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大谷翔平選手と“こんまり”が輝いた夜 世界に羽ばたく“日本の宝” が「国際市民賞」を受賞

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
大谷選手とこんまりさんという、今アメリカで一番熱い日本人の2ショット。筆者撮影。

 アメリカで今、最も熱い日本人というと、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手と“こんまりブーム”を引き起こしている片付けコンサルタントの“こんまり”こと近藤麻理恵さんをおいて他にいないだろう。

  

 大谷選手は2018年、アメリカン・リーグのルーキー・オブ・ザ・イヤー(新人王)に選ばれ、今シーズン前半戦では、飛球の2本に1本が本塁打という驚異の成績を上げている。

 こんまりさんは、今年、ネットフリックスで配信されたリアリティー・ショー「KonMari 人生がときめく片づけの魔法」が大ヒット、大手ベンチャーファンドにも注目され、「お片づけ界のマーサ・スチュワート」になりそうな勢いだ。

最大規模のイベントに

 アメリカで活躍を続ける2人が、7月11日夜(米国西海岸時間)、日米の文化やビジネスの橋渡しを行っている南カリフォルニア日米協会の創立110周年祝賀晩餐会で、日米交流に貢献した人々に贈られる「国際市民賞」を授与された。

 会場となったエンゼル・スタジアムには、500人を超える人々がフォーマルな装いで来場。

「これまで多くのイベントを行ってきましたが、ここまで多くの参加者を集めたイベントはありません」

と同協会事務局長のギフォード・実藤さんは顔をほころばせる。

 来場した2人はレッド・カーペットで記念撮影。大きな大谷選手と小柄なこんまりさんという好対照ぶりが微笑ましい。

華奢なこんまりさんはメルヘンの世界から現れた妖精のよう。筆者撮影
華奢なこんまりさんはメルヘンの世界から現れた妖精のよう。筆者撮影
貫禄漂うスーツ姿の大谷選手。筆者撮影
貫禄漂うスーツ姿の大谷選手。筆者撮影
受賞式はエンゼル・スタジアムで行われた。大谷選手とこんまりさんが輝く夜となった。筆者撮影
受賞式はエンゼル・スタジアムで行われた。大谷選手とこんまりさんが輝く夜となった。筆者撮影

 授賞式ではそれぞれスピーチを行った。

 最初に壇上に上がったこんまりさんは英語でスピーチを開始。冒頭、「Is your home tidy?(あなたの家は片付いてる?)」ときくと会場からは笑いが溢れた。続けて、こんまりさんは、

「世界の人々に日本人を理解したり日本について学んでもらえるよう、世界を片付けるという使命を通して、母国日本に貢献していることを喜ばしく思います。これからも片付けを通して、1人でも多くの方が片付けを終わらせて、ときめく毎日を送られるような、そんな社会を実現するために貢献していきたいと考えております」

と英語と日本語でスピーチ。一生懸命に英語で話す姿が美しい。最後は「Spark so much joy(たくさんときめいて)」と締めくくって笑いを誘った。

祝賀晩餐会前に行われたサイレント・オークションに出品されていた、こんまりさんの“引き出しボックス”。筆者撮影
祝賀晩餐会前に行われたサイレント・オークションに出品されていた、こんまりさんの“引き出しボックス”。筆者撮影

 スーツ姿で登場した大谷選手は、シーズン後半への意気込みを語った。

「伝統と名誉のある賞をいただけて本当に光栄だなと思っています。日米協会のみなさま、ファンのみなさま、本当にありがとうございます。また明日からシーズン後半が始まりますが、昨年以上の活躍ができるように明日以降また頑張っていきたいと思っておりますので、応援のほどよろしくお願いします」

サイレント・オークションに出品されていた大谷選手のサインボール。筆者撮影
サイレント・オークションに出品されていた大谷選手のサインボール。筆者撮影

2人は日本の宝

 祝賀晩餐会に来場した人々の中には、日本から駆けつけた人々の姿もあった。

「日本ではこんなイベントはありえませんから、感激しました。最近の日本は人殺しなど嫌なニュースが多いので、大谷選手の活躍を見て勇気をもらいました。近藤さんの片付け法もアメリカの人々にとって参考になることがたくさんあると思います。2人は“日本の宝”です」

と感激で目を潤ませながら話すのは、埼玉県から来たという山田和子さん。

「活躍しているお2人を身近で見ることができて良かったです。日本の野球を世界レベルに押し上げた大谷選手は素晴らしいし、近藤さんの活躍も素晴らしい。日本の文化が世界に広がって行くのを肌で感じています」

と話すのはオーガニック・フードを広める活動を行なっている日根野弘國さん。

 ロサンゼルス在住で、『朝1分で服が決まる4つの法則』などの著書を上梓しているパーソナル・スタイリストのみなみ佳菜さんは、今回、こんまりさんと再会、著書を渡した。以前、著書を執筆するよう、みなみさんの背中を押してくれたのがこんまりさんだったからだ。

「こんまりさんには、6年ほど前、日本の我が家に来ていただき、片付けのアドバイスをしていただきました。それからわずか6年で、こんまりさんは“世界のこんまり”となって羽ばたいています。その天才ぶりに大きな刺激を受けています。私はアメリカに住むようになってから、専門学校でファッションを学び直したのですが、最初は英語が上手くできずに困りました。しかし、アメリカは、流暢な英語を話したり、アメリカ人のように振る舞ったりせずとも、“和の心”で自分の志を真摯に伝えることができれば、活躍の場が広がるところだとわかりました。日本の方は恐れずにどんどんアメリカに来てほしいです」

国際経験は最下位の日本

 日本の若者が内向き志向になる中、アメリカで学ぶ日本人留学生の数は減少し続けている。

 5月、スイスのビジネススクールIMDが、2019年版「世界競争力ランキング」を発表したが、日本の総合順位は分析した63カ国中30位と、1997年以降では過去最低となった。細かくみると、起業家精神や国際経験などについては、調査対象となった国の中では63位と最下位の評価だ。国際性の点で、日本は問題を抱えていると言わざるをえない。

 アメリカに新天地を見出した大谷選手やこんまりさんは日本の人々をインスパイアしている。2人をロール・モデルに、世界へと羽ばたく気概のある日本人が増えることを願いたい。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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