただ、ハリルホジッチ監督が率いる日本代表の目線で言うならば、より模範になるのは惜しくも準優勝となったドニエプロだ。

ナポリなど強豪や好チームを次々と破り、ファイナルまで進出したドニエプロはコンパクトな組織でボールサイドにプレッシャーをかけ、ボールを奪ったらダイナミックな展開からDFラインの裏を狙う。

マルケヴィッチ監督の掲げる攻撃はスピーディだがロングボールに頼るものではなく、ロタンやコノプリャンカのキープ力とパスセンスを活かしながら、高い位置に起点ができれば後ろの選手が積極的にアタッキングサードまで攻め上がり、迫力あるフィニッシュワークを実現している。

多い時は6人、7人がゴール前に絡んでくるが、攻守が切り替わればプレッシングとリトリートを同時的に行い、気がつけば守備の陣形を整えている。決勝では消耗が目立ち、終盤には3人交代を終えた後にマテウスが負傷する不運が重なったが、ハードワークをベースに質の高いサッカーを続けてきたことは賞賛に値する。

ハリルホジッチがここまで掲げてきた日本代表の強化のポイントとして以下のポイントがある。

1:DFラインの裏を積極的に狙う

2:ボールを奪った時に1つ先のパスを優先する

3:攻守の切り替えを素早く

4:球際に厳しく

5:攻守の両面に全員が参加する

これらは全てチームとしてのインテンシティーに大きく関わるもので、特に3や4はブンデスリーガのクラブなどにも共通する部分はあるが、国際的なタレントを多く抱えるわけでもないドニエプロがここまでハイレベルにこれらを実現していることは注目に値する。

特に効率よくアタッキングサードまでボールを運びながら、そこから止まることなく迫力あるフィニッシュに結び付ける攻撃はおそらくハリルホジッチ監督の目指す理想像に近い。試合を通して出し切るハードワークの姿勢もしかりだ。

先日の代表合宿で、ハリルホジッチはチャンピオンズリーグのバイエルン×バルセロナを映像で見せて、国内組の選手たちに攻守の切り替えや球際の重要性を説いたというが、ELで示したドニエプロのサッカーは日本代表やJリーグのクラブが1つの指標としていく価値があるものだった。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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