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西九州新幹線の9月開業 北陸・北海道など残る整備新幹線はいつ全線開業するのか?

小林拓矢フリーライター
この車両で東京から敦賀まで直行できるようになる(写真:イメージマート)

 西九州新幹線の武雄温泉~長崎間が9月23日に開業することがようやく決まった。スーパー特急方式で運行するか、フリーゲージトレインで運行するかという話があったものの、結局はフル規格の新幹線として開業する。ほかの新幹線が、フル規格ゆえに速達性の高さで成功し、多くの利用者を集めているからだ。

 北陸新幹線や九州新幹線をつくっていく中で、フル規格新幹線の速達性などは見直され、一時はスーパー特急方式やミニ新幹線方式などの導入、あるいは在来線と直通できるフリーゲージトレインなどを整備新幹線に導入するという話はあったものの、これらの話は消えていった。

 またフリーゲージトレインは、技術的な難しさが大きく、新幹線での導入は断念するしかなかった。

 こうなったら、すべての整備新幹線をフル規格で完成させるということしか、選択肢はなくなってしまう。

 では、整備新幹線はいつ完成するのだろうか。

時期のめどが立っている一部の整備新幹線は?

 整備新幹線の中で、西九州新幹線以外に開業が近い将来予定されているのは、北陸新幹線の金沢~敦賀間である。2023年度末に開業する予定である。なお、もともとは2022年度末に完成する予定が、工事の遅れのために延期になった。

 その次が北海道新幹線新函館北斗~札幌の2030年度末である。おそらく、2031年3月となることだろう。北海道新幹線はトンネル残土に有害物質が含まれていてその処理について地元と対立が起こっており、またトンネルに硬い岩盤があり容易には破壊できず、その対応に時間がかかるという問題が発生している。2030年度末は予定であるが、延期となる可能性も高い。

この車両が札幌までやってくる
この車両が札幌までやってくる写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

 なお、2030年に札幌で冬季五輪・パラリンピックを開催しようとする動きもある。そのために新幹線の開業を早めたいという考えも出てくるが、現場の人手不足やコロナ禍の長期化、物価の上昇による材料費の負担増がのしかかっている。さらにはロシアのウクライナ侵攻でその傾向に拍車がかかり、費用負担が増大することも考えられる。仮に冬季五輪・パラリンピックの誘致に成功した場合、鉄道・運輸機構は国から間に合わせるようにと言われ、JR北海道もオリ・パラや繰り上がった北海道新幹線準備のためにお金を出さなくてはならなくなり、無理が大きく生じてくる。

 しかし実は、2035年度に開業する予定を5年前倒ししてこの時期になっている。

 時期はずれることになるが、完成のめどが立っている整備新幹線はこのくらいである。

建設中の整備新幹線(鉄道・運輸機構ホームページより)
建設中の整備新幹線(鉄道・運輸機構ホームページより)

いつ完成するかわからない整備新幹線も

 整備新幹線は、いつ完成するかわからないというのが現状である。全国新幹線鉄道整備法が1970年に制定、1973年に政府が整備計画を決定した。もう50年近い国家プロジェクトである。しかし東北新幹線東京~盛岡間や上越新幹線の整備のさらに先、山陽新幹線ができたばかりという時期の計画で、長期的な見通しは立ちにくい状況であった。

 しかもこの整備計画は、積極的な鉄道網の整備を推し進めた田中角栄内閣の時代のものだ。鉄道網・高速道路網・航空網・港湾の整備に力を入れた田中内閣の置き土産が、ずっと生き続けているということである。その後、オイルショックや狂乱物価などが問題となり、その対処で政治は整備新幹線どころではなくなり、さらに国鉄は経営状態が悪化、労使の対立もあり民営化するという状況になった。

田中角栄
田中角栄写真:Fujifotos/アフロ

 現在の状況で、まだ詳細なルートさえ決まっていない整備新幹線がある。九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間と、北陸新幹線敦賀~新大阪間である。

 九州新幹線の新鳥栖~武雄温泉間は、在来線を活用するというプランもあったものの、フリーゲージトレイン断念により困難になった。いっぽうでこの区間のフル規格新線建設は、佐賀県には利益がなく負担が大きいと厳しい姿勢を見せており、状況の打開が困難になっている。現在は3つのルートが検討され、まだ着工には当面至らないという状況である。

 北陸新幹線の敦賀~新大阪間は、着駅がほかの新幹線とのアクセス向上のため新大阪となったものの、それまでのルートが決まっていない。小浜を通るか、米原を経由するか。与党自民党の中では小浜・京都経由、京田辺などを通って新大阪へ向かうと考えている。だが、これも着工のめどが立たず、いつ完成するかわからない状況になっている。

整備新幹線がすべて整った先にさらに新幹線をつくる計画がある(国土交通省ホームページより)
整備新幹線がすべて整った先にさらに新幹線をつくる計画がある(国土交通省ホームページより)

 この状況では、まずはルートを公式決定することから始めるしかなく、その場合は2040年以降となると考えられる。

 計画や工事は遅れることが常であり、2050年くらいにようやく整備新幹線が全線開業という見通しとなるだろう。

 2050年の日本――人口は減少、都市への一極集中は進むも都市圏の人口減少もすでに進んでいる状態となっており、過疎化は深刻になっている。日本経済衰退の可能性はよく言われている。

 そんな中、整備新幹線が全線開業を果たす。この国が世界に冠たる経済大国だった時代の置き土産として。そのころ、整備新幹線計画が誕生してから(1979年に)生まれた筆者は、もう高齢者となっている。整備新幹線は、人生にも匹敵するほどの長い時間をかけた国家プロジェクトとなっていく。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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