「黒海の日」ウクライナ軍「水上攻撃ドローンは海上での戦争の歴史の新たな章の幕開け」
10月31日は「黒海の日(International Black Sea Day)」である。2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してから黒海もロシア軍とウクライナ軍の戦場の1つになっている。
ウクライナのメディアのUnited24は黒海の日にちなんで、黒海でウクライナ軍がロシア軍を攻撃する様子を伝えるショート動画を制作して公開。ウクライナの副首相やウクライナ軍の公式SNSでも拡散されていた。
ミハイロ・フェドロフ副首相は「水上ドローン(Naval drones)は黒海のロシア軍を撃退するためにウクライナで開発されたユニークな技術を持つ兵器です。今までも多くのニュースで見てきたと思います。世界初の水上ドローン(fleet of sea drones)はクラウドファンディングの資金集めから始まりました」と紹介。
ウクライナ軍の公式SNSでは「ウクライナ軍は海上での戦争の歴史に新たな章を開きました」とコメントしていた。
▼「黒海の日」を記念して制作されたショート動画を紹介するウクライナ軍公式SNS
1機3750万円の水上攻撃ドローンでロシア軍の艦隊などを攻撃
ウクライナ政府では、黒海にあるロシア軍の艦隊からのミサイルに対抗する水上攻撃ドローン(NAVAL FLEET OF DRONES)の開発のためのクラウドファンディングでの資金提供を世界中に呼びかけていた。2022年11月にはゼレンスキー大統領は「ウクライナ軍は100機の水上攻撃ドローンが必要」と伝えていた。ウクライナ軍は2022年9月と10月にも水上攻撃ドローンを使用していた。ゼレンスキー大統領は「ウクライナ軍は我々の海、平和な街をロシアの艦隊から発射されるミサイルから守らないといけない。世界中への穀物輸出にとっても重要です」とロシアとウクライナで多くの人に使用されているSNSテレグラムで語っていた。
2023年2月からは水上攻撃ドローンの開発の費用に充てるためにウクライナ政府として初のNFTアートの販売を行っている。目標として4機の水上攻撃ドローンを開発するために4000万フリヴニャを集めようとしている。「UACatsDivision」(ウクライナ軍のキャット部隊)という愛称の猫の絵柄は1万種類以上あり、ウクライナ軍の制服などを着ている。現在でも水上攻撃ドローンの支援金募集は行っている。
ウクライナ軍では水上攻撃ドローンでロシア軍の艦隊や軍港などに攻撃を行ってきた。2023年8月にもウクライナ軍が黒海沿岸でロシア軍の艦船に水上攻撃ドローンで攻撃を行ってダメージを与えていたと報じられていた。水上攻撃ドローンに搭載されたカメラで標的に突っ込んでいく動画も公開していた。ロシア国防省は艦船が砲撃をして撃退したとコメントしていた。他にもウクライナ南部クリミア半島とロシア本土の間のケルチ海峡でウクライナ軍の水上攻撃ドローンがロシアのタンカーを攻撃していたと報じられていた。
ドローンは空中からの監視・偵察や攻撃が多いが、水中で敵軍の艦船の監視や攻撃を行う水中ドローンや水上ドローンも戦場では重要である。水上攻撃ドローンは標的の艦隊や艦船をめがけて突っ込んでいき爆破させる。いわゆる「水上神風ドローン」である。
ウクライナ政府によると1機の水上攻撃ドローン開発につき25万ドル(約3750万円)かかる。空を飛ぶドローンは民生品の安価なドローンで偵察や監視、さらに爆弾をつけてロシア軍に投下して殺傷したり戦車を破壊したりすることもできる。空を飛ぶドローンに比べると、水上攻撃ドローンはかなり高価である。水上攻撃ドローンは敵軍の艦隊や海軍の基地に攻撃して爆破すると基本的に再利用はできない。だが破壊力は大きい。上空のドローンから爆弾を投下したり、ドローンごと突っ込んでいき爆発させる標的は戦車や軍事施設、塹壕のロシア兵など様々だが、水上攻撃ドローンの標的は艦隊や海軍の基地などで標的も大型である。そのため破壊力のある水上神風ドローンが必要である。また上空のドローンと比較すると深夜の暗闇の水中では迎撃されにくい。
ウクライナ製の水上攻撃ドローン「MAGURA V5」はトルコのイスタンブールで開催されていた国際防衛展示会2023でも展示されていた。
▼ウクライナ副首相の公式SNS